ベーパーロックについて


国産車をノーマルで乗る分において、ベーパーロックの発生はあまり聞くことがありませんが、今回 スズキ キャリートラック において意外な所からベーパーロックに至った体験をしましたので御報告させて頂きます。

キャブレター車においても排ガス対策はいろんな所に施されており、冷間時の霧化促進(アイシング防止)にはキャブレターフランジ部などに冷却水を廻す手法がよく用いられています。早く暖める為なのですが、冷却水と同じ100℃位まで上がると上がりすぎですので、サーモバルブを設けて70℃位で止めているようです。

今回持ち込まれた車両は、温間時にアイドル不調を起こしていました。明らかに薄く、手でチョークしてやると回転が上昇します。キャブレター内部に不良箇所は見当たりません。しばらく休ませて再始動させた時は少しの間調子が良いようです。

どこかエアーを吸ってる所は無いか調べましたが見つかりません。最後に疑ったのがベーパーロックです。ベーパーロックとはガソリン中に気泡が発生する事です。ブレーキではよく聞く症状ですが、燃料にも同じことが起こります。

スローの通路でベーパーロックが起こり、気泡が発生してエンジンの要求通り混合気を送り込めなくなっているかもしれません。

そこでキャブレターフランジ部に水をかけて冷却し、様子を見ました。

すると、見る見るうちに症状が改善され、アイドリングが安定してきます。少し置くとまた元通りのラフなアイドリングになります。いくらやっても同じ結果が得られます。このキャブレターはフランジの部分に冷却水を廻すタイプです。自動チョークのサーモワックスハウジングに行ってる冷却水ホースの温度と、フランジに行ってるホースの温度を触って比較するとほぼ同じでした。これでは熱すぎるでしょう。そのホースの先にサーモバルブらしきジョイントがあります。これを調べるとやはり導通したままでした。新品に取り替えて試して見ると、明らかにフランジ部分のホースの温度は低く、切り替えが行われてることが確認できました。症状も治まったみたいです。つまりフランジ部分を暖めすぎてベーパーロックを起こしていたわけです。

 キャリートラック dc51t


今回は温度上昇によるベーパーロックでしたが、ガソリンに問題が無かったとは言い切れません。

ガソリンと一口に言っても、使用環境によって成分が違っており、特に揮発性によりクラス分けされた中から、その地域に合った物が選ばれています。暑い地域と寒い地域では使用するガソリンにも違いが有ると言う事です。揮発性を求めすぎると気泡が発生しやすくなります。寒い地域のガソリンを暑い地域で使用すると、ベーパーロックやパーコレーションを引き起こしやすくなります。地域によりキャブセッティングや付加装置に違いが有る事もよく知られています。

ガソリンスタンドで販売されてるガソリンすべてが良質な物と言い切れない昨今、その性能に疑問を持つことがしばしばあります。また水抜き剤や各種添加剤を入れた場合におけるデメリットの説明も有りません。エンジンの使用環境はとても厳しい物です。その過酷な条件に耐えうる良質なガソリンを選ぶこともチューンナップといえましょ言う。

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