直線上に配置

yk第三詩集

ORIGIN

直線上に配置
創作順はページの「下から上へ」と並んでおります。(笑;)







 世迷いごと





春の日暮れは

ビール時(どき)

たわむれに

グラスを掲げて

遙か遠くを透かし見れば





さざめきたつ黄金(おうごん)

麦畑が見える

気がして





   *   *   *





おりしも街は不意の黄昏

我が庭先にも琥珀のあかりが降臨して




《 昔は我が町にも
  丘の上などに よく麦畑があった ものだ 》




麦は 矢の形

黄土色の土に

天からの矢





麦畑は鋭く変貌を遂げる

誰が射たのか

日に日に増えていく無数の矢

その林立





やがて

青々としていた麦の穂が

黄金に変わって






空の彼方

メソポタミアの

チグリス ユーフラテスの

一粒の麦から始まった culture

楔形文字が時を越えて 今も手元に 届く





   *   *   *





春の日暮れはビール時(どき)

グラスを掲げて透かし見れば




さざめきたつ黄金(おうごん)

麦畑が見える

気がして
















 今朝の氷と 森と 海と・・・





暗い 森の 中には

いつも 不思議な 気が 漂っている




灰緑色の 地衣類や 羊歯や 苔




太古の 昔 から 連綿と 受け継がれて きた もの

縒り合わさった 禍福 の ような

細く 長い 長い 糸は

今日も

決して 切れる こと は なく





ソウイウ  キミ モ DNA ノ ナレ ノ ハテ ダ

キミ ハ・・・

キミ ハ・・・






たとえば

縹渺 と した 海の かなた

澎湃 と して 潮が 満ちて くる

その 時間 の こと や




ざらざら と した 木肌 から

生まれ 出た あどけない 幼い 芽 が

やがて 

茶色い 枯れ葉 と なって

朽ち 果て て いく

その 奥行き の こと など を

私たち は

すっかり 忘れ はてて いる





宇宙 に 浮かぶ 青い 光輝

その 子供たち は これから

どう 変貌 して いく の だろう




今朝は

初氷が はっていた

遠い 記憶 が 蘇り

その 記憶 を 確かめる ように

うすい 氷 を 踏み つける




氷は パリン と

可憐な 音 を たて て

割れた


















春・創作の夢とともに
                     



春の浮き雲の 見守る中

何か 作りたくなって

DIYに気が向かう



駐車場のアスファルトも まぶしく

ふりかえると

光と風が さらに なだれ込むように胸にしみて



さて 何を作ろうか?

何やかやと イメージするプロセスがまた 愉しくもある



素材を手に 少し気楽な寄り道をする



園芸コーナーは 待ってましたの春の装い

そこに満ち溢れる 種々の香気



それぞれの花卉にたたずむ 和らぎとムードに

やはり 花があっての春なのだと 思う



それなりの感慨をもって店を出た

真新しい雲の上

夢も やわらかく やすらいでいた





























早春の抒情
                  



雲の色合いに春が仄見える日暮れ・・・



木々の梢も未だ寒気に震えてはいるが

それを取り巻く天の気象は

明らかにあしたの春をたのしみにしているようだ



光の国は下から空を照射して

雑木の山々はセピア色に変身する



さらけ出された気骨のような雑木の大群

陽をうけて欣喜雀躍する生きものたちのさざめき



それにしても

空はなんと精妙に

春のはじめを漂わせて息づいていることか



大きな 大きな こころのように

どうやら 空は変容のすべてを 

ただそのまま受け入れているらしいのだ



肌寒い風の中

人知れず かすかに翳りながら

我が早春の抒情も また

ゆっくりと東へ流れて行く





























 二月の光

                  



二月の空は

天空の窓が開いたかのように

あちらこちらに

真新しいまぶしさが あふれ

消え残った雪が

白地図のような希望を見せつける



雑木林は待っている

ひそかに囁きを交わしながら

希望に満ちて 待っている



巷間から

始動の音信が聞こえてくる



春はまだ光の中にかくれているが

もう そろそろ

逡巡する谷間の道を抜け出す時が来ているのだ



2002年 二月

見はるかす空のかなたに

まばゆき天馬が駈けて行くさまを見る





















初 雪






降っている



( 雪の 良いところは

  ゆっくりと 降りてくるところだ )



ダ−ク・グリ−ンの杉の森は 点描画と化し

遠景には 灰色の帳



降っている



( 雪の 良いところは

  ためらうような はかなさ )



