ヒ ー バ ー 城

Hever Castle


行き方
<電車>ヴィクトリア駅からOxtedまで約1時間10分。Oxtedで電車に乗り換え、Edenbridge Townへ。そこからタクシーで約10分。
<私の場合>ヴィクトリアからOxtedまで電車で。そこからタクシーに20分乗りヒーバー城に到着。

 7回目の旅のこと。英国観光庁でもらったパンフレットに載っていたヒーバー城に行ってみようと思った。そのパンフレットの記述によると、ヒーバー城へのアクセスは、「英国鉄道のEdenbridgeから約5 km。タクシーで約10分。Hever駅からはタクシーはないし、歩いて25分だがわかりにくい」とある。どうやら電車を使っていくのはちょっとたいへんなようだ。ひとりだったこともあり、Frames Richardsの半日バスツアーを使うことにした。
 ところが、である。夏の観光シーズンだったこともあり、バスドライバーはアルバイトのおじいちゃん。ロンドンを出発したはいいが、何時間たってもヒーバー城にたどり着かない。外の道路標識には、カンタベリーという文字が見えた。
 そして結局、ヒーバー城にはたどりつかないまま、半日バスに揺られたあげくにロンドンに逆戻り。ツアー代の払い戻しを受けたのであった。
 それ以来、行きたいなー、と思いつつ、なかなか機会がなかったのであるが、13回目の旅に行くと決まり、今度こそ、あのお城を見に行こう!と思い立った。
 最初は、懲りもせず、以前と同じバスツアーで行くつもりだったのだが、インターネットで検索してみたところ、ヒーバー城へのバスツアーはもうないらしい。HPのお客さまのお1人である、旅の達人、オスオさんにおうかがいしたところ、レンタカーを使ったという。やはり電車で行くしかないようだけど、駅から一人でタクシーに乗るのはいやだなーっと思っていたら、同行の友、Tsukasaさんがつきあってもいいよと言ってくれた。わーい!


 スペンサーハウスに行くことにした日曜日の午後の朝、できれば、ヒーバー城にも行こうよ、と言い出した私に、Tsukasaさんは、「ヒーバー城ってけっこう遠いみたいだよ。今日はやめといたほうがいいんじゃないなかぁ・・」と言った。「でもさ、そんなに遠くないと思うんだよね。2時間もかからないと思うから」と食い下がる私。だって、その日は、秋晴れの、本当にいいお天気だったんだもの。
 かくして、ヴィクトリア発、13:38の電車で、まずは乗り換え駅のOxtedを目指した。電車に乗って、駅で買ったパンをほおばりながら、「地球の歩き方」をながめていたところ、下車駅はEdenbridge Townになっている。あれ? Edenbridge Town? いやな予感がした。今度は例の英国官公庁のパンフレットを取り出してみる。Edenbridgeから約5 kmになっている。その昔、ヴィクトリア駅のtourist informationでもらった英国鉄道の路線図を見てみたところ、なんと、Edenbridgeという駅と、Edenbridge Townという駅があることがわかった。ヴィクトリア駅で購入した切符はEdenbrideまでだが、「地球の歩き方」の乗換駅を見て、Oxtedをめざしているわけだから、今、私たちがめざしているのはEdenbridge Townということになる。たぶん、ヒーバー城に近いのはEdenbridge Townだと思うから、向かっている駅は正解のようだけれど、私たちが持っているのはEdenbridge行きの切符だから、降りるとき、超過料金とられちゃうかなぁ・・と心配になってきた。でも、ま、運がよければ大丈夫かもねぇ・・なーんてふたりで話しつつ、成り行きにまかせることにした。
 Oxtedに到着。
 Edenbridge Town行きの電車の出るプラットフォームはどこかなぁ・・、探しているところに運よく駅員さんが通りかかった。「Edenbridge Town行きの電車はどこから出ますか?」と聞くと、「Edenbridge Town行きの電車は日曜日はないよ」と言う。「え、でも、私たち、切符を持ってます。今日買ったんですよ」、と切符を見せると、「これはEdenbride行きの切符じゃないか」。そうだった! 私たちはEdenbridge TownとEdenbridgeを混同していたので、間違って切符を買っていたんだった。「私たち、ヒーバー城に行きたいんですけど、ここからタクシーで行くのは無理かしら?」と聞くと、いかにも遠そうなことをいう。「それなら、Edenbridgeに行くにはどうしたらいいんですか?」。「乗り換え駅のEast Croydonに戻るしかないな」。マジィ? 気が遠くなった。
 いずれにしろ、ロンドン方向に戻るしかなさそうだったので、仕方なく電車に乗り込んだ。「今日はもう、あきらめようよ」とTsukasaさんが言う。East Croydonに戻って行くとなると、時間的にあきらめるしかなさそうだ、と私も思った。でも、ここで引き返したのでは、3〜4時間無駄にしたことになる。また別の日に出直すというのは、Tsukasaさんに申し訳ない気がした。今日あきらめるなら、もう今回の旅ではあきらめたほうがいいのかもしれない。
 ところが、電車は、10分たっても発車する気配がなかった。何時発か尋ねたところ、15:09だという。あと15分以上あった。私は、思いきって言ってみた。「私、思うんだけどさー。この電車の路線図を見ると、ここからEdenbridge Townまでは2駅じゃない? そんなに遠くないと思うんだよねー。だから、ここからタクシーに乗って、ヒーバー城に行くこともできるはずだと思わない?」。そこで、ひとまず駅の外に出て、タクシーの運転手に尋ねてみることにした。
 が、駅を出て、タクシーを捜してみたが、1台もみつからない。うーん・・。やはりダメか。でも、あきらめてはいけない。「もう1つ出口があったから、そっちに行ってみよう」。でも、もう1つの出口はもっとさびれていて、ますますタクシーなどいそうもなかった。うーん。
 ところが、もう一度、最初の出口に戻ってみると、さっきはいなかったタクシーが1台止まっていた。きゃーぁっ。
 「ちょっとおうかがいしたいんですけど、ヒーバー城までここから行くとすると、何分ぐらいかかるかしら?」「20分ぐらいかな」。20分ならタクシー代もそんなに高くはないはずだった。「いくらぐらいかかるかしら?」「18ポンド」。よし、のった! 20分で着くなら、ここで電車を待ってるのとほぼ同じ時間で、ヒーバー城にたどり着けるということだ。
 途中の道は、入り組んでいて、道を知っていなければ歩くのは到底無理そうだった。「やっぱ、車がないと行けない所なんだねー」「それにしても、最初はいなかったタクシーが戻ってきたらいたのは、最高にラッキーだったよねー」
 かくして、2度目の正直にして、私は、やっとヒーバー城にたどり着いたのであった。ふぅー。

