白タク野郎にはご用心!!、の巻。
毎回、貧乏旅行であることもあり、イギリスでタクシーを利用したのは数えられるほどである。そして、いつも、と言っていいほど、トラブルに見舞われている感がある。そのせいもあって、タクシーには苦手意識がある。
はじめてタクシーを利用したのは、たぶん、2度目の個人旅行のときだった。ヒースロー空港からの行きはいちばん安上がりな地下鉄を利用したのだが、帰りはおみやげも増え、荷物が来たときよりも数段重くなった。私はそれでも地下鉄を・・と思っていたのだが、同行者のKさんは、自分がお金を出すからタクシーで帰りたいと言い出した。2時間前のチェックインを考えると、朝の7時には地下鉄に乗ってヒースローに向かったほうがよさそうだったが、ホテルのフロントで聞いてみると、そんな早い時間に地下鉄は動いていないよ、と言う。仕方なく、ホテルでタクシーを呼んでもらった。
イギリスのタクシー運転手には、ライセンスがあって、その試験は日本の数段難しいと聞く。お客にここへ連れて行け・・と言われて、その場所を知らないなんて言語道断。場所はおそか、すべての道も知り尽くしていて、どうやったらいちばん早く行けるかを知っていなくてはならないのだと聞く。そんなわけだから、日本よりも安心できるかと思いきや、そうではなかったのである。
そのとき、ホテルのフロントの人が呼んでくれたのは、正規のタクシーであるブラックキャブではなく、ベンツ=白タクであった。あれ? メーターがないなぁ・・と思ったが、疑うことを知らない私たち(まだ若かった!!)は、やってきた車に乗り込んだ。ヒースローまでの道すがら、けっこう和やかに会話も進み、ムードはよかった。が、「職業は何なの?」と聞かれて、正直に答えたのがよくなかったのかもしれない。「彼女(私の友達)は銀行に勤めているのよ」。あとは何を話したのか、全然記憶にない。降りる段になって、彼女が50ポンド札しかないと言い出した。そして、その50ポンド札で支払ったところ、おつりはたったの20ポンドだった。これは、今の相場でいえば適切な価格と言えるかもしれないが、その時、ロンドン市内からヒースローまでの地下鉄運賃は1ポンド90。ざっと今の半額である。単純に物価が倍になったとして計算すると、
30ポンドは今の60ポンド弱に相当することになる。「え? ホテルのフロントの人には20ポンドって聞いていたんだけど」、と言うと、「いいや、30ポンドだ」とタクシー運転手が言う。しかし、手数料としてすでにフロントで5ポンド支払ったことを伝えると、その運転手は、「あいつは悪い奴だ!」という捨てぜりふとともに、
5ポンドだけは返してくれた。よくよく考えれば、朝の7時に地下鉄が動いていないはずはない。きっとフロントの人もタクシーの運転手もグルで、両方とも悪い奴だったのにちがいない。しかし、その頃は、今よりも、もっと英語が話せなかった私たちは、抗議することもできず、すごすごとタクシーを見送ったのであった。結局、友人にだけ散財させるわけにもいかず、タクシー代は、ワリカンとなったのであった。
初めてAkikoさんとロンドンに行ったときのことであった。朝の7時半、ウインダミアに行くために、B&Bからタクシーを呼んでもらい、ウインダミア行きの列車の発着駅であるユーストンへ向かうべく、まずは地下鉄の乗り換えなしでユーストンに行くことのできるヴィクトリア駅と急いだ。が、このときも、B&Bの人が手配してくれたのはブラックキャブではなく白タクだった。嫌な予感はしたものの、今回は、英語のできるAkikoさんと一緒だからいいや、と思ったのだが、フロントから言われていた7ポンド50、と言われていたにもかかわらず、案の定、タクシーを降りる段になって、運転手から要求されたのは12ポンドであった。が、Akikoさんは何も言わない。タクシーが走り去った後で、「ね、どうして、運転手にB&Bで言われてた金額と違うよって言わなかったの?」、と、他力本願の私が聞いたところ、Akikoさんいわく、「だって、荷物をトランクに預けてあるのに、何か言って、荷物ごとそのまま走り去られたら困るじゃないですか」。
外国で喧嘩をするときは、たどたどしい英語で抗議するよりも、日本語でべらべらまくしたてたほうがよい、という話を聞く。が、
