8月・未明から朝までの移ろいの中で
                                             yk






夢と現(うつつ)のすきまから

蝉の大合唱がなだれこむ




未だ薄明の午前4時




カナカナゼミという蝉なのだが

ガチャガチャゼミだと言いたくなる




ヒグラシという別名もある

「日暮らし」とはいうが

夕方よりは朝のほうが目立つ

朝のほうがまわりは静かで

こちらも活動していないせいだろう




「その」をつければ「その日暮らし」

《 やれやれ今日もその日暮らしだ・・・ 》などと

妙なことを寝ぼけた頭がつぶやいたりもする




取り越し苦労と持ち越し苦労の間に挟まれながら

かろうじて今日だけ この一日だけが

少し書き込む自由のある「その日暮らし」




前門の狼 後門の虎

確かな生は現在の 一瞬一瞬の中にしかない




この世の中

いたるところに地獄の入り口が待ち受けているとみえて

悲劇惨劇は後を絶たない




一寸先は闇




このことばが決してオ−バ−ではないことを

交通事故の話などを聞くにつけ

胸騒ぎとともにひしひしと感じる




実はさっきまで変な夢に悩まされていた

異常に空手の強い奴らに取り囲まれて

これはかなわないと絶望しかけたところで目が覚めた

ヒグラシのおかげだった・・・




「 今日 」の前で逡巡する私を後目(しりめ)に

時は淀みなく推移して行く




朝刊が届く




















 日葵娘
                仲程




向日葵の迷路で迷いながら倒れこんで

そのまま眠りにつきたい

とつぶやきながら汗を拭い

晩夏の土間を掃除なんかしてる




今どき土間なんて貴重よう

なんてPTA会長がすました顔で言ってたけど

もう時代に合わないものは

使い勝手が悪くて

なんて言いながらも




姑が残していった糠は

今年もどうにかうまく夏を越したようで

そんなことが

普通に嬉しかったり




向日葵畑で踊ることを夢見てた娘は

どこに行ってしまったんでしょう

と鼻歌まじりに

糠床をこねくりまわす




今年の冬からは

かぶらずしも漬けてみようかしら




ああ

こんなことでは

こんなことではあ

私の中の向日葵娘は

どこに行ってしまうのでしょう

と鼻歌まじりに














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