今週の問題
その1



Comprehensive Chess Ending に出ていた問題です。Bahr, 1936 from Lecockと書いてあるので古典ではないにしても、著者が何らかの権利を持っているというものでもなさそうです。(本当かどうか心配です。)

白の手番で最短の勝ちかたは?

next01_1


ヒント

白キングがc4のとき黒キングがe6にいなければd5で白勝ち。
白キングがd3のとき黒キングがf5にいなければKe4で白勝ち。




解説

K.Ogiharaさんが詳しく分析して下さいましたが、まずは本に書いてあった図面をご覧下さい。

next01_2


ヒントに書いたポジションに1と2の番号をつけます。1と2の両方に動ける場所(白はc3、黒はf6)を3とします。白キングが3のとき黒キングも3にいないと1と2 の両方を防げません。他の場所も同様に番号付けして、黒は白と同じ番号のところについて行く、白はそれを引き離そうとする争いになります。

この問題では黒がh5にポーンがあって2がないのに注目して白はd1を目指します。正解は

1.Kb1 Kh7 2.Kc1 Kh6 3.Kd1です。

ここで黒は2がないので7か8に動きますが、今度は白が黒の真似をして7か8に動きます。そして次に黒が2か3に動けば白も同じところへ動いて勝ちになります。
黒が8、7、8と粘っても白は8、7、5として1を狙い、黒がそれを防いで3に入れば白も3に入るという要領です。

初級の人にも理解できるようにご説明したつもりですが、やはりむずかしいですね。Comprehensive Chess EndingにはEIGHT-SQUARE SYSTEMというタイトルで類題が7、8題出ていました。なぜEIGHTなのか私には理解できません。

渡井さんの「早わかりチェス」には1から12までの番号付けをした例題が出ていて「見合いの拡張概念で考えかたさえわかれば、とても簡単です・・・?」と書いてありますが当時入門書として買った私にはさっぱりわかりませんでした。


以下はK.Ogihara さんの分析です。チェスの会議室では局面の解析や、チェス関連の情報量の豊富さで定評のある方です。番号付けの手順、なぜそうなるのかを証明して下さっています。


黒は指し手の制約が厳しいので、ツークツワンクを狙うのやはり本筋だという気がしました。ヒントにあった通り、
白 Kc4 に対して、黒 Ke6 以外の応手は負け
白 Kd3 に対して、黒 Kf5 以外の応手は負け
のようですから・・・。この制約を簡単のために
F(Kc4)={Ke6}
F(Kd3)={Kf5}
と表現することにしましょうか。
(とりあえず、黒キングが d5 より手前に進んでくるような応手はない、と仮定しておきます)

ということは、白 Kc3 のとき、黒 Kf6 以外の応手は負けですね。
黒 Kd5 は白 Kd3 以下、黒 Ke6 (強制手) に白 Kc4 まで。
それ以外のケースについて考えてみても、F(Kc4), F(Kd3) のディレンマを解決できる黒の着手は Kf6 以外ありません。
という訳で、
F(Kc3)={Kf6}
が示されました。

同様の論法で、新たな制約が次々に浮かび上がってきます。
F(Kc2)={Kg6}
証明:
黒 Kd5 は白 Kc3 で負け。 (以下、黒 Ke6 に白 Kc4 まで)
それ以外のケースについて考えると、F(Kc3), F(Kd3) のディレンマにより、黒は Ke6, Kg5, Kg6 以外では負け。
しかし、黒 Ke6 は白 Kd2 で負け。( F(Kc3), F(Kd3) のディレンマが解決不能)
また、黒 Kg5 は白 Kb3 で負け。( F(Kc4) と F(Kc3) のディレンマが解決不能)
F(Kd2)={Kg5}
( F(Kc2), K(Kc3), K(Kd3) のトリレンマ)
F(Kb3)={Kf7}
証明:
F(Kc2), F(Kc3), F(Kc4) のトリレンマにより、黒は Kf5, Kf7 以外では負け。
しかし、黒 Kf5 は白 Kb4 で負け。( F(Kc3), F(Kc4) のディレンマが解決不能)
F(Kb2)={Kg7}
( F(Kb3), F(Kc2), F(Kc3) のトリレンマ)
F(Kc1)={Kd5, Kf6}
証明:
黒 Kd5 で白のdポーンを取れれば勝てる。
それ以外のケースについて考えると、F(Kb2), K(Kc2), K(Kd2) のトリレンマにより、黒は Kf6, Kh6 以外では負け。
しかし、黒 Kh6 は白 Kd1 で負け。( F(Kc2), K(Kd2) のディレンマが解決不能)
F(Kb1)={Kd5, Kf7}
( F(Kb2), F(Kc1), F(Kc2) のトリレンマ)

実際には 1.Kb1 に対して 1...Kd5 や 1...Kf7 にジャンプする訳にはまいりませんので、ここまで調べたロードマップに従って、白勝てるはず。

黒が最強に頑張った場合の手順は
1.Kb1 Kh7 2.Kc1 Kh6 3.Kd1 Kg5 4.Kd2 Kg6
5.Kc2 Kg5 6.Kb3 Kf6 7.Kc3
となりましょう。


K.Ogihara さん、どうもありがとうございました。



このページに関する感想を何でも結構ですからメールでお寄せ下さい。
yama0202@pc.highway.ne.jp


次へ

トップページに戻る