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相撲界M&A
2000/03/26










【注:この文章は2000年3月に書かれたものです。】

大相撲春場所が千秋楽を迎えた。
幕尻の貴闘力が初の優勝を決めたり、若乃花が引退したり、武双山が大関昇進を確実にしたりと、かなり話題性に満ちた場所だったといえよう。
が、にもかかわらず、全体としての盛りあがりは、なんだかいまひとつである。
数年前、まだ貴ノ花が綱に何度も挑戦していた頃のほうが、はるかに相撲はおもしろかったような気がする。

なぜか。
ひとつには、板井の八百長暴露発言に見られるような相撲界内幕のごたごたに、世間がうんざりしてる、ということがあるだろう。
貴乃花のキャラクターがいまひとつおもしろみに欠ける、なんてことも一因だろう。
あいもかわらず女性を土俵に上がらせなかったりして、何様のつもりだ、と思われたりしてる、ということも否定できない。

が、最大にして根本的な要因は、相撲界自体のぬるま湯的体質にあるに違いない。
なにしろ、世間は今、たいへんなんである。不況からなかなか抜けきれない。大企業がなりふりかまわず生き残りに血道をあげているのである。
それなのに、相撲界ときたら、どうだ。
不況と停滞を打破するための経営努力をおこなっている部屋が、どこにあろう。みなが目先の保身を考えるばかりで、創造的な革新など、ないに等しいありさまだ。
このままでは業界全体の先細りはまぬがれない。
そろそろ、根本的に相撲界のありかた自体を考え直すときなのではないのか。世間の市場、世間の企業と同様に、相撲界も各部屋も、変革と再生を本気で考えるべきときなのではなかろうか。

もちろん、相撲界内部に変革の気運が皆無である、と言うつもりはない。
伝え聞くところによると、それなりの改革案があがっているそうである。
が、どれもこれも小手先だけの変更に過ぎないようである。
たとえば、八百長疑惑を晴らすために、本気であることを明かにしようと、
「土俵に高圧電流を流す」
「土俵を有刺鉄線化」
などという案があるそうだが、笑止千万。プロレスだってそれくらいのことをやっている。
「結びの一番をまわし剥ぎデスマッチに」
なんていうのも、相撲人の知性と品格の低さを露呈するばかりだ。
「サッカーくじにあやかって、相撲くじ導入」
など、八百長を助長するばかりではないか。

変革の第一歩は、もっと身近なところにある。
すなわち、各部屋の競争と交流を、私企業なみに活性化すること。これなのである。
本場所やら稽古やらで、勝負したり力士を派遣したりするばかりでなく、常日頃から、さまざまな手段でもって、お互い刺激しあう、という地味なところから大相撲は変わらねばならぬ。

そもそも、十両をひとりふたり抱えてるだけの弱小部屋が、安穏として存続している、などというのは、今の時代、許されることではないのだ。
小さな部屋は、どんどん強い部屋に合併、吸収されてしまっていいのだ。
以前、今の二子山部屋がどこだったか忘れちゃったけど何かと一緒になって大きな勢力になったときにわりと話題になったけど、あんなのは日常茶飯事にならなくてはいけない。
IBMとドコモが提携しちゃうのだ。九重部屋が北ノ海部屋を合併しちゃってもいいではないか。
そうやってどんどん部屋間のM&A、弱小部屋の淘汰が進むと、必然的に同部屋の力士が多くなる。
そこで、
「同部屋対決の実現を」
などというのが決り文句のように出てくるのだが、あれもバカのひとつ覚えのようで知恵がない。
同じ部屋の力士同士で、本気で対決できるわけがないではないか。
正しい解決策は、どう考えても、これしかない。
ズバリ、
「トレード」
そうでしょ?
プロ野球がオフシーズンも人々の耳目を集めうるのは、トレードあってのゆえである。
それにならって大相撲も、
「高砂部屋、曙獲得!」
「琴錦に十両2人つけて、貴ノ浪とトレード」
「寺尾が戦力外通告、FA宣言」
などというのが、スポーツニュースを賑わせるべきなのだ。

さらに、同門の者に限らず、もっと世間一般にも門戸を開くべきだ。
親方株なんて、所詮金銭で売買されるもの。相撲界OBだけのものでなくてもいいはずだ。
いきなり、
「ビル・ゲイツ、親方株取得!舞黒(まいくろ)部屋旗揚げ!」
などということがあっても、いいではないか。
「ビル・ゲイツ親方、金にあかせて続々関取引き抜き!ついに貴乃花も舞黒部屋に!四股名も「貴乃花2000」に改名!」
なんていうのがスポーツ新聞のトップを飾ってもいいではないか。
そうなれば、
「ビルなんかに負けるな!」
とばかりに、日本人各部屋は目の色を変えるだろうし、ファンだって「アメリカ人なんかぶちのめせ」と、思わず頭にカッと血が上り、興奮してしまうに違いないのだ。少なくとも、相撲界の活性化は間違いない。
そうして、打倒舞黒部屋を合言葉に、武蔵川部屋とアップルが提携したりしてしまうかもしれない(それにともない武蔵丸も四股名を「i武蔵丸」に改称することになる。よくわからないけど)。
そうなってくると、大相撲は単なる日本の伝統行事ともスポーツともつかぬイベントにとどまらず、国際経済が注目するところとなり、結びの一番の結果が翌日のダウ平均株価に影響を及ぼすことになったりして…、あー、しかしそうなると、ますます八百長が横行しそうだなあ。
ダメじゃん、この案。



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