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眼下の敵
2001/02/19










アメリカの原子力潜水艦グリーンビルが、日本の宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」に衝突した。日本時間2月10日午前8時45分ごろのことという。当然、潜水艦の方が強いわけで、えひめ丸は即刻沈没。乗船者のうち高校生4人を含む9人の行方は、19日現在、不明のままである。潜水艦には民間人16人が乗船して操縦もしていたとか、米軍側の対応は船乗りの風上にも置けぬとか、いろいろと憤懣やる方ない事実がその後浮かび上がったりしたが(注)、それはさておくとして、事故の報道を聞いてすぐに思い出したのが、「なだしお号事件」である。
1988年7月23日、横須賀沖の海上で、海上自衛隊潜水艦「なだしお」が大型釣り船「第一富士丸」に衝突。このときは30名の犠牲者を出した。えっ、もう10年以上も昔なのか、と思ってしまったくらい、生々しい記憶を残した事故であった。

それにしても、なだしおといいグリーンビルといい、われわれ素人目からすれば、不可解に思えてならない。どうしてこのような事故が起こってしまうのか。
何しろ、地球の表面積の約70%が海なのだ。3億6100万平方キロが海なのだ。その広大な大海原の上、ごくごく疎らにしか浮かんでいない船に、各国全部合わせても数えるほどにしかならないはずの潜水艦がぶつかってしまうというのだ。確率から言ってもおかしいではないか。船の数をaとして潜水艦をbとして海洋面積をSとして、えーと、よくわかんないけど、とにかく船のいるところにたまたま潜水艦が浮上してしまう確率など、ごくごく小さなものである。なのになぜ、こんな事故が起きてしまうのか。エッ、どうなんだ。

と、ここでふと気がついた。
そうだ。潜水艦が数えるほどしか存在しない、という前提が間違っているのではないか。実際には各国とも、公表しているよりも多くの、はるかに多くの潜水艦を保有しているに違いない。海面下で目に見えないのをいいことに、めったやたらと潜水艦を造りに造りまくって次から次へとどんどんどんどん進水させているのだろう。海洋中には夥しい数の潜水艦が、わらわらわらわら航行しているのだ。そうして今も海上では、あっちでもこっちでも、ほらまたあっちでも、無数の潜水艦がポコポコポコポコ浮上したり潜ったりしているに相違ないのだ。
事故が起こるのも、むべなるかな、である。船乗りの皆さんはこの事故を教訓に、今後、潜水艦の急な飛び出しには十分注意を払うべきであろう。

しかし、それはそれとして、海洋中の潜水艦量がそれほどまでに膨大である、という事実が明らかになった今、衝突事故以上に考えるべき問題があらためて浮上してくる。
たとえば、海水面の上昇が、それである。
二酸化炭素による温室効果で極地の氷が融解して云々という説明が一般的には通用しているが、本当にそれだけなのか。実は海洋中に大量投入された潜水艦の総排水量が莫大なものになっており、それが海水面上昇の一因になっている、ということも考えられるのではないか。アメリカ海軍の軍事アナリストなどは、1年間の海水面上昇値から各国海軍の潜水艦投入艦数を推定したりしているのかもしれない。

海洋にまつわる問題といえば、今や定番となっているエルニーニョ、あれも潜水艦の仕業ではないか。南米ペルー沖の海面水温が上昇するこの現象であるが、実はときどきあのあたりで、「世界潜水艦極秘大演習」などが開催されていはしないか。
続々と群れ集う潜水艦がペルー沖を中心とした海域にひしめき合い、船体からの発熱およびスクリューによる海水撹拌によって引き起こされる発熱の総計は膨大なものに上り、それが付近一帯の海水温を上昇させているのではないか。また、ひしめく潜水艦の群れに魚たちも恐れをなし逃げ惑い、それゆえに漁獲量が激減するのではないか。
南米の人たちは、エルニーニョだ、神の子だ、などと浮かれていないで、もう少し海面下の現実を直視してはどうか。

だが、それにも増して、海水温をそれほど上昇させてしまうほどに潜水艦が集結する、ということ自体が、実はたいへんな事態の引き金となりうる。
いわば、膨大な量の鉄の塊が局地的に集中してしまうのである。地球上のただ一カ所に、そんなに質量が局在してしまっていいのか。地球の自転運動に悪影響を及ぼすのではないか。地軸がぐらぐらと不安定になって、それがきっかけになって地殻の大変動が巻き起こり、地は割れ、天は裂け、マグマは噴き出し、大洪水が襲い、阿鼻叫喚の地獄絵図が現出するのではないか。

ああ困った。どうしよう。
核の冬の脅威が過ぎ去ったと思ったら、さらなる脅威が未来に待ち構えているのだ。見えざる眼下の敵によって、地球は滅亡の危機に瀕しているのだ。
だが、未来は変えられる。
今からでも、遅くはない。
各国首脳の皆さん、軍縮をしましょう。
地球の未来を救うため、潜水艦を削減しましょう。
せめて、百万分の一くらいに。



(注)仮に船名が「えびす丸」であったのなら、“これがもし「えびす丸」ではなく「えるびす丸」だったらならば、米側の対応も少しは違っただろうに…”という不謹慎な文章がひとつ書けたはずであるが、実際には「えひめ丸」であったので、こういう根本的には真面目な主旨の内容になりました。
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