
「ホンニョ」・・・それが並びゆく景観
稔りに稔った田んぼの穂波が
しだいしだいに刈り取られて
そのあとに 次々とホンニョが立ち並んでゆく
時に そぼ降る雨の中
時に 秋晴れの昼下がり
ホンニョは ただの愚直な男のように
田んぼを見守ったり
じっと空を見上げたりする
ホンニョ・・・
このホンニョが「 穂仁王 」から来ていると知ったときは
子供心にかなりの衝撃が走った
どこかユ−モラスな愛称のような響きが
突然 いかめしい仁王像に激変したのだから無理もない
ホンニョ・・・
東北
殊に 我が郷土宮城県北や岩手県南では
このやりかたで稲を干す
田んぼに 長い杭を人力で突き刺し
( 軽く書いてしまったが これもかなりの熟練とパワ−と根気を要する)
「 キ 」の字状に 短い横木をくくりつけ
そこに 刈り取った稲の束を順次積み重ねて行くのであるが
できあがった全体像は
確かに がっしりとした大男のようにも見える
ホンニョ・・・
それが「 穂仁王 」であることを知った暮れ方
立ち並ぶ無数のホンニョが
夕景の中 黒い仁王の一群と化した
今年もまた その穂仁王が並びゆく季節となり
安堵と郷愁が錯綜する中
今度は背後で ほんとの仁王が私を睨む