山  行




野山を歩いていると

踏みしめているその足下から

じわじわと充実がわき起こってくるような気がする



普段の移動はほとんどが車なので

どうしてもあちこちがなまっていて

 歩くことがそれをしだいに修復していくようだ



同時にそれは

現実の惑乱やわだかまりや呪縛から

自分の心を解き放ち

かろうじて自由を回復するプロセスでもある



わざと急斜面を登ったり

竹藪をこいだり

繁みをかき分けたりしてみる



そうしてもがいているうちに

 詩の一行が浮かんできたりもする



詩ができてくる過程と

足腰や体の機能が調整されてくる過程とは

まったくの同時進行



自由の獲得

充実の獲得

そして詩の獲得



一挙三得の

山歩き