Akikoさんと私には、そんな芸当、とてもできない相談だった。つまり、こういう場面に遭遇したとき、勝つか負けるかは、その人のキャラにかかっているってーことかもね。
そして、昨年、ロンドンの最後の晩だけベイズウォーターに宿泊した。この付近なら、空港までのシャトルバスがホテルまで迎えに来てくれる、という話を聞き、すっかりそのつもりでいたのだが、最後の晩餐を楽しんでホテルに帰ってきてからフロントに聞いてみると、シャトルバスの予約申し込みは10時までだという。げっ! 何とかならないの?、とフロントに聞いてみたが、もうダメだ!の一点張り。仕方なく、パディントンまで出て、ヒースローエクスプレスを利用することにした。パディントンまではそう遠くなかったのだが、重たいスーツケースの他にスポーツバッグまで抱え込んで歩くことを考えると気が遠くなった。そこで、フロントに、タクシーを呼んでもらうことにしたのだが、うっかりブラックキャブをね、と念押しし忘れたものだから、またしてもやってきたのは白タク! ガーン!! 運転手のずるがしこそうな顔を見たとき、嫌な予感はしたものの、パディントンは近くだから大丈夫かな・・、と思ったのが間違いであった。3日後に帰国することになっていた友人とはホテルの前で別れ、ひとり心細い気持ちで車に乗り込んだのだったが、乗った途端、運転手が、「パディントン駅だね?」、と聞いてきた。「そう」、と答えると、なんと彼は、とんでもないことを言い出したのだ。「ヒースローエクスプレスに乗るつもり? でも、今日はストで電車は動いていないよ。このままヒースローまで行くかい?」。怪しい。彼の言葉は全くもって信じられなかった。パディントンに着いて、もし本当に電車が泊まっていたとしても、地下鉄は動いているかもしれないし、駅からなら予約なしでシャトルバスにも乗れるかもしれない。「とにかくパディントンへ行って」、私は言った。それからパディントンに着くまでの時間の長かったこと! 私は、回り道をされてはならじ、と、「パディントンはすぐ近くでしょ? この道でいいの?」、みたいなことを言って、警戒心をあらわにした。そして、パディントンに到着。目と鼻の先すぐだったというのに、運転手は7ポンドを要求。私は、「あなたの悪事はお見通しよ」と目で訴えるべく、彼をにらみつけながら、チップなしできっちり7ポンドを払った。そして、パディントン駅の構内に入ってみると、案の定、ヒースローエクスプレスはストなどしておらず、しっかりと運行していたのであった。高めの料金をぼられたとはいえ、7ポンドで済んだのが勿怪の幸いだったかな。
もちろん、いつもいつも、こんなふうに白タクにひどい目にあわされたというわけではない。昨年は、友人のつてで、ロンドンの外れのLoughtonにあるお宅に泊めていただいたのだが、駅からかなり遠く、歩くにはちょっと距離があった。というわけで、夜、帰り道はほとんど白タク。が、一度もボラれたことはなかった。そして、この年、ヒーバー城を訪れたときも、白タクの運転手は、乗り込むときに聞いたとおりの料金で、私たちをお城まで送り届けてくれた。一昨年にソーンベリーキャッスルに行くときのタクシーも、とても人のいい若い運転手さんだったので、本当に気持ちよく利用することができた。
そして、もちろん、ブラックキャブにだって乗ったことはある。
私の経験から思うに、安めのホテルやB&Bからタクシーを呼ぶと、ブラックキャブではなく白タクがやってくる確率が高いようだ。だから、呼んでもらうときには、「ブラックキャブをお願い」、と念を押すこと。そして、できるだけ、言われた料金どおり(チップを含めて)に渡せるように、10ポンド札や1ポンド硬貨をたくさん用意しておくこと。「タクシーの運転手に50ポンド札なんか渡しちゃダメだよ」、と私の英会話の先生であるジョン P.も言っている。
さらにジョンの言うところによると、お金を渡す際には、運転手の目を見ながら、たとえば、「10ポンド」、といった具合に支払った金額を口で言うこと。こうしておけば、まずごまかされることはない。
というわけで、みなさん、くれぐれもご用命にはブラックキャブを! 白タクにはご用心!!
(2004.9.18)
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