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おみあし倶楽部






現代は趣味の時代である。
30年くらい前までは、野球と将棋と編み物と釣りとハンダ付けと、その他あわせても20くらいしかなかった趣味は、今や数えきれないほどに膨れ上がり、さまざまな人がさまざまな趣味と嗜好を主張し、堪能している。
そして、需要あるところに供給あり。さまざまな趣味と嗜好をもつ人々のために、その趣味と嗜好の数だけさまざまな雑誌がつくられているのである。
卓球愛好家には『卓球王国』(里文出版)、演歌ファンには『演歌ジャーナル』(コロムビア音楽出版)、バスガイドマニアには『BUS GUIDE』(クラリオン)、そして足フェチには『おみあし倶楽部』(芦屋出版)。

何を隠そう、小生、恥ずかしながら足フェチなのである。
この世で何がいちばん好きといって、
「足」
これである。足さえあれば、大満足なのである。
足だけを見るために逆立ちして歩きたい、と常々思っているくらいである。小学6年生のときには夏休みの工作に、紙粘土で「理想の足模型」をつくってしまったほどである。不幸にも工作の才のなさから、できあがったものは理想とはかけ離れていたのであるが、ともあれすでにその頃から、小生は足へとひたむきな情熱を注いできたのである。

そんな小生が毎月講読せずにはいられない雑誌が、上記『おみあし倶楽部』なのである。
もっとも、足フェチのための雑誌は他にも何点かある(それだけ我が同胞、足フェチがたくさんいる、ということだ。心強いではないか)。『美脚マガジン』『足っ娘通信』や金髪ギャルの『leggy』など。
しかしながら、これらの雑誌は小生を充足させないのである。これらは、足にもこだわっている、というにすぎない。小生は足のみにこだわってほしいのである。
その点、『おみあし倶楽部』は理想的である。腰から上の不要な部分を捨象した、純粋に足だけしか写っていないページが、なんと全体の約94%にまでのぼっているのである(小生調べ)。
おお、これぞまさに、足の、足による、足のための雑誌。ページを開くだけで、小生はもう大コーフンなのである。

諸君のような一般人も、カラーページの約4割を占める「脚線美」に主眼を置いたページには、瞠目するに相違ない。その流れるがごとく滑らかな曲線の連続に、小生は思わず、ほう…と嘆息せざるをえないのである。
圧巻なのは、毎号巻頭を飾る「今月の《ザ・おみあし》」である。太股から爪先までの足の実物大!ピンナップなのである。とくに気に入った足のときには、切り抜き用と保存用の2冊を買ってしまうのである。
また「脚スリーサイズ」がすべての足に明記されているのも嬉しいかぎりである。脚スリーサイズとは、太股の付根・膝・足首のサイズである。最近人気のAV女優・萩浦すももの足は、上から48・30・18なのか!
「おお!」
と、小生のようなマニアにはこたえられないのである。

しかし、脚線美のみが足の悦楽のすべてではない。「総合的足フェチマガジン」と謳っている通り、『おみあし倶楽部』は足に関わるフェチなら何でもござれ!の足総合マガジンなのである。でなければ小生が納得するはずがないではないか。もちろん小生のみならず、パンストフェチ、靴フェチ、ソックスフェチから足の指フェチ、膝小僧フェチ、くるぶしフェチまで、誰もが納得する一冊なのである。
とくに納得なのは、毎号おもなモデルさんの「実物大足の裏」が載っていることである。足の裏というのは手の平以上に、いや、かの文豪谷崎潤一郎が述べているがごとく顔以上に、表情豊かであり、ひとりひとり個性があって、愛らしく、悩ましく、小生は思わずうっとりじっくり食い入るように見つめてしまうのである。…じゅじゅずるっ。いかんいかん、よだれが。

と、以上のように足に入れこんでいる小生であるが、世の中は広い。小生など足元にも及ばぬディープな足フェチはまだまだ大勢いるのである。充実の読者投稿ページを読むと、それを痛感せざるをえないのである。
『おみあし倶楽部』は毎号読者から募集した「脚線美を讃える詩」を掲載している。これがまた、どれもこれも身の打ち震えるような佳作ばかりなのである。採用されると貰える「本物ナマ足から直接型抜きした立体《ザ・おみあし》」を目当てに、小生もときどき挑戦するのであるが、いやあ、なかなかうまくいくものではありませんな。
自薦・他薦のこだわりのおみあし達人の紹介コーナー「わがおみあし道」は、さらに奥が深い。足の爪コレクターや全国女子中学校の学校指定靴下収集家、さらには美女の水虫の皮マニア…。足という小宇宙に秘められた無限の可能性に、小生は思わず戦慄するばかりなのである。
今月号に紹介されていたのは、魚拓ならぬ「膝拓」採集家であった。足の裏拓ならよく聞くのだが、膝とは盲点であった。…小生もほしい! 膝拓ほしい! ほしい!

小生もいつの日か、彼らに優るとも劣らぬ独自の足フェチの境地を開きたいものである。そのためにも『おみあし倶楽部』は決して欠かせないのである。



(注)言うまでもないことかもしれませんが、この文章はフィクションです。『おみあし倶楽部』は存在しません。私も小生ではないので足ファンではありません。
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