つい 魔法にかかる こころ

白い ゆらぎ

繊細な 詩のように



降っている



カラスたちも どこか せわしなく

たぶん 今は 冬支度のことで頭がいっぱいだろう



もう師走だ



















家 路

〜木枯らし1号が吹いた日 帰宅途中の車の中で〜




( 風が さびしくなった )

路上に 枯葉が舞い上がったりすれば なおさらだ



そんな中を

金属の筐体が走り抜けて行く



( 夕暮れも さびしくなった )

くろい群雲が 西の空を

埋め尽くしていたりすれば なおさらのこと




星が ともっても 

あまり うれしくは ない



けれども

金属の筐体は ひたすら 家路を急ぐ



空は しだいに 寂寥の海へと 翳り行き

荒ぶ木枯らしの中 沈鬱に 暗く

やがて確実に 寒がりながら吹き消されて行く



星が ともっても

あまり うれしくは ない が



人家のあかりは 遠く 山の麓に

風や夕暮れがさびしくなったちょうどその分だけ

そんなあかりの 懐かしさが増して



実に しみじみと

暖かい何かに 会えるような 気がする



地上の星は 意外に強く

風にふるえながらも

夕闇におののきながらも

気高いひとつの信念のように

光り続けている





















獅子座流星群を待ちながら





夕暮れに

かき集めた落ち葉を燃やす

その煙の匂いは懐かしく

既に冬の予兆が見え隠れする夕闇の中で

炎は殊のほか威勢が良くて

古い記憶が鼻の奥や目の奥に蘇ってくる



ふと目を転ずれば

弓張月



黒ずんだ群雲にもひるまずに

凛とした気品を放ちながら空の中にある



今夜は獅子座流星群が空を賑わすのだという

地球はいつも止まっているように見えるのだが

そんなことを聞くと

我らが大地も

いつも少しずつ

違った宇宙空間を航行しているのだな

とあらためて思い直したりもする



願い事がかなうという流れ星

ひっきりなしに流れれば

大願や悲願も成就するだろうか



真に平和でやすらぎに満ちた世の中になるように

切に祈りたい




















秋の深まりはどこかまどろみの海に似て






庭先に出たら

さまざまな落ち葉



白茶けたコンクリ−トの上に

ひからびて

かるく まるまって



ふと それを

浜辺の貝殻のようだと 思った



運び寄せた波は

時の波だろうか

いまも

風が たがいの位置を変えたりもする



葉脈を流れていたはずの

血のようなもの

全うされた 生の 余韻



潮騒が聞こえるような気がして

耳を澄ます



太古から

波のようにくりかえされてきた

生の営み

かすむ 想い



小春日和の午後の日射しに

落ち葉たちは どこかしら

できそこないの 標本のよう



足下には 寄る年波

ひたひたと 寄る年波

自分の影を もてあましたりもする昨今だが



つましく居並ぶ霜枯れた草の葉先

そのまどろみを見つめる



おだやかな秋の日射しの

その 光の中に

遠く 時の海の 水平線が

見える ような

気がした

























 秋の湖水
               




深山(みやま)の 湖を取り巻いているのは山ばかりなので

「 文明 」 も 「 社会 」 も 

ここからはすべてが隔離され

まるで古(いにしえ)のそれと全く変わらぬ営みが

ただ延々とくり返されているように見えるのであった



眼前にある風景は

まぎれもなく現実であり

同時にまた

想い出のようでもあり

さらにまた

伝説のようでもあり

どこかしら

未来のようでもあって



息をするたびに

冷涼な気が鼻腔や胸にしみて

思いがしだいに透きとおってくる

耳も目も 

奥深い静寂に洗われて新しくなる



< 今までのことは いったい何だったんだろう?>



葦の先にアキアカネが止まり

次の瞬間 一陣の風にかき消されるように消えた

ときおり ゆっくりと微風が吹いて

さざなみが西日を煌めかせる



凪いだ湖面はすべてを映す

やがて

真一文字の水面が

本来の規矩に思えてきて

心も 水と光だけになる

























 仲秋の道を行く
      

     


ななかまどの朱が 午後の秋風にゆれている

足下に続くドウダン・ツツジの生垣は紅(くれない)に燃え

柿の葉も 照れたように赤みを帯びる



山腹でひとり抜きん出た明るさを見せているのは漆の木だ

これだけは釣り竿の先のような細い枝までが真っ赤っか・・・



つらい冬を迎える私たちを慰めるかのように

これからは 日増しに

暖かみのある色合いが増えて行く



願わくは

私たちの人生も

このような華やぎとともにありたい



晴れ渡った空の下

今ひとり仲秋の道を行く



(  秋色 それはなぜか

      夕焼けに似ている・・・  )



