夕暮れの翳り
−帰宅途中の車のなかで−
天気が良くて にぎやかだったような日は殊更に
夕暮れの翳りが少し寂しく思えてくる
うっすらとゆるやかに
景色がすこしずつ蒼ざめて行く時間
杉の森は沈鬱に暗く押し黙ったままだ
今日一日の
記憶の断片をもどかしくたぐり寄せながら
何か忘れていたことはなかったか
何か間違ってはいなかったかと
途切れ途切れの反芻
<あしたはどんな一日になるのだろう?>
黄昏時・トゥワイライトゾ−ンは逢魔が時
どこか心もとない
黒ずんだ薄明の中をすりぬけるように家路を急ぐ
春の日暮れの帰り道は
大きな大きな揺籃のようにゆったりとゆれながら
やがてゆっくりと音もなく
安寧に満ちた静謐な夜へとたどり着く