空が 凝視(み)てゐる
                                        


   
空が 凝視(み)てゐる

    ああ おほぞらが わたしを みつめてゐる

    おそろしく むねおどるかなしい 瞳

    ひとみ! ひとみ!

    ひろやかな ひとみ、ふかぶかと

    かぎりない ひとみのうなばら

    ああ、その つよさ








 




          葉

                         




        葉よ、

        しんしん と

        冬日がむしばんでゆく、

        おまへも

        葉と 現ずるまでは

        いらいらと さぶしかつたらうな

        葉よ、

        葉と 現じたる

        この日 おまへの 崇厳



        でも、葉よ

        いままでは さぶしかつたらうな

 










      空を 指(さ)す 梢(こずゑ)

                                      


      そらを 指す

      木は かなし

      そが ほそき

      こずゑの 傷(いた)さ











        雲




                          
      くものある日
 
      くもは かなしい

      くものない日

      そらは さびしい












        貫(つら)ぬく 光

                                    



      はじめに ひかりがありました

      ひかりは 哀しかつたのです



      ひかりは

      ありと あらゆるものを

      つらぬいて ながれました

      あらゆるものに 息(いき)を あたへました

      にんげんのこころも

      ひかりのなかに うまれました

      いつまでも いつまでも

      かなしかれと 祝福(いわわ)れながら






  





     白い 雲
                           



   秋の いちじるしさは

   空の 碧(みどり)を つんざいて 横にながれた白い雲だ

   なにを かたつてゐるのか

   それはわからないが、

   りんりんと かなしい しづかな雲だ