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| p47 | SF作家のニール・ステフェンソンは高度に発展したマイクロ技術が、ビクトリア朝 の社会構造と習慣に組み込まれた世界を想像している。現在、電子装置の秘密に ついての新しい小説に取り掛かっている彼が、時間を割いて、ネットワーク社会 の最悪のシナリオを考えてくれた。 | hyper- :「超越, 超過」 、 microtechnology :ミクロ技術、 mores :しきたり,社会習慣、 take time (off) (to do) :(〜するために)時間をさく、 admittedly :正直なところ,明らかに、 speculative: 思索的な,推論的な、 rumination: 沈思,黙考 |
| 1 | 技術に関して危惧することが政府の政策の一つになってきている。現政府は特別 委員会を設置し、クリッパーチップ(暗号技術の制御法)とかVチップ (子供がよくないテレビ番組を見れないようにする)などというものを思い つくのだ。つまらない争いで政府が行き詰まったときには、新しいチップ を持ち出せばよい。そうすればやっかいな情報の問題に対してなにかしら のことをした、という気がするのだ。 | pillar: 柱,支柱、 come up with :〜を思いつく、 cryptographic :暗号の,暗号法の、 paralyze: 〜を麻痺させる、 bicker: つまらぬことで口論する、 partisan: 党員、同志、党派心が強い、 maneuver: 機略、策略、 roll out :量産する、 mythology: 神話学、 tribal: 部族の、 fetish: 物神、呪物、盲目的崇拝物、 in times of stress :非常時に |
| 2 | 最近、インターネットを心配する人が多い。無秩序を心配する人は、それを 狂人が神経ガスの製法を交換する悪の巣くつと見ているし、政府を嫌いな人は、 インターネットを独裁国家の道具と見る。 | anarchy:無政府状態、 thrum :…に織り端[ふさ]をつける(ちょっと変ですね?)、 hive: ミツバチの巣箱、 villainy :極悪, 悪辣、 craze:〜の気を狂わせる、 nerve gas :神経ガス、 recipe:製法、 whip: 〜をむちで打つ、 frenzy: 精神錯乱、 faulty: 欠陥のある、不完全な、 black helicopter:最近アメリカで目撃されている得体のしれないヘリコプターらしい、 Big Brother :《警察国家の》 独裁者, 《個人に権力を振う》 独裁的国家 《G. Orwell, Nineteen Eighty-Four 中の Stalin [Hitler] 的人物から》 |
| 3 | インターネットはそのどちらにもなっていない。私自身、インターネットで 神経ガスの製法を見つけようとしたができなかった。インターネット上で 情報を得ようとするとき、もしその情報がどこにあるかを知っているのなら、 ファックスででも手紙ででもそれを得ることができるので、インターネット 独自の問題ではない。もしその情報がどこにあるかを知らないのであれば、 サーチエンジンを使って探さなくてはならない。だが、これは膨大な量の ゴミを拾ってきた。 | go wrong :悪に走る、 irrelevant:無関係の、 sheer: 切り立った,全くの、 turn up :見つける,現われる,参照する |
| 4 | インターネットというのは、心配していることが決して起こらない場所なのである。 誰かがニュースグループに神経ガスの危険を訴えたり、記者がその手の記事を 書く度に、このインターネット上にゴミが増えるのである。その結果、 神経ガスの製法を探している潜在的テロリストは、文字どおり何十万もの 無駄な関連情報を得ることになるのだ。 | red herring :人の注意を(本当に大事なことから)他にそらすもの |
| 5 | たとえ神経ガスの製法を述べた文をダウンロードできても、信頼性の問題がある。 O-157が発生したときの肉屋を考えてみよ。匿名の製法を信じると、へたをすれば自分が 死んでしまうのだから。神経ガスの製法を送ることを可能にする匿名性そのものが、 送り主を誰だかわからなくし、信頼できないものにする。 | bill :ビラ[貼り札]で広告する; …にビラを貼る、 ingredients: 成分、 E.coli :O-157 【大腸菌を発見したドイツの内科医Esherich 1857--1911の頭文字+COLIFORM BACTERIUM (BACILLUS)、 anonymous: 無記名の、匿名の、 anonymity: 匿名、 untraceable :追跡できない, 尋ね出せない、 unaccountable:責任を負わない、 Unabomber :大学(University)と空港(Airport)を専門に狙っている爆弾犯,大学空港専門爆弾犯,郵便で爆発物を送りつけて殺人を企てる,あるいは脅迫する人のこと、 circa: 《ラテン》[前]およそ〜(年ごろ) |
| 6 | しかし、クリプト(ネット上の暗号化技術)が状況を変えるだろう。技術を 心配するのならクリプトを心配しなくちゃ。 | |
