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| p30 | 安楽死及び自殺幇助は、オランダでは今なお犯罪である。 しかし、自ら人生の幕を引こうとする人が増えている。 | euthanasia: 安楽死、 Netherlands :オランダ |
| 1 | 数週間前、航空会社の前会長で元気はつらつだったフランス・スウォートウ が、国民に別れを告げた。咽頭癌にかかっていた64歳の企業家は、苦しい (化学)治療を止めること、さらに、生ける屍となりかねない延命手術を 止めることを選択した。「自分で人生の幕を下ろしたい」とテレビで発表。 彼の妻は、「家で最後の夜を迎えたとき、くつろいでいたわ。フランスは 時間を30分延長し、ジントニックを飲みたばこを楽しんだ。そのあと、 私たちは取り掛かったの」 | colorful :派手な,はつらつとした、 bid farewell to :〜に別れを告げる、 countryman: 同国人、 stricken:(病気に)おそわれる、 characterize: 〜の特性を示す、 entrepreneur :企業家、 drink oneself to :飲みすぎて〜になる、 therapy :治療、 opt: 選択する、 invalid :肢体不自由者, 廃疾の、 cozy: 居心地のよい,気持ちのよい、 gin and tonic :ジントニック 《ジンにトニックウォーター (tonic) を加えてレモン[ライム]の薄切りを添えた飲み物》、 get down to work :仕事に取りかかる |
| 2 | スウォートウらしい演出だったし、安楽死を率直に述べたのもオランダ人 らしかった。安楽死はヨーロッパではまだタブーだし、アメリカでも議論 のあるところだ。だが、オランダでは20年以上もの間活発に議論されてきた。 安楽死は、オランダでも法律上は犯罪だが、事実上10年以上行われている。 その数は過去5年間で劇的に増加している。ひょっとして、オランダ人は、 人生の終わりに際して生じる苦痛を、人道的にうまく処理する方法を 見つけたのだろうか?まさか制度が暴走しているのでは? | bravura: 《伊》(音楽・劇で)大胆で華麗な(演奏[演技,演出])、 candor: 率直さ、 Dutch :オランダの,オランダ人、 taboo: タブー、 contentious: 論争的な、 Holland :オランダ(Netherlands)、 pragmatism: プラグマティズム,実用主義、 thorny: 困難な,厄介な、 abortion :妊娠中絶、 up to :まで、 sensible: 賢明な、 humane:人間味豊かな、 unbearable: 我慢できない、 run amuck :怒り狂う,たけり狂う |
| 3 | 政府は公的な指針を作っており、それに従えば、医者は罰せられない。 「安楽死に対する議論が終わったわけではないが、今では反対か賛成 かという議論より、如何にコントロールするかという議論がされている」 | guideline: 指針、 physician :医者、 prosecute: を告訴する、 pro: 賛成の、 con: 反対の |
| 4 | ヴァン・ダー・ワルは昨年、自殺幇助と安楽死に関する研究を発表した。 それによると、1995年のオランダでの自殺幇助と安楽死は3、600件あり、 1990年時点では2、700件あったようだ。その他「患者が生命停止を依頼 していない」場合が900件あった。 | means :手段、 terminate: を終結させる、 fall into :入る,分類される、 troublesome :厄介な、 termination: 終了 |
| 5 | 安楽死の方が自殺幇助より普及している。癌にかかり一月も生きられないとき、 1995年には以前よりも患者は安楽死を望んだ。しかし医者は躊躇し、その 要請の3分の2は拒否している。 | prevalent: 普及した、 turn down :拒絶する |
| 6 | 安楽死の選択は1973年に始まる。その年、母親の自殺幇助をした医者 が無罪となったのだ。同じ年にオランダ安楽死協会が設立され、今では 88、000人の会員がいる。医学会は1984年に指針を支持。安楽死への 反対と、安楽死の完全合法化の妥協案として、今日では安楽死は 犯罪とはみなされていない。それでも思い出したように議論がなされる。 1994年に、筋萎縮性側索硬化症の男性が安楽死を求めるという番組が 放映されたときには、バチカンからの非難を招いた。 | acquit:無罪(放免)にする、 lobby :議員に働きかける、 liberalization: 自由化、 endorse: 支持する、 de facto :事実上の、 decriminalization: 非犯罪化、 foe :反対者、 advocate: 擁護者、 legalization: 合法化、 periodic: 周期的な,断続的な、 roil:混乱させる、 Lou Gehrig's disease :筋萎縮性側索硬化症、 denunciation: 非難、 Vatican (Palace) :法王庁 |
| 7 | 安楽死を支持するものにとっても、非難するものにとっても、オランダは 格好の的である。ハーバート・ヘンディンは「それは恐るべき処方だ」 と言い、オランダの政策を失敗と決め付ける。その最大の問題点に 対処するため、政府は次のように提案している。医者は、指針を確認する ため専門家に報告すること。指針とは、患者が不治の病で耐え難い苦しみ を受けていること。安楽死を繰り返し望んでいること。医者は患者のこと を良く知り、安楽死を患者が望んでいることを確認すること。医者は もう一人別の医者に相談すること。 | bolster: 強める、 psychiatrist: 精神科医、 seduce: 誘惑する、 brand :焼印を押す、 address :に注意を向ける、 public prosecutor :検察官、 panel of experts :専門家の集団、 ethical: 倫理の、 suffer from :に苦しむ、 incurable: 不治の、 ensure: を保証する、 voluntary :自由意志による |
