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ロリコン男の気持ちを
知るためには
「花世の冒険」
(『かくれんぼ』収録)
平岩弓枝
文春文庫







「サバイバルナイフを持ち歩く中学生」
などと聞くと、良識ある大人などは、
「理解不能」
「世も末」
「われわれが子どものころはだなあ…」
と言い出すものであるが、しかしまあたとえば、プレイステーションか何かの、「バイオハザード」みたいなホラーものゲームをやってみなさい。ゾンビやら狂犬やら何やら、襲ってくるモンスターを前に、
「ああ、せめて今ナイフの一本でもあれば安心なのに…」
という切実な気持ちを味わうことができるわけで、
「あっ、もしかして、ナイフを持ち歩く中学生というのも、こんな感じなのかなあ」
と、なんとなく彼らの気持ちがわからぬでもない、ということにもなるのである。

では、それが「サバイバルナイフを持ち歩く中学生」ではなく、「ロリコン男」であるとしたらどうか。
「ぎゃっ、ロリコン男の気持ちなんか、わかりたくもない」
という向きもあるだろうが、まあそこはそれ、思いやりというか斟酌というか、人間たるもの、相手の立場に立ってものを考えることは必要だ。ロリコン男の立場になってみると、新たな世界が開けてくるかもしれないではないか。

ということで、ロリコン男の気持ちになってみたいのだが、ではどうすればよいのか。
ナイフを持ち歩く中学生の例にならって、
「はにゃ〜んロリロリ大作戦」
などのゲームをやればよいのか、というと、たぶんそうではないような気がするところが、世の中の奥深さである。
ここはひとつ、小説を1編、すすめてみたい。
平岩弓枝の〈御宿かわせみ〉シリーズ第19作『かくれんぼ』の「花世の冒険」である。

〈御宿かわせみ〉っていうのは、周知の通り、〈鬼平犯科帳〉などと並ぶ連作時代小説の代表ですね。で、その花世ちゃんってのが誰のどういう子どもでどういう位置にあるキャラなのか、などということは話せば長くなるので省くのだけど、まあとにかくこの花世ちゃんがかわいいのなんの!
ちっちゃいくせして、けなげでがんばり屋で、あどけなくて甘えんぼで、もう、読みながら本に向かって手振っちゃいますね。
「花世ちゃ〜んっっ!」
という感じで。
思わず、何となくロリコン気分が油然として沸き上がってきてしまうような気がするのだけど、しかしよく考えてみれば、これってロリコンというよりも、ただの、
「子ども好き」
のような気がする。
ロリコン男って、もっともっと、こんなところに書けないようなことを考えてるような気がする。ぎゃっ、イヤだわイヤだわ。
ってことで、ごめんなさい、ロリコン男の気持ちはわかりませんでした。
いやはや、世の中、奥が深い。
やっぱり「はにゃ〜んロリロリ大作戦」をやってみたほうがいいかもしれぬ。


(注)御宿かわせみについて、さらにさらに知りたいかたは、「御宿かわせみの世界」がおすすめです。
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