執筆記事
メディアに執筆した原稿を再掲します。
キーワード徹底検証 : 長期優良住宅(「特選街」2009年9月号)

当時自民党の住宅土地調査会長だった福田康夫氏が取りまとめ、その後の福田政権下でも大きく掲げられた「200年住宅ビジョン」。200年という数字は、住宅の長寿命化を象徴的に表したもので、実際に200年持つということではない。

200年住宅という名称は、その後「超長期住宅」や「長期耐用住宅」などの用語を経て、法案を取りまとめる段階で「長期優良住宅」に落ち着くことになった。

長期優良住宅が誕生した背景には、日本の住宅の平均寿命(30年)が、欧米に比べて極端に短いことなどがある。平成18年6月に制定された「住生活基本法」で、「つくっては壊す」フロー消費型から「良いものをつくって、きちんと手入れし、長く大切に使う」ストック型社会への転換を明言した。

これに基づき、住宅の寿命を延ばす取り組みとして、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(長期優良住宅普及法)がこの6月4日に施行された。

長期優良住宅に認定されるには、建物の基本構造部の耐久性が高いというだけでなく、基本構造部より耐用年数が短い配管などの補修や更新がしやすいこと、間取りの変更が可能であることなども条件とされ、長期に使用できる構造でなければならない。これに加え、一定の住戸面積であることや、定期的な点検や補修等に関する計画が策定されていることなどの維持管理についても、条件に挙げられている。

また、長期優良住宅普及法では、維持保全段階で定期点検と必要な補修・交換等を行うこと、認定時の資料や定期点検結果、補修結果等の住宅履歴情報を保存することも義務づけている。つまり、適切な維持管理をしなければ、認定が取り消される可能性もある。

これだけの条件がそろう長期優良住宅は、魅力的ではあるが、その分は建築コストにも反映される。一般的な住宅に比べ2割程度の建築費アップが見込まれるといわれている。

そのため、長期優良住宅に認定された場合、税制や融資の面で優遇措置が用意されている。税制面では、一般の住宅と比較して、登録免許税や不動産取得税の軽減幅を拡大し、固定資産税の軽減期間も延長する。住宅ローン控除も拡充(最大控除額で年間100万円の上乗せ)し、住宅ローンを利用しないで建築や取得をした場合でも一定の所得税が控除される制度を創設した。

また、融資面では、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携している住宅ローン(フラット35)で、返済期間を50年までに設定できるローン(フラット50)や優良住宅取得支援制度(フラット35S)の優遇金利を20年まで適用するなどの拡充策を導入した。

 長期優良住宅が普及するための最大の鍵は、消費者がコスト高になっても長期優良住宅を選択するかどうかだ。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)などの影響もあって、近年、住宅の品質は向上している。適切に維持管理をすれば、マンションであれば100年近く持つといわれている。長期優良住宅のコスト高は、子世代・孫世代に住宅を引き継げば、維持管理費用や建て替え費用の軽減で、採算が合うようになるはずだが、「自分が生きている間だけ持てばよい」という考え方の消費者には遠い話だろう。

また、長期優良住宅であれば中古市場で資産価値を認められ、高く売却できるなどの仕組みが整えば、大きなメリットとなるが、中古住宅の流通促進はこれからの課題だ。

長期優良住宅が普及していくには、まだまだ時間がかかるだろう。

●長期優良住宅の認定基準

@長期に使用するための構造

劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性について一定の措置が講じられていること

A居住環境

良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持・向上に配慮されていること

B住戸面積

良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること

C維持保全計画

建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること

●長期優良住宅に対する税の特例措置

@住宅ローン控除の上乗せ

A住宅ローンを利用していない場合の所得税控除(投資型減税)

B登録免許税の軽減

C不動産取得税の控除額の上乗せ

D固定資産税の軽減期間の延長

●長期優良住宅に対する住宅ローン支援(住宅金融支援機構)

@フラット50

最長50年の住宅ローンが利用可能

Aフラット35Sの拡充

金利優遇期間を当初10年間から20年間に延長