24.愛の不在

自己の意識の完全を確信することはできるが、
他者の意識の完全を確認することはできない

これが本質的だとしたら
二者の関係から生じる愛は存在しない
と言わざると得ない

自己は自己の意識の中に完全な他者への愛を確認できる
しかし他者の意識の中の愛が完全なものかどうかを
確認する方法はない

他者の意識にあるかもしれない完全な愛の存在を
自己の意識と同等に知覚することはできない

唯一可能なことは神の愛を前提とすれば
それを通して自己と他者が完全な愛の中に入ることができる
自己の神への愛が完全であれば
神の自己への愛も完全となる

他者の神への愛が完全であれば
神の他者への愛も完全となる
自己の他者および神への愛が完全であれば
他者の自己および神への愛も完全となる

自己の意識を追求し完全な愛を求めると
神の存在と愛の存在に到達するが
神の存在が不確かな場合は
愛も存在しないと言わざるを得ない

存在するとしても憎しみと捩れ合った
不純な愛に堕落したものになるだろう
従って神の存在を仮定しない限り
完全な愛は存在しないと言わざると得ない

ヴェルサイユの庭園の中でうっとりと
ここには女の夢がすべてあると思い
類ないほどの一体感に身を委ねている
沢山の男を愛した人魚姫のような女に

ソルボンヌの哲学聴講生が意識の不完全と
愛の不在について長々と説き聞かせている
だったら意識なんかなくせばいいのに
愛がないなんてあり得ないわ

思考に疲れた学生が思わず呟いた
この庭は素晴らしく綺麗だね
あなたの裸もきっとこんな風に完全に
美しいだろうね、見たいな

えっ何、別にみせてもいいけど
完全ではないよ
それって愛なの、見たいというのは