 その日は、本当に気持ちのよい青空だった。すんなりたどり着くことができなっただけに、青空に映える城をながめたときの気持ちは格別だった。


 ヒーバー城はケント州にある。エリザベスI世の母、アン・ブリンが子供時代を過ごした城で、1270年ごろに建設されて以来、2度、増築されている。まず、1500年ごろ、Bullen一族がチューダー様式の家を増築した。そして、1903年、アメリカの大富豪、William Waldorf Ascotが城を修復し、チューダー様式の村をつくり、見事な庭と湖をつくりあげたのだという。

左:城に向かって左手側の風景;右:城から出てすぐの所にあるつるし門

 お城は想像したよりも小さかったが、その敷地は広大だった。城の中を見て、庭を散策。庭はきちんと手入れされていて本当に美しい。そのあと、グッズショップをながめていたら、あっという間に5時前になった。
 門の外に出てみたが、タクシーは1台もいない。電話をかけて呼ぶしかなさそうだったが、公衆電話も見当たらなかった。門番のおじさんに、ここからタクシーを呼べるかしら?、と聞くと、「電話して聞いてみるよ」と言ってくれた。
 待つこと約20分。城の横にある教会の前に、門番さんが言っていたとおりの、Relyonというサインをつけたタクシーがようやく現れた。ほっ・・。
 持っているのは、Edenbridgeからの切符だったので、本来ならEdenbridgeに行くべきだったが、Edenbridge駅はローカル線だ。もしかしたら、Edenbridge Town駅と同じく、日曜日は電車が走っていない可能性があった。それなら最初に乗りつけた、Oxtedに戻ったほうがいい、と、ふたりで判断した。
 17:40ごろOxtedに到着。
 ところが、駅に着いてみると、ストだか何だかで、21時過ぎまでロンドン行きの電車はないようだ。「マジィ? ってーことは、スティ先に戻るのは、夜中かも・・」。死ぬほど気が遠くなった。事情を聞こうにも、駅には駅員さんすらいないようだ。と、そこへ、「ロンドン行きの電車が1番ホームから出ます」というアナウンスが聞こえてきた。慌てて、列車に乗り込んだ私たちである。
 ところが、電車には誰も乗っていないし、まるで発車しそうもない。うーん・・。
 何時発なのか、本当にロンドン行きなのか、確認しなくてはならないが、降りた途端に発車してしまっては困る。そこで、ドアがあいたままじゃ、発車することもないだろうと、入り口のドアを開け放し、電車を降りて確認してみると、今度はホームに18:10発という表示が出ていた。
 が、電車は、出発予定の18:10になっても発車しなかった。いったいどうしたのかなー、と思っているところへ、かなりの人々が電車に乗り込んできた。どうやら、連絡していたバスの到着が遅れていたので、来るのを待っていたらしい。
 日曜日には電車が動いていなかったり、21時過ぎまで電車がないはずだったのが18:10の電車があったり・・。イギリスの電車は当てにならないという話を聞いていたが、スト以外で、こんなに振り回されたのは初めてのことだった。

ヒーバー城の庭。中央:水の迷路。

 その朝、今晩は、一緒にパブに食事に行きましょう、と、スティ先のご夫婦と約束していたのだが、結局、私たちが戻ってきたのは20時過ぎのこと。大うそつきでごめんなさーい。
 でも、Tsukasaさんがあとで聞いたところによると、「あなたたちが今日、ヒーバー城に行くって聞いたときから、もう帰ってくるのは遅くなるね、ってふたりで話してたんだ」と言っていたそうだ。Mevesご夫妻、まったく、お見事な予想でした。脱帽!

(2003.11.29)
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