15.オシロイバナ
大森駅舎の線路沿いの石垣にオシロイバナが咲いている
石垣の傾斜はきつく石の隙間はコンクリートで固められ
そこから伸びた身の丈1メートルのオシロイバナが
茎を一杯ひろげ緋紅色の花を珊瑚のように輝かせている
メキシコ原産ミラビリス属オシロイバナ科オシロイバナ
種子の胚乳がおしろいのような白い粉状なのが名前の由来
日本には200年以上前に鑑賞用として渡来して栽培され
丈夫なので野生化して各地で見られる帰化植物
夕方に花が開き朝には閉じるので別名ユウゲショウ
日当たりと水捌けの良いところを好むが耐陰性があり
日陰で耐える夕化粧する娼婦のような健気さ
緋紅色の多彩な色と芳香で夏の夜の夢に誘われる
茎は緑にピンクがかかり珊瑚の骨格のように丈夫そう
この石垣の急傾斜に土はなく石から生えた見返り美人
降り注ぐ日光と水だけで骨格と緑の葉と沢山の花が造られ
夜の駅舎の灯りの中で遠い記憶を確かめるように咲いている
何十億年もかけて藍藻類が酸素を一杯つくり
上空でオゾンとなって紫外線を遮るようになった頃
海の植物が始めて地上に進出した
地上に有機物はなく降り注ぐ日光と雨水のみが命の糧
オシロイバナはその頃の過酷な環境を思い出し
この石垣で健気に力一杯咲いている
夕化粧する健気な娼婦が家族のことを追憶するように
目の前の広大な地上が未来へ続く幸せの楽園だと信じて