| 8 | 自分たちのやり方には安全弁がある、とオランダ人は胸をはる。 まず、ほとんどの人はかかりつけの医者にかかっており、機械的に 安楽死を行う危険性は少ない。また、福祉は充実しており、 医療費は無料なので、経済的理由から安楽死を選ぶ危険もない。 | built-in :中に組み込まれた,固有の、 safeguard :安全装置、 rely on :頼みにする、 routinize :習慣化する、 impersonal :非人格的な、 welfare :福祉、 chronically: 慢性的に、 finance :財力 |
| 9 | 当然悪用もあり、目に余るものは告発される。シップ・シャットの場合が それだ。今月末、老人ホームの72歳の癌患者の殺人のかどで裁判にかけら れる。患者は死ぬ直前まで元気だったのだが、シャットは誰にも相談せず、 致死量のインシュリンを注射し、孤独に死なせた。「朝7時までに死なな かったら電話するように」と言い残して帰ったという。 | inevitably: 必然的に、 abuse :濫用,悪用、 flagrant: 目に余る、 prosecute :を告訴する、 alleged :申し立てられた、 in good spirits :上機嫌で,気勢があがる、 nursing home :養護施設,老人ホーム、 prosecutors :検察当局、 lethal :致死の、 shot :注射、 insulin: インスリン |
| 10 | 望まずに安楽死させられた900人についてはどうか?「いやなことだが、 否定はしない」とヴァン・ダー・ワルは認める。患者の半数ほどは、 病気の初期の頃、安楽死について話し合った。大多数の患者は、死ぬ 間際には非常に苦しみ、モルヒネが与えられた。苦痛は和らいだものの、 死期を早めもした。政府はこうした場合の規制を強めようとしているが、 現場に携わる医者にしてみれば、一般に行われていることが公にされた にすぎない。「世界の至る所で、痛みを和らげるという名のもとで、 患者の命が縮められている。我々だけだよ、こんなことを話して馬鹿を みるのは」と、"Dancing with Mister D"という回顧録を書いた、 老人ホームに務める医者バート・カイザーは言っている。 | morphine: モルヒネ、 practitioner: 開業医、 throw light on :を明らかにする、 under the cover of :かこつけて,乗じて、 reduction: 減少、 memoir: 回顧録 |
| 11 | カイザーいわく、年間を通せば、5人に1人、もしくは「真剣に」 安楽死を希望するものだけに、安楽死を与えている。「そうした 処置は余りに責任が重いので、医者ならできるものなら避けたいと 思うだろう。まだやっかいな問題だが、以前より患者と話しやすく なっている。」 | grant :を与える,を認める |
| 12 | まさにそれが問題なのだ、と患者の合意という点で反対しているフランクは 言う。「患者は痛みと、人間性の喪失に恐怖し、安楽死にはしる。 他の方法についてはほとんど知らされない。」ホスピスを経営している ジグニュよると、特に不治の病の末期における鎮痛技術については、 ほとんど知識もなく行われてもいないらしい。彼が扱った患者のうち 100人が最初安楽死を望んだが、カウンセリングと適切な鎮痛剤の使用で、 2人以外は自然死に同意した。こうしたことを受けて、政府は最終看護に もっと力を入れるように要請。 | buck: 強く反対する、 consensus: 意見の一致,合意、 dignity :尊厳、 alternatives :代案、 oncologist :腫瘍学者、 hospice :ホスピス《末期患者(と家族)の苦痛の軽減を図る施設[計画]》、 palliative: 一時的に和らげる、 terminal: 末期的な、 painkiller: 鎮痛剤 |
| 13 | 末期的患者と家族にとって、重要なのは選択肢が増えることである。 1978年、ヒンクが多発性硬化症にかかっていると言われたとき、 時期がくれば安楽死について話し合いましょうとホームドクターは 言ってくれた。「家族にとって、これは救いだった」と妻のアネミー は思い出す。5年後、ヒンク50歳のとき、療養所に入っていたのだが 症状が悪化、自分で体を動かすこともできなくなった。「心臓が 丈夫だったの。だから何年も生きたかも」と未亡人は言う。 | multiple sclerosis :多発性硬化症、 nursing home :(私設)療養所,私立小病院、 deteriorate: 悪化する、 bodily: 肉体の |
| 14 | ヒンクが初め安楽死を頼んだときは拒否された。しかし、何度も 頼んでいるうち、「ご主人は、その時期にきたようです」と言われた。 週末ヒンクは家族のいる家に戻り、医者が毒を処方。「安らかに亡くなったわ。 正しいことをしたと思ってます。人間らしく死んだもの」 | administer:与える、 fade away :だんだん弱る |
| 15 | 安楽死とはこんなものである。いい制度だよ。他の国じゃ自分で決めなく てはならないからね。オランダ流にオープンに議論するのが一番さ。 |
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