不来方のお城の草に寝ころびて

     空に吸はれし

     十五の心











      やはらかに柳あをめる

     北上の岸辺目に見ゆ

     泣けとごとくに










      病のごと

     思郷のこころ湧く日なり

     目にあをぞらの煙かなしも








      空に消えゆく煙

     さびしくも消えゆく煙

     われにし似るか









      
      汽車の窓

     はるかに北にふるさとの山見え来れば

     襟を正すも










 
      ふるさとの空遠みかも

     高き屋にひとりのぼりて

     愁ひて下る









     愁ひ来て

     丘にのぼれば

     名も知らぬ鳥啄めり赤き茨の実









     秋の空廓寥として影もなし

     あまりにさびし

     烏(からす)など飛べ












          こころよく

       春のねむりをむさぼれる

       目にやはらかき庭の草かな







       






        汽車の旅

      とある野中の停車場の

      夏草の香のなつかしかりき














       ゆゑもなく海が見たくて

       海に来ぬ

       こころ傷みてたへがたき日に