さざんか  
               



 さざんかが咲いた



大きな木なので

虚空に咲いているようにみえた



純白の中に うすく紅をひいたような

さざんかの花びら



はるか 北の果ての

氷海のコバルト色・・・

そんな水のような空の下



 凛とした寒気に身をゆだねながら

さざんかは 惜しげもなく

開ききって咲いていた

ときおり 風が吹いて

さざんかの花びらが 空に舞った



ひとひら またひとひらと

澄み切った厳寒の虚空に

 花びらは 笑いながら 消えて行った



年が明けて

気がついてみると

さざんかの花はもうどこにもなかった