| 7 | クリプトはプロトコルの集まったもの。プロトコルはデータ交換の際の規則。 電子サインがその一例だ。契約書にインクでサインをするのと同じように、 データに電子サインがされると、それは特定の人がサインをしたことを証明 する。電子サインは、データが改ざんされていないことを完全に証明する点 で、インクのサインより確実だ。さらに文章を暗号化して、どんな政府も 短期間では解読できないプロトコルもある。これらを組み合わせて、さらに 複雑な電子キャッシュも作れる。現実のお金を人から人へ、匿名で追跡不可能 な方法で送ることができるのだ。 |
collection :取り立て,収集,集じん、
protocol: プロトコル(対話に必要な通信規約)、
participant: 参加者、
verify: 証明する、確かめる、
meddle: いじくる、干渉する |
| 8 | ハイテク開発者から注目を浴びている最新のプロトコルはレピュテーション を処理できなくてはならない。Eメールボックスに意味のない手紙が殺到したことのある人、 インターネットで検索をしたら無数の的外れの文書を手にした人、こうした 人は誰でも、コンピューターが自分の興味ある物を選択してくれたらと願う だろう。これは、それぞれの情報源に、信頼性の指標、使用者の嗜好を反映 したレピュテーションを指定する問題に帰着する。これは電子サインの問題 なのだ。 | junk: がらくた、 irrelevant :的外れな、 reduce :還元される; 変わる、 assign :割り当てる,指定する、 unforgettable: 忘れられない、 reliability: 信頼、頼もしさ、信頼性、 tailor :あつらえる、 bias: 傾向、 hinge on :しだいで定まる |
| 9 | こうしたことを考えると、数年後には憂慮すべき問題が起きるかもしれない。 神経ガスの製法を求めるものは、サーチエンジンに、「役立つものを持ってこい」 と命令できるかもしれないのだ。その製法は暗号化されており、政府の監視機関は 読むことができない。しかし、電子サインにより、それが有名な化学者のもので あり、途中で改ざんされてないことも確認できる。テロリストは材料を混合し、 公共の場所に置き、Eメールで当局を脅迫し金銭を要求できる。金は電子決済 で匿名の電子銀行口座に支払われるので、追跡不可能だ。 | tamper: 〜に干渉する、改ざんする、 en route :途中で、 a batch of ~ :ひと束の〜、 stuff :材料、 seal: 〜に封をする、 ransom: 身代金、賠償金、 dump: 捨てる、 vent:通気孔、通風孔 |
| 10 | 悪人が暗号化技術を用いるやり方は千差万別である。盗聴防止用電話が普及する ので、悪人を盗聴することも無くなるだろう。幼児ポルノ撲滅の戦いは敗北に 終わりそうだし、麻薬のディーラーを金の経路から追跡することははるかに 難しくなるだろう。 | wiretapping: (電話・電信の)盗聴、 enforcement: 励行、施行、 scrambler :盗聴防止用装置 周波数帯変換装置、 transmission: 送信、発信、 pornography: ポルノグラフィー,ポルノ写真、 trail: 痕跡 |
| 11 | こうしたことを考えると、米国政府が暗号化を心配してきた理由がわかるだろう。 暗号化ソフトを軍需品とみなすなどという馬鹿げたことをやってきたのもそれが 原因だ。ソフト会社は競争力を保持するために、製品にプロテクトをかけないと いけないのだが、法律ではそういった技術は輸出できないので、その種の仕事は 外部に発注しなくてはならない。なんの利益にもならないのだが。 | munition: 軍需品、必要品、 perspective :見方,展望,将来の見通し、 competitive: 競争力のある、 farm out :(仕事を)外部へ出す、 proficiency: 熟達、熟練、上達、 in return :見返りに |
| 12 | こういった状況で、政府は何らかの手を打つものと我々は考えている。 しかし、暗号化を独特の問題にしているのは、それが政府の機能をマヒさせる 可能性を秘めているからだ。政府は、税金から得る歳入無しでは機能しない。 しかし、電子キャッシュが広まれば、誰もが政府に知られずに取り引きを行う ことができる。 | cripple: 不具にする、不自由にする、 revenue :国家の歳入、 creepy: 気味悪い、ぞっとする/気味悪く、 snoop: かぎまわる、探る、 carry out :実行する,履行する、 transaction: 取引、 cloak :マント,覆い、 pierce: 洞察する、〜を見抜く |
| 13 | この問題に取り組もうとしても、それにも金が必要であり、その金はますます 集めにくくなるだろう。一旦この悪循環に陥れば、逃れる方法はない。 | feedback loop :フィードバックループ、 short of :〜が不足している,〜を問題外として、 pervasive: 普及する、広がる傾向にある |
