第41回 : Webで情報検索I LCの蔵書検索余話(1999年9月25日)

LCのWebでの検索事例を2回取り上げてきましたが、ちょっと気になることがあります。スクリャービンの検索結果が、世界的規模のLibrary of Congressにしては少ないような気がするのです。
以前取り上げた、 カリフォルニア大学のMELVYLとドイツのBVBと比べてどう評価できるのか、ちょっと調べてみましょう。もちろん、ほんの一例だけで客観的な評価だなどと言えるわけはありませんから、検索例や検索方法が少し異なれば、様相がガラっと変わることもあり得るでしょう。LCのことだけでなく、MELVYLとBVBについても、気づいた点はメモしておきましょう。
まず、次の表を見ていただきましょう。
LC Experimental Search と他の2つのWeb OPACの検索例比較
LC Experimental Search MELVYL BVB
Scriabin 91 919 29
Skriabin 224 1029 2
Skrjabin 0 894 344
面白いものですねぇ。綴りの違いが検索結果にも反映しています。ドイツのBVBで最も多くの検索結果が導き出される Skrjabin が、アメリカのLC Experimental Search ではゼロ件。

MELVYL / CDL
Author search を使って、異なるスペリングをチェックした結果が上の表。どれもそれなりに検索結果が得られるのは「さすが」というべきでしょうか?
ただ私は、しばらく前から、MELVYLにはちょっと癖があることに気づき始めました。
次のデータを見てください。

178. MUSIC SCORE. Scriabin, Aleksandr Nikolayevich, 1872-1915. Concertos, piano, orchestra, op. 20, F# minor; arr. Kontsert dlia fortepiano s orkestrom : soch. 20 = Concerto pour piano avec orchestre : op. 20 /, A. Skriabin ; prelozhenie dlia fortepiano s soprovozheniem 2-go fortepiano N. Giliaeva. Moskva : Gosudarstvennoe muzykalnoe izdatelstvo, 1931. 72 p. of music ; 31 cm.
[Long Display] (UCB)
179. MUSIC SCORE. Scriabin, Aleksandr Nikolayevich, 1872-1915. Concertos, piano, orchestra, op. 20, F# minor; arr. Kontsert dlia fortepiano s orkestrom, soch. 20 = Concerto pour piano avec orchestre, op. 20 /, A. Skriabin ; prelozhenie dlia fortepiano s soprovozheniem 2-go fortepiano N. Giliaeva. Moskva : Gosudarstvennoe muzykalnoe izdatelstvo, 1931. 1 score (72 p.) ; 31 cm.
[Long Display] (UCSB)

目録を記述する際に僅かな差異(上の赤字部分)が生じて、OPAC上では別のデータとなった例でしょう。この二つは同一資料と思われます。この手のものが意外と多いのです(178と179という数字は仮のナンバーですから気にしないでください)。ですから、表の数字の多さは、実際には割り引いて考えた方がいいと思います。データの実質的なダブりがどの程度かは、残念ながらわかりません。
次に進みましょう。

BVB
Autorに異なるスペリングを入力してみました。それが上の結果でした。カリフォルニア大学のMELVYLとはずいぶん違いますね。Skrjabinが他を圧倒しています。
この結果も図書館ネットワークのWeb OPACであることを思えば、いくぶん少ないかなという気がします。一覧表示などを目を凝らして見ていくと、さいきんの蔵書は画面に表示されます。たまに19世紀のものや今世紀前半のものも見当たります。でも、表示される検索結果全体から考えると、少ないように思われます。
古い刊行年の資料がまったく無いのであれば、見極めは逆に簡単なのでしょうが、ちょっと考えてしまいました。

どうですか?
いよいよLCです。ここは、Online Search と Experimental Search の二つを用意していますが、私ならば、 後者を先に使うでしょうね。使い勝手は Online Search と比べて格段に向上していると思いますから。
ただ Online Search は、新しい標目に基いているのか昔のものに基いているのかがわかるので、図書館員が利用者の助太刀をするときに役立つことがあるかもしれません。
そう、ふとした出来心で、Takemitsuと探すとどうなるのかなと思い、検索してみました。
入力ボックスには takemitsu toru と入れ、exact words /all language/Author と条件を選んで、検索を実行しました。
武満徹のケースでは、図書、録音資料、録画資料ぜんぶ含めて32件(!)という結果で、ちょっと失望しました。
なお、日本語の資料は日本語をローマ字化していますが、たとえば"ひとつの"というところが"Hototsu no"に化けてしまう、この種のことがたまに見受けられます。
LCの Experimental Search が、発展途上にあることを願ってやみません。

データベースには、それぞれに癖があります。発展段階かもしれない。そうした点を了解して活用したいものですね。

検索例に使ったスクリャービンについて
愚痴を言えば、複数のスペリングを想定しなければいけないケースは嫌ですねぇ、まったく。でも嫌がってばかりでは仕方ありません。勘を働かせて、こちらでダメなら違う手はないか? と発想を切り替えていきましょう(なーんて偉そうに言っちゃってナンですけど…)。


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