そんなことを想いながら

























毬 栗(イガグリ)
                   




何かに覗き込まれているような気配を感じて

ふと見上げると

晴れ渡った青空の中に毬栗(イガグリ)が5、6個



私は失笑を禁じ得なかった

あまりにもそれが

かつての彼らの雰囲気に似ていたからである



思えばイガグリがイガグリを採りあさっていたのだった



当時のこどもたちは主に未熟な栗を生で食べた

指先に付いた渋皮の粘液や針のようなトゲの痛さは忘れがたい



その日の収穫の分け前はいわゆる山分けにじゃんけん

さまざまな秋の夕景の美があたりを取り巻いていたはずだが

そんなことは全く眼中になかった



あのころの私たちの魂がそこに隠れているような気がして

顔ぶれを確かめるようにイガグリのひとつひとつと再会した

坊主頭の感触とイガの痛さを思い出しながら
























ススキ
          




伸びやかな少女の姿形のように

空に向かってすっきりと立ち並ぶススキの穂

ただそれだけで・・・

あたりに秋が現れる



ススキは秋の道標(みちしるべ)

夏から秋への移ろいに

それは

冬まで続く一筋の時の道を

ともし出す



いまはまだ赤茶けた若々しい髪のようだが

しだいしだいに柔らかさと円熟味を帯び

やがて 純白の雲のような輝きをゆらしながら

秋の終焉(おわり)の空を渡る



ススキは秋の道標(みちしるべ)

そして 秋それ自身もまた

人の道を示す生の鑑(かがみ)



山百合の花も今はなく

うすれ行く夏の記憶とすれちがいざまに

ススキはいま 旅立ちの基地を

おもいっきりよく空に掲げる 

























「夏」への想い
                      
yk




大地が歌っている

草となり

花となり

木となって



大地が歌っている

伸び上がるように

せり上がるように



ふと 足元を見る

この土塊(つちくれ)も

大地の一部・・・

つまり

この地球(ほし)のもの?



大地が歌っている

草となり

花となり

木となって



大地が歌う

「夏」への想いは

蒼穹を超え

碧空や

蒼天までも突き抜けて

遙か遠く 宇宙の果てまで

響き渡っているに違いない



大地が歌っている

草となり

花となり

木となって



大地が歌っている

伸び上がるように

せり上がるように



この限りない無音の歌が

君にも聞こえているだろうか?





























新緑から深緑へ
      


       


