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激東京市
2001/02/17










一部の東京都民しか知らないことであるが、去る2001年1月21日、東京都に新しい市が誕生した。
田無市と保谷市が合併したのである。
そして生まれたのが、じゃーん、これである。
「西東京市」
なんじゃ、そりゃ。
話題性は皆無。
そもそも元の田無と保谷からして、地味でマイナーで東京だか埼玉だかわからないような場所だったというのに、それらが一緒になったのが西東京では、ますます地味になるばかりだ。

「西東京」だなんて、どう見ても普通名詞みたいなものではないか。
当たり障りがないどころか、存在感がないというか、あってもなくてもどうでもいいというか、うらなりというか濡れ落ち葉というか、とにかく田無と保谷だったほうが、余程マシである。
「東京」をアピールしたいのなら、「西」なんてつまんない接頭語なんかではなく、もっとインパクトのあるものをつければよかったのだ。
たとえば、
「激東京市」
「爆東京市」
「超東京市」
なんていうのは、どうであろう。
同じ1文字とはいえ、これなら全国的に話題になったことは疑いないはずだ。
今後合併を考えている市町村にも大きな影響を与え、
「真・横浜市」
「轟天仙台市」
「日の下開山福岡市」
「ウルトラダイナマイト山形市」
などが続々と生まれたことであろう。

もうひとつ欲を言えば、「東京」というほうも何とかしてほしかった。60年代ではあるまいし、グローバル化、インターナショナル化が当たり前のものになっているこの時代に、「東京」を標榜するのも笑止ではないか。よその地名を冠したいのなら、東京や日本の枠組みを超えて、
「北シドニー市」
「西ニューヨーク市」
などとすれば、オーストラリア、あるいはアメリカ合衆国に歓迎もされ、ある程度の知名度を勝ち取ることができたのではないか。

度量小さく器量狭く、当たり障りのなさを最優先にして、東京の西というのにそれほど固執したいのであれば、せめて、
「ウエスタン東京市」
あたりにすれば、それなりのインパクトが生まれたはずである。
それをまあ、よりにもよって、単純素朴、単刀直入、ひねりもオチもなく、
「西東京市」
とは、まったくあきれかえるばかりではないか。
聞くところによると一般市民からの公募によるそうだが、古来、この手のことで庶民の意見が正しいものであったことなど一度としてあっただろうか。この21世紀、ポストモダンの時代に、わざわざ衆愚政治なのか。ペロポネソス戦争時代のギリシャじゃないんだから。

と、ツッコミを入れたくなるわけであるが、それにしても、石原慎太郎都知事は、このダサダサなネーミングを却下できなかったのであろうか。
まあそこはそれ、法律上のいろいろな制約があるかもしれないが、そのあたりを力業でねじ曲げ、ムリヤリ強引に有無を言わさぬ押しの強さでもって、
「西東京市? ダメ。却下。出直してこーい!」
と突っぱねるべきだったのだ。
そうしてこその都知事というものでしょう。
あるいは、いっそのこと、埼玉県に押しつけちゃうとか。
「埼玉県西東京市」
というのであれば、それはそれでしっくりときて、ダサダサながらも落ち着いた響きになるような気がする。
ともあれ、これが青島幸男だったら、ぜったい突っぱねたに違いない。
と、そんなわけで、にわかに青島前知事に対する再評価の気運が盛り上がっているこのごろなのである。


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