柿
柿の実の美がその真価を発揮し始めるのは、
まわりの草木がすべて霜枯れてしまってからである。
比較的単純な色合いと形ではあるのだが
たとえばこまやかな小雪が風に吹かれて
ほとんど水平に細線を引くときなど
それが、まことに「絵」になるのである。
そのとき「絵」が、まさに超然と目前に現出するのである。
無論、青空にもよく似合う。
枝振りがまたいい。
柿の木の枝振りでそれほど不格好なものは見たことがない。
みんなそれなりの味わいがある。
よっぽど自らの体型に自信があるらしく、
へたに登ろうともしようものなら、
敢然とした態度で
突然ぼきっと我が身をそぎ落とす!