行き方
<電車>ロンドン・キングスクロス駅から約2時間。
<バス>ヴィクトリア・コーチステーションから約4時間。
<私の場合>1・2回目とも電車を使用。3回目はスカボローより電車。
せむしで醜くて、根性が曲がっていて、甥である2人の王子をロンドン塔に閉じ込めて殺し、自分が王位についた男。シェークスピアは、リチャードV世をそう描いている。そして、イギリス人は、学校でも、そう、教えられるという。
でも、森川久美の「天の戴冠」で、リチャードは、兄のエドワードを慕う、とても優しい男として登場していた。
「あの漫画にはベースがあるのよ」。大学時代の先輩に教えられた。というか、作者の森川久美さんその人も、実は大学の先輩であり、同じ今井宏先生の講義を受けていらしたらしい。森川さんも、講義を聴きながら、はるか昔、中世のバラ戦争のころに思いをはせていらしたのか・・、と、ちょっぴり共通点をみつけて、私はとってもうれしくなった。
元本となったジョゼフィン・ティ(Josephine Tey)の「時の娘」(ハヤカワ・ミステリ文庫)は、突然事故に遭い、入院生活を強いられたある警部が、1枚の写真から、リチャードV世に興味を抱き始め、調べていくうち、次第に、世間では悪者にされているリチャードが、実は、民衆から愛されていた君主だったのではないか、という結論に達する異色のミステリーである。
なぜ、シェークスピアは、彼を悪者にしなければならなかったのか? それは、正当な理由もなく、彼を殺し王位を奪ったヘンリーZ世の陰謀だったのではないか?
警部の推理は面白いように展開していく。
私はその推理にとりつかれ、すっかりリチャードのファンになってしまった。彼をテーマに卒論を書こう!という私の野望は、ラテン語に挫折して、あえなく玉砕してしまったのだが、リチャード熱は冷めなかった。
だから、初めて個人でイギリスを旅したときの、行きたい所 No.1はヨーク。
そして、初めて訪れたヨークは、私の期待を裏切ることなく、城壁に囲まれたその荘厳な景色で、私を圧倒してくれたのだった。
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ヨークの街を取り囲む城壁。目の当たりにする、その景観は、本当に圧巻である。
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上段中央:ヨークミンスター;右:クリフォードタワーから見える町並み。
下段左:クリフォードタワー;中央:キャッスル・ミュージアム:右:クリフォードタワーの中。
20年ほど前、ヨークのシンボルともいえるヨークミンスターに雷が落ちたのをご存じだろうか? あの直後、雷が落ちた建物の一部が、ヨークミンスターの前に展示されていたそうだ。
ヨークには、あれから、3度ほど行っている。最初の旅では一泊して、シャンブルズと呼ばれる石畳を歩き、ローマ時代につくられたというストーンゲイトを見たり、クリフォードタワーに行ったり・・。そして、ヨークミンスターを訪れたとき、その荘厳な雰囲気に呑まれた。約200段の階段をのぼって塔からながめた町並みの、なんと美しかったことか・・。
2度目のときも、似たようなコースをたどり、ヨーヴィック・バイキング・センターに行った。
そして、3度目。このときの印象は、大好きだった京都の嵯峨野に最後に訪れたときに近かった。じゃり道を歩く感触が楽しかったはずの道が舗装され、まさかと思ったコンピニが道端に出来、昔の景観は残すものの、あまりにも観光地化されすぎてしまった嵯峨野。ヨークにもそんなイメージが残ってしまった。確かにあの城壁は類まれなる風景であるし、ロンドンからの日帰り旅行も可能な距離にあるヨークは、短期間の旅行にも最適なサイトスポットである。でも、あまりにも観光地化されすぎたなぁ・・と思った。
ロンドンを除いたら、まずいちばんに訪れたかった場所であるから、本来なら、お勧めのNo.1に推してもよさそうなものが、第5位に甘んじているのは、こんな理由からだ。
とはいえ、3度目に訪れたとき、ヨークには、まだまだ見る所があるんだなぁ・・と驚いた。キャッスル・ミュージアムにFriargate
museum、モデル・レイルウェイ、そして、tourist informationの人に、何でそんな所に行きたいの?、と聞かれてしまったヨーク・ダンチョン。なんだか、ヨークにはmuseumと名のつくものがたくさんあるらしい。
でも、やはり、あの城壁とヨークミンスターに尽きます、ね。
そして、スカボロ Scarborough
行き方
<電車>ロンドン・パディントン駅から電車で約2時間15分。ロンドン・キングスクロス駅から約2時間。そこからローカル線に乗り換える。またはヨークから1時間。
<バス>ヴィクトリア・コーチステーションから約5時間50分。
<私の場合>ヨークからローカル線に乗り換えた。
ヨークからローカル線で1時間ほど行ったところにあるスカボロ。「スカボロって、あのスカボロフェアのスカボロ?」と、何人かの友人に聞かれた。そうらしいのだが、私にとってのスカボロは、やはりリチャードゆかりの地だから価値があった。本当にこれって、リチャードの家なの?、と聞きたくなるほど小さな家が、リチャードV世の家として存在していた。
とはいえ、このスカボロ。最近はどうだか知らないが、私が行ったころは、ガイドブックにはあまり紹介されておらず、「地球の歩き方」に載っていた宿はユースのみ。できればシャワーは共同じゃないほうがいいな・・と考えた私は、スカボロに着いてから、tourist
information(i )で宿を探すことにした。安くて、シャワーが付いているシングルルーム。この私のオーダーに、i は見事に応えてくれた。でも、i の人が電話しても誰も出ない。「すぐ帰ってくるはずだから、行って待ってたら?」と言われ、不安を感じつつも、行ってみるとやはり留守。うーん、どうするべ。と、悩んでいると、向こうから、買物籠をさげた男性が登場。彼こそが、このB&Bのオーナーだった。
「シャワー付きの部屋と、バス付きの部屋のどっちがいい?」と、尋ねられ、その質問を理解するのに、うーん、と悩んでしまった。だって、バスがあるのなら、当然、シャワーも付いてるだろうと思うじゃないですかー。でも、違うんですよ。ちゃんとしたホテルならいざ知らず、イギリスのバスには、シャワーがないことが多いみたい。じゃぁ、どうやって、体を洗い流したり、髪の毛を洗ったりできるんだよぉーって感じですが、はてさて。それでも、イギリス人は不便を感じないらしいから、とても不思議だ!
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私が行ったのは春。でも、スカボロ的にはシーズンオフなんでしょうかね。なんだか、飲食店ですら夕方の5時ごろ店じまいしてしまい、ちょっと待ってよーっ状態。結局、夜ご飯は、ピザハットだったか、マクドナルドで食べる羽目になってしまった。そして、宿に帰ってきてびっくり。フランス料理のようなよい匂いが辺り一面に漂っていたのだ。どうやら、私が泊まったB&Bでは、早めにオーダーしておけば、オーナー自らがつくってくれる料理にありつけたらしい。
その匂いがあまりにも香ばしかったので、スカボロにはとても未練が残った。今度、イギリスに行ったら、またスカボロに行って、今度こそあの料理を食べさせてもらんだ!、とずっと思っていたのだが、果たせないうちにほぼ10年が過ぎてしまった。
まだ、あのオーナーは、あそこでB&Bをやっていてくれるのだろうか・・?
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(2001.10.9作成、10.16、2003.8.19修正)
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