気配を感じる
                       銀色




畦が炎の道となる

黄金を揺らせし風は炎をも揺らし

それはあたかも陽炎の如し

高く澄んだ空はまるで静かなる水面のよう

波紋の如き雲は伸びやかに広がる

蜻蛉はその硝子の羽に

日の光を乱反射させ

辺りは光の洪水となりながら風だけが横切って行く



飛び行く鳥の影がこころなしか薄い



季節を違えずに咲く花は

人に季節を教える立場にあり

それは季節の師範とでもいうのだろうか




炎は揺れる

それは儚く

それは見事に

数日の花の命を懸命に燃やすため





一雨毎に秋の気配の深まる中










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夕日の手

            
七呼



夕日が伸ばした赤い手の先に

深い闇の冷たい痛みが走った

明けない場所がある

温もりが届かない場所にいる

深い闇と同じ色のカラスに

せめてその指先だけでもと

夕日は今日も赤い赤い手を伸ばす












 
             yk



萩の花は小さくて ひかえめ

秋が しずかに ほほえんでいる





近畿の「kemari」さんの作品です。





とんぼ・・

              yk



秋がひっそりと

息を潜めて佇む午後



とんぼは止まって

何を考えているんだろう?



空白の心に

秋も立ち止まる



日曜日



やがてゆっくりと

夕方がやってくる






 すすき
                 yk




西日がつくる円窓に包まれながら

すすきはゆっくりとくつろいでいるようだった



称揚する光の中に

すすきの穂は消え入ろうとしていた









小 道

             k.b.




それだけが願いだった

この小道で

木漏れ日が模様づくる土の上に

あなたとすれちがうこと

それだけが願いだった



あなたの肩を抱き

二人ならんで歩くこの小道に

夕日の線がかかる 今



小道は言葉の憂いに帰依してしまった













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丘の上の切り株群
                    
yk



ほんとに気の合う仲間が数人

ここに腰掛けて

夕景を眺めながらグラスを傾けたら

おもしろかろう

と思った














今朝の氷と 森と 海と・・・
                             yk




仄暗い 森の 中には

いつも 不思議な 気が 漂っている



灰緑色の 地衣類や 羊歯や 苔



太古の 昔 から 連綿と 受け継がれて きた もの

縒り合わさった 禍福 の ような

細く 長い 長い 糸は

今日も

決して 切れる こと は なく





ソウイウ  キミ モ DNA ノ ナレ ノ ハテ ダ

キミ ハ・・・

キミ ハ・・・






たとえば

縹渺 と した 海の かなた

澎湃 と して 潮が 満ちて くる

その 時間 の こと や



ざらざら と した 木肌 から

生まれ 出た あどけない 幼い 芽 が

やがて 

茶色い 枯れ葉 と なって

朽ち 果て て いく

その 奥行き の こと など を

私たち は

すっかり 忘れ はてて いる





宇宙 に 浮かぶ 青い 光輝

その 子供たち は これから

どう 変貌 して いく の だろう



今朝は

初氷が はっていた

遠い 記憶 が 蘇り

その 記憶 を 確かめる ように

うすい 氷 を 踏み つける



氷は パリン と

可憐な 音 を たて て

割れた



















































































































紅葉彷徨
                  青野3吉




この美しさはいったいどこからやって来るのか

初めてなのか忘れていたことなのか

驚いているのだわたくしは

記憶の回路を七回り半してみても

たどり着けないのは遠いからではない 



斜めに射す朝の光のせいなのかそうなのか

朝は初めてではない

この季節も初めてではない

しかしこの気持ちの震えは何だろうか

いや分かっているのだ

だがたどり着けないのだ根もとにさえ今は 



生きているというのかこの風景もわたくしも

明日も美しく沁みて来るというのか

そうではないのか












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愁いの香

               優




初めて

気が狂いそうなぐらいに

人を愛しました。



あなたが僕に

残してくれたものは



胸をつくような痛み

メランコリックな秋の訪れ

誰かを愛することの愁い



そして

記憶を創造する

刹那の香。



戦慄を走らせる

刹那の香。






































































































宝ケ池
                  AB




ほら

いつまでも進まないから

そろそろ代わろうか



静かにうなずいたのかどうか

オールを離した君は



君の目は膝に落とされ

僕の目は池のまん中に向けられ

あの浄化用のエアーポンプのとこまで

あの迫り出した二セアカシアの下まで

あの赤い眼鏡橋の下まで



泣き出しそうになる君の

ため息をつきそうになる僕の

肩のゆれと息づかいはいつまでも

もどかしく

いつまでもひとつにはなれず

ふたつにもなれず



やがて

幼い君と出会って

駈けて遊んだ小さな赤い眼鏡橋にさしかかると

かこん かこん って

枝で鳴らす音 
 


かこん かこん って



   君の音だよ



      僕の音だよ



それから



  風が吹いて


   
          葉が散って



    影が伸びて



            真っ赤な顔の幼い君は帰る



      暖かいお風呂の炊かれた家へ帰る




あんただって 

進めないじゃない



君は不思議そうな顔で

くしゃくしゃになった僕を見てる

くしゃくしゃになりながら君を見ている僕を見ている



なんてことだ




君は気付いていたのだろうか



あの紅い顔の夕陽から

この池の景色で

変わってないものなどなにひとつないけれど



なにひとつ変わらなかった思いが







  静かに



       散っている













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 ポプラ
               yk



ポプラは 空を 志向 する

( ボクラも 空を 志向 する )



電線が遮っても

ポプラは めげない

( ボ、ボクラも めげない。。。 )











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