家に帰る
たもつ
ようかんが街をつつんで
今日も夜がやってきました
駅からの帰り道なんですが
星々は百円ショップのようにチープにまたたいて
さしずめ月は壊れたひょうたんってとこですか
秋の虫がいい声で鳴く季節となりました
でも、あれは鳴いているのではなく
羽を擦り合わせて出している音だそうですね
同じ月を見上げ酒を酌み交わし
仕事の愚痴を言い合った先輩も
3年前に死んでしまいました
記憶の断片は
ジグソーパズルのピースのようにバラバラになり
もはや修復も不可能で
顔もおぼろげにしか思い出せません
社宅の3階の窓からは小さな灯りがもれ
今日もまたあそこで一日が終わるのでしょう
幸せだという実感はありませんが
どうやら不幸でないことだけは確かなようです
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