畸人読書室 #1
『野火』
大岡昇平

ゾメガ「さて、今回取り上げる本は、大岡昇平の『野火』である」

メデュー「う〜、読むんじゃなかった…」

ミノッタ「晩飯が食えそうにない…」

ゾメガ「この作品は日本における戦争文学の代表的作品です。太平洋戦争末期、ごく平凡な中年男・田村一等兵が補充兵として敗戦が確実となったフィリピンへ送られるが、肺結核を患い、数本の芋を渡され中隊から追放されてしまう」

メデュー「リストラされたサラリーマンじゃん」

ミノッタ「もっと深刻だよ、後は死ぬしかないんだからね〜」


ゾメガ「味方から見放された田村は、いくつもの野火を見る。ここでいう野火とは、フィリピン人が農業のために焚く火のことで、そこには必ず人が居ることを示している。しかし、日本兵である田村は現地の人々にとっては敵でしかない。田村の孤独は深まっていく…」

ミノッタ「そんな状況でも、自分のことをまるで人事みたいに見詰めるような、醒めたところがあるよね」

ゾメガ「田村はふとしたきっかけで、無抵抗の女を射殺してしまう。このことは田村の心に影を落とし続けることになる。そして死屍累々の原野を彷徨い続けるうちに、極度の飢餓状態に陥り…」

メデュー「ジャンジャジャーン、ここからがクライマックス!」

ミノッタ「野戦病院で知り合った仲間から食料を分けてもらうが、それはなんと!」

ゾメガ「この作品で注意すべき点は、主人公の神に対する異様な概念、そしてしばしば『誰か』に見られている様な感覚に捕らわれること。それが誰だったかは終盤で明らかになるのだけれど」

メデュー「うう、狂気の世界!」

ゾメガ「とにかくあまりにも異常な状況下の人間を描いた作品であり、戸惑う人も多いと思うけど、主人公の孤独は現代人の孤独にも通じるものがあると思う。ぜひ読んでみてください」

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