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できちゃった…、と お困りのかたには |
『赤ちゃん使用説明書』 アン・ラモット 白水社、1996 ¥1,800 |
物事というものはいつもいつもうまくいくとは限らないものであって、長い人生の中にあっては、用心に用心を重ねたつもりでも、たまには、 「できちゃった…」 ということがあるかもしれない。 そんなときに、 「結婚するか、お金くれるか、どっちにすんのよ!」 と相手に迫る前に、読んでみたい本がこれである。 アン・ラモット『赤ちゃん使用説明書』。 無責任なボーイフレンドが逐電してしまったあと、それでも子どもを産むことにした作者が、その子どもサムが生まれてからの1年間を日記体でつづったのが本書である。 いや、もう、たまりませんな。 胸打ち震える小説もいいけど、こういうありのままの事実をそのままつづったノンフィクションものって、どどんと目の前に突きつけられると、もう参りました!と白旗振って降参せずにはいられないときがある。 この本なんかはその最たるもので、ああもう読んでいて何度感激のあまり本を閉じてしまったことか! まあとにかくまず、母ラモットの親バカぶりが、もう何とも愛らしくってキュート。 《サムの手は小さな星のようだ。》 《今日はサム・ラモットの首がすわったことを記念する日だ。》 《サムは日に日に大きくなっていく。見ているとすごくつらくなる。ずっとこのままでいてほしい。》 とか何とか、とめどなくあふれる愛情が、全ページいたるところにちりばめられてるのね。ああもうとるものもとりあえず、赤ちゃんひとり欲しい!と思ってしまう。 さらに後半、衝撃の事実が発覚して、もとは日記のはずなのに、話は生と死のつづら折り人生のタペストリーへと怒濤のように流れ込み、 「ああもう、生きるっていうことは、生きるっていうことは…」 と思わず言葉がうわずってしまうのだが、まあそれはまた別の話。 とにかく、 「結婚するか、お金くれるか、どっちにすんのよ!」 などというのはつくづく低次元の問題であった、夫などよりよほど子どものほうが欲しい、というような、まあある意味で国の未来にためにもなるような結論に、一読すれば達するであろう、そんな本なのである。 |