五月の詩

                                



田んぼに水が張られたら

急に五月が目を覚ました



     <やっぱり五月はこうでなくちゃ・・・>



 水面を渡る微風が繊やかなさざ波を吹き寄せ

その燦きが 忘れかけていた思い出をつれてくる



     夏の初めの 遠い 遠い 思いで・・・



薫風が止めば鏡の現出

 空が少し眠そうに朝の身支度をする



上の空と 下の空と

 まるで大きな二つの空に挟まれたかのよう・・・



鏡のふちの畦道も

もうすっかり緑色に潤って

山も明るく笑っている



特にわけなどないのだけれど

なんとなく なんとなく たのしみな夏



ここから夏への地平線は

青く遙かな蜃気楼のようだ