レッドハウス

Red House

 前日までのうだるような暑さと打って変わり、その日の天気予報はひどい雨。2006年の旅の締めくくりはウィリアム・モリス*がその生涯でただ1つ所有したというレッドハウスを見に行くことに決めていた私は、「せめて昼まで、なんとか降り出さないでくれないかなぁ・・・」と念じながら、B&Bを後にした。
 10:01、ヴィクトリア発の列車で最寄り駅のBexleyheathまで。列車のなかで、レッドハウスが紹介されている冊子をよくよく読んでみると、レッドハウスの見学はガイドツアーのみ、しかも事前予約が必要、と書いてあった。
 「げげっ。事前予約ぅー? ってーことは、私、中に入れないのぉ?」。すっかり目の前が暗くなった私である。が、すでに列車に乗っている。とりあえずレッドハウスまで行ってみよう。中に入れなかったなら、外から眺めて、Bexleyheathの町でも見物してこよう、と腹をくくった。

 10:37Bexleyheath着。駅を出た途端、「Red House」という標識が目に付いた。これなら迷うこともなさそうだ。と、すぐに雨がぽつり、ぽつりと降りだした。
 「あーぁ。やっぱ今日は雨なのか・・・」。私は、バッグから傘を取り出して、レッドハウスをめざし歩き始めた。
 11時ごろ、レッドハウスに到着。ダメもとで、中に入っていくと、建物の中から何人か人が出てきて、「あら、あなたもツアー参加者?」と私に声をかけてきた。「実は私、予約してないんですけど、見たいんです。だめでしょうか?」。ガイドらしき女性が言った。「私はかまわないけど」。
 「やったー!!」
 大急ぎで入場料を払い、10人ぐらいの11時からのツアーに加わわらせていただいた。
 ガイドツアーは庭から始まった。外に出ると、いつの間にか雨はやんでいる。「なんてラッキーなの」。

ウィリアム・モリス(1834-1896)。イギリスの詩人、デザイナー。アーツ・アンド・クラフツ運動を起こし、植物のパターンの壁紙など美しいインテリア製品や書籍をつくりだした。


 レッドハウスは、ウィリアム・モリスが建て、その生涯で所有したただ1つの家である。赤いレンガでつくられた家は、中世(13世紀)のスタイルを、というモリスの意向を取り入れ、モリスと相談しながらフィリップ・ウェッブが設計した。家の1階には、玄関ホールとダイニングルームがあり、階段をのぼって2階には、いくつかの寝室や書斎、モリスの仕事部屋などがある。庭にはモリスが植えたという木があり、家の窓のステンドグラスはモリスとその友人であったBurne-Jonesによって描かれているなど、家の随所にモリスが施した工夫が見受けられた。
 が、モリスがこの家で暮らしたのは、1860〜65年のたった5年間であった。家がとても寒かったからだという話だが、パートナーであったBurne-Jonesの息子がこの家でスカーレット熱を患い、それが妊婦であった母親に感染して、生まれた子どもがたった3週間で死ぬという不幸に見舞われたことも一因であったらしい。
 


 ガイドツアーは庭から家の中まで。ひととおりの説明の後、「何か質問がある人ないますか?」とガイドさんが尋ね、次の場所へと進んでいく。壁かと思われた場所に実は扉があり、中に絵が描かれている、なんてびっくりなしかけも施されており、方々で歓声が上がる。和気あいあいとし雰囲気のなか、あっという間に1時間が過ぎていた。

(2006.8.16)
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