| 14 | 自由意志論が人気のあるシリコン・バレーでは、政府のために悲しむものはいない。 しかし、長期的に見れば、無政府状態は独裁国家より始末が悪い。 自由意志論としては、これにどう対処すべきかは難しいところだ。テロを抑える 一番いい方法は、テロ支援国家に報復をちらつかせることだが、それには大規模 で高度な軍隊を持つ中央政府が必要だ。暗号化に詳しい市民は、もしかしたら これこそが軍隊に金と時間を自発的にかけるに足る理由だ、と感じるかもしれない。 | shed :(血や涙を)流す、 libertarianism :自由意志論、 in the long run :結局は,最後には、 militia: 市民軍、民兵/市民軍、 outlaw: 無法者、 retaliation: 報復、仕返し、 savvy: 心得た、知識のある |
| 15 | 報復すると脅すことは効果があるが、それ以外にテロを防ぐ唯一とも言える方法は、 あらゆる人と物を監視することである。テロはまことにやっかいであり、 市民もそのような監視を快く受け入れる日がくるかもしれない。ビッグ・プラザー がどうどうと玄関から入ってくるわけだ。 | surveillance: 見張り、調査する、 incompatible: 両立しないもの、 utopia: ユートピア、理想郷、 fail to :できない、 sneak: こそこそする、こそこそ動く |
| 16 | この悪夢への解決策をクリプトが提供する。秘密の共有と呼ばれる暗号化プロトコルが ある。これは情報を影と呼ばれる断片に分割する方法だ。影は数人に渡される。 1つあるいは複数個の影を合わせても何の意味も持たない。全ての影を合わせて初めて 元の情報を再構築できるのである。 | digitize: 数字で表わす、 recipient: 受取人、受容者、 unreadable: 読んでおもしろくない、読む価値のない、 gibberish: ちんぷんかんぷんな話(文章) |
| 17 | デジタルビデオを各街角に設置することを考えてみよう。画像はいくつかの 影に分けて出力される。影は、地元の警察とか監視グループとか市民自由連合 などに送られる。影をすべて集めない限り情報は再構築されず、従って、ビデオ は存在しないも同然だ。しかし、ビデオの視界内で犯罪が起きれば、影を集めて 元の画像を再現できる。こういったことを広範囲で実施すると、犯罪者が逃げお おせることは難しくなるだろう。しかも影をもつ人間が一人でも信用が置ける 人であれば、市民のプライバシーは保たれる。 | tamperproof valve :誤操作防止弁,いたずら防止、 withhold: 保留する、与えないでおく、 implement: 実施する、 holder: 所有者、 whit :微少 |
| 18 | 新しい技術が現れると、熱狂的に迎え、次いで悪人が悪用しないかと心配し、 技術そのものが悪人の計画を防ぐのに使われると知って安心するものだ。 無論、悪用を防げるのは、好奇心旺盛な人々がその技術を習得する限りに おいてだが。こうした人々が、インターネットを小さな政府の研究ネットワーク から地球規模の媒体に変えたのだ。悪人にとって、喜び勇んで新しい技術に 飛びついてみると、既にマニアに調べ尽くされていることほどいやなことはない。 | gradual: 徐々の、 relaxation: 弛緩、緩和、 thwart: 邪魔をする、妨げる、 scheme: 陰謀、計画,たくらみ、 notoriously :悪名高く、 fascinate: 人の心を捕える、魅する、 realm :領域,分野、 surge: 急増する,沸き上がる |
| 19 | なぜ悪人は新しい技術を最初に手に入れないのか?要するに、技術は科学に 基づいており、科学というのは、地球を取り巻き自分のしっぽを永遠に 食べ続ける伝説の虫ウロボロスだからだ。科学とは自らを消化し破壊する 絶え間無い過程そのものであり、概念を自由に開放的に表現できる場所 でしか機能しない。科学は、全体主義社会ではなく、もっとも自由な国で 花開いてきたというのは偶然ではない。これは必然的なものであり、 単なる幸運ではない。これはスタートレックにも暗示されている未来像 なのである。 | Third Reich :第三帝国、 lore:伝承、 alchemy:錬金術、 encircle: 取り巻く、 dogma: ドグマ、独断、独断的な考え、 foster: 育てる、育成する、 coincidence: 偶然の一致[出合い]、 flourish: 栄える、 edge :優勢、 divert:そらす、方向転換する、 motivate: 〜する動機・理由を与える、 Lysenkoism :ルイセンコ学説、 Aryan :アーリア人、 eugenics :優性学的にすぐれた,優生学、 tempt: 〜を導く、〜を誘惑する、心を引き付ける、 manifest: 明らかな、明らかにする、明白な、 prowess: 武勇、勇敢、 implicit: 暗黙の、絶対の、絶対的な |
| 20 | その点に関して、低俗なコンピューター小説は全く違う観点をとっている。 我々が単に幸運なだけなら困るので、最大多数の人々の最大限の自由を信じる 者は、次世紀の独裁者が我々の不意をつかないように、インターネットを 最大限に利用した方がよかろう。 | in case :〜の場合には,〜の場合の用心に,もし〜なら,万一に備えて、 streak :鉱脈,層、 catch (someone) napping :(人)の不意をつく |
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