さよならの流れ
                                        




胸にしみる清水のような風の流れと

青空に浮かぶゆっくりとした白い雲の動きに

ふと もの悲しさがこみあげそうになる



今日は卒業式

この校門のあたりにも早春特有のまぶしさが満ちあふれ

そのひかりのなかに さよならの色が見え隠れ



この日になると私は決まって

自分自身の高校の卒業式を思い出す



山並みと細長い丘陵に囲まれた小さな町だったので

真っ白な粉雪をまぶした大いなる山容などを遠く目にするにつけ

まだ見ぬその向こう側の世界に純な憧れをいだいたりもしたものだった



そもそもこの早春という名の季節が

訪れたかと思うとまたすぐ過ぎ去って行くある種特異な儚さを持っていて

それに 入学したかと思うとまたすぐ巣立って行く君たちもまた

なんだかひとつの川の流れのようにも思えてきて

私は今 かなり錯綜した乱流のなかに立ちつくしているような気がしている



風の流れと

人の流れと

そして 時の流れと



幾重にも重なった流れのなかに身をさらしているうちに

意識が次第に希薄になり 透明になって行く



校門を去っていく後ろ姿の流れに向かって

幸多かれと祈った