ネブワースハウス

knebworth House


 2003年10月の朝日新聞の「be on Saturday」で、ネブワースハウスが紹介されていた。1面には、夜になりかけたネブワースハウスの写真。「ブルワー・リットンの趣味が色濃く残るネブワース屋敷=英国ロンドン北郊で」とあった。
 「へぇ、これってロンドンの近くなんだ。そのうち行ってみたいな」と思い、そのまま保管した。
 そして、2006年。当初は初のウェールズ行きを目論んでいたのだが、結局ひとり旅になってしまい、資金的にもきつかったので、ロンドン近郊を回ることにした。と、思い出したのがネブワースハウスだった。あれって、どこにあるんだろう? ネットで調べてみると、キングスクロスから列車で40分ぐらいのStevenage駅から、車で少し行ったところにあるらしい。
 車で行く、ということはタクシーに乗らなくてはならない。タクシーって料金がわからないから、あんまり乗りたくないんだよなー、と思ったが、ネブワースハウスのサイトによると、イギリスに着いてから最初の土日なら、なにやらイベントが催されるらしい。もしかしたら、臨時バスが出てるかもしれないし、と考え、土曜日にでかけることにした。
 泊まっていたヴィクトリアからバスでキングスクロスへ。10:45ごろ駅に到着。昨年のテロ事件の以来1年経つが、まだ地下鉄は完全には復旧していないようで、その爆撃の激しさを感じた。
 当日券を買おうと切符売り場に行くと、窓口の係りの人が、「君、トラベルカードは持ってるかい?」と聞く。1 weekカードなら持ってるけど、と言いながら見せたところ、「それを持っていると、ちょっとだけ安くなるんだよ」と、料金から少し引いてくれた。ラッキー!!
 10bホームから11:06発の列車に乗り、11:45ごろStevenageに到着。駅を出て、臨時バスはないかなー、ときょろきょろしてみたが、どうやらそれらしきものは見当たらない。そこで、タクシー乗り場に行き、「ネブワースハウスに行きたいんだけど、いくらぐらいかかりますか?」と聞いてみたところ、「7ポンドぐらいかな。7ポンド以上かかったとしても、7ポンドでいいよ」と言ってくれた。
 駅から屋敷の門までは10分弱。門のところで降ろしてもらおうとしたところ、「入場料を払って。屋敷の入り口まで連れていくから」という。それもそのはず。帰りに屋敷から門まで歩いてわかったのだが、ネブワースハウスは広大で、屋敷から門までの道は延々と続き、かなりの距離であった。(笑)
 その初老のタクシードライバーは、数え切れない回数、ネブワースハウスに来ていて屋敷内をよく知っているらしく、門から屋敷までの道を行きながら、「あそこに見えるのはモスクだ。一族のお墓だよ」と教えてくれた。「みんな子どもを連れてきて、1日中、楽しんでいくんだ」。車道の両脇には野原が広がっていて、確かに、寝転んで遊んだら気持ちよさそうであった。

 「ペンは剣よりも強し」。有名なフレーズだけど、何からの引用だったっけな?、と、しばし考える人も多いと思う。これは、戯曲「リシュリュー」のセリフの一部分。「be on Saturday」によると、この屋敷にはかつて、この戯曲を書いたブルワー・リットンが住んでいたらしい。ブルワー・リットンにはちょっと妙な趣味があり、屋敷のあちこちは悪魔を催す装飾品で飾った。これに閉口した子孫がかなり修復したとのことだが、今でも屋敷のあちこちに、名残の装飾が見受けられた。
 
 屋敷の維持には、莫大な費用がかかる。というわけで、この屋敷の芝生では、ローリングストーンズやポール・マッカトニー、オアシスらのコンサートが開かれたこともあるという。また、映画「バットマン」や「ハリーポッター」の舞台としても使われた。
 さらに、維持費捻出のための観光客集めの一環なのか、芝生に巨大な滑り台が設けられていたり、屋敷の裏の庭には、子ども向けに恐竜やネアンデルタール人の人形が置かれていた。タクシードライバーのおじさんが、子どもが1日中遊べる場所と言っていたのはこれだったのか!、と納得した私である。
 屋敷の建物は広く、部屋を飾る装飾品も見事で、庭の手入れは行き届いていて、とても美しかった。私も十分、屋敷を堪能させていただいたことよ。

 2時過ぎ。屋敷を後にし、門へと歩いた。イベントが開かれているせいか、駐車場にはかなりの数の車が止まっていたが、この時間にやってくる車はまばら。しかもほとんどがレンタカーか自家用車で、タクシーでやってくる人は少ないようだった。
 あわやくば、誰かがおりたタクシーに乗って駅まで帰ろうと思っていたが、運がよくなけりゃ、の世界。来るときに乗ったタクシードライバーから、電話番号の書いてあるカードをもらっておいて正解だった。

(2006.10.9)


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