タイトルミニ




著者プロフィール

E.T.Shimizu

  前世紀後半,電子工学を専攻後,電子機器メーカーの研究所に勤務.海底資源リモートセンシング機器開発等に従事.認識工学,生命工学,情報工学などによる総合的未来予測に関心が強い.


連載内容の抱負

  生命は昔から「神聖なもの」であり,肉体は神から授かった不可知な構造物でした.しかし,医学,生物学はこのベールを少しずつ剥がし,それらの機能を客観的に理解できるよう解明してきたことは周知です.
  そして20世紀末に至り,生命体の自律性,意識の主体性などを特別視することなく「人間は高度情報処理システムの一種である」という見方が少しずつ広がってきました.やがて人間を含めた生命体は強いて言えば,自律的多階層情報統合体としての姿を露わにしてくるのではないかと思われます.
  そこでよく比較されるのが,生命体とロボット,脳とコンピューター,ニューラルネットワークという関係です.これらの比較は近年,精緻に取り上げられるようになり,生物の機能,構造,発生過程が,物理化学上ないし工学上の客観世界に展開されつつあるため,我々自身の自然観も,次第に変更を迫られるものとなっているようです.
  これから,6回にわたる連載は,主として筆者の立脚点である情報処理システムのサイドから,生命体との類似性や,逆にその特異性に着目して,相互に比較検討していきたいと考えています.
  そして現段階で得られる個別知見から,その想像をSF領域にまで拡げることで,将来形作られるかもしれない自然観の「予告編」を垣間見てみようというのが,本連載のめざすところです.