雨上がりの空



木々は数日来の雨にとことん洗い尽くされ

今日はまた無尽蔵な風になぶられるように翻弄され続けている



しかし木々は どこかうれしそうだ

そうして益々意気盛んに

空に向かって誇らしげに自己を顕示しているように見える



ふと 「基本」ということばを思い出す

基本的であるというのは実はこういうことなのだと

しみじみ思った




















新 緑





山は さみどり 淡き 花の 点描

陽春 きわまり 鶯 詠い

森羅万象 装いも新たに

集(つど)い来たりて ほほえみを交(か)わす


きょうは 森の記念日

ひそやかな 生の 祝祭




















花明かり
                 




夜の中の 枝垂れ桜

山里の とある 廃屋の



藍の中の 仄かな 花明かり



宇宙(そら)につながる 夜

夜がつなぐ 想い出



夜の中の 枝垂れ桜

深い闇の中の 紅



じっと見ていると

前世の記憶などという言葉を

つい 信じたくなってくる



























ああ 春の

ああ 風が



学校に行く少女の髪を

なびかせ



村の神社の幟(のぼり)を

はためかせ



空の光も

遠くの山々も



どこもかしこも



ほんとに

もうすっかり春なのだと

懐かしい夢から目覚めたばかりのような気持になる

















origin






origin

たとえばそれは

小さな小さな一粒の種子



どんなに遠く時を隔てても

いつか何かが整えば

しっかりと新鮮な芽を出すことができる

水と 光と ほのかな温もりと



origin

たとえばそれは

澄み切った水面の 玲瓏なる静謐さ



ゆらめきながら たゆたいながら

反転しつつ見え隠れする 刹那と永遠

果てしなく繰り広げられる変容の美の深さ



もつれてほどけなくなった絆も糸も

それらを想い 時を待てば

春の雪のようにたわいもなく氷解するかもしれない



わだかまりや こだわりも

怨念や呪詛の類(たぐい)も

元を正せば 単純なことのはず



origin

たとえばそれは

海の底の小さな真珠

大いなる海の その混沌の中から生まれ出(いず)る珠玉

輝きを内に秘め 静かに音もなく結実して行く崇高な何か



origin

たとえばそれは

里芋の葉の上にゆれる水滴

単なる水のひとしずくが

世界を映しながら なめらかに光を宿し続ける



origin

たとえばそれは

地球そのもの



これも 大きな大きな ひとつの球体

どっしりと 時に動かざる大地として

時に 無音の暗黒の中を航行する宇宙船として

青々と 清く輝きながら



origin

そもそもそれは

宇宙の始源



私たちすべてに確かに備えられているはずの無量の光輝

私たちの生も夢も

この世のありとあらゆるものは

つまりそこにこそつながっているはず



何かにつまづいたり行き詰まったときには

そのことを少し思い出すだけで事は足りるのではないだろうか

originalもoriginalityも

まぎれもなく そのoriginから湧き出しているはずなのだから























白い未来





< 白は白紙の色 >



雪に覆われた地平は 遠く 果てしなく

真冬の朝日に華やかにシンクロナイズして

悠久なる未来を蜃気楼のように謳っている



《 今日は旧暦の元旦

  旧正月は

  どこか やさしく なつかしく

  それに 旧暦は

  私たちの心理にも

  季節の移り変わりにも

  なんとなくマッチしている気がする 》




< 白は白紙の色 >



昨夜も新しい雪が降り積もり

雪原は広大な砂漠のよう



時折

疾風が強く吹き過ぎて

砂塵のように

雪煙が舞い上がる



この雪の下に 田圃があったことさえ

うっかり忘れてしまいそうだが



真っ白な雪も その下の大地も きっと

新しく 清廉な夢が 力強く湧き起こって来るのを

切に 待ち望んでいるに違いない











2001.1.24













(わだち)




  
年が明けて久しぶりの勤務の帰途

押し潰された雪の路(みち)を走り続ける
 


すでに日は落ちて辺りは暗く

ライトは轍(わだち)を浮き彫りにする
 


そこに残る幾筋もの条痕

ここを走り抜けて行った幾つもの人生
 


川のように

気流のように
 


その後を追うように車を走らせる

 


路(みち)は生半可な甘えを拒絶するかのように凍りつき

安全は とっくに宙に浮いている
 


心許なさが膝のあたりをこわばらせ

こころはどこかあてどなくさまよったまま・・・
 


轍(わだち)

それは図らずも路上に現出した雪の軌道

そこをなぞるだけの走り方は

まさに踏襲であり 束縛であり 倦怠の種であり

自由の対局に位置するものではあるのだが

そのかわり それは

ある程度の安全を保証する
 


既に大勢が通った道筋であるがゆえの

ある種の安心感 そして

その代わりのうんざり感

それをはずれるのは

まさに常軌を逸した行動
 


ふと

微妙な揺り戻しに

冷たい電流が走り去る

死ニタイカ 死ニタイノカ と 

驀進するトラックが行き過ぎる



< まさにこれは人生そのもの >
 


眼前に続く轍(わだち)は際限(きり)がないものに思え

気晴らしに視線を上げれば

夜目にも白く 雪原は遠く

突如果てしない静寂とともに

地球という名の とてつもなく巨大な球体が

ゆったりと

重々しく浮上して来たりもする
 


思えばこの星も決まりきった軌道

折しも21世紀なる時空に突入したとはいうものの

いわば宇宙の轍(わだち)を永遠に・・・
 


< せめて こうした思いの自由を大切にしよう >
 


思いがけないconcentrationの深まりに少し満足して

ハンドルを握る手に力がこもった













2001.1.9













雪が舞う





雪見酒を

飲めとばかりに

雪が舞う



ほんとにほんとに

真っ白な花びらのような

雪が

あとからあとから

舞い続ける



元旦の朝

それも

2001年の

21世紀の冒頭の

元旦の朝



雪見酒を

勧めるかのような

清楚な雪の舞



こんなにも清新な

こんなにもやすらかな情緒が

どうか これからも

永遠に

健在でありますように











2001.1.4













  凍てつく夜に





地上が あんまり寒々しいので

今夜は 月も星々も

ぐっと近くに顔を近づけて

どこか温もりと潤いのある瞳を向ける



かたや 地平は 凍ったままだ

芯の芯まで凍みついて

しろみがかって 果てまで遠い



夢は夢

現は現



それはそうなのだが



ささやかな

ささやかな 救いのように 家がある

家がある











2000.12.10



 





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