八ヶ岳天狗岳〜硫黄岳〜横岳


1974.12.2〜3 小西、佐々木
 12月2日(雪のち雨) 渋ノ湯でバスを捨て、沢を渡ってすぐ登りにかかる。いつものことだが、夜行の睡眠不足と朝飯抜きがたたってやや足取りが重い。積雪は5〜10センチ。すぐ展望が開けたものの稜線はガスの中である。雪がちらつき始め黒百合平の手前から本格的に降り出す。黒百合ヒュッテからアイゼンをつける。ますます激しい降りとなってきた。南岸沿いに低気圧が通過している影響のようだ。中山峠に出ると風当たりが強く、視界もあまり効かない。

 天狗岳(2646m)の登りはきつく、新雪で足を取られる。左側が急峻に落ち込んでいる。東天狗岳(約2640m)頂上はさらに風雪が強く、風上に顔を向けていられない。視界30〜50m。雪は風で飛ばされて少ない。根石岳(2603m)の下りで方向を誤り、南西に下りすぎた。コンパスで方向を確認し、トラバースしながら南東にとって返すと根石小屋に着いた。小屋は閉鎖して寒々としていた。このあたりは一番風雪が強く、顔に当たる雪粒がとても痛い。数メートル進んでは耐風姿勢をとらないと体が倒されそうになる。

 箕冠山(みかぶり山=約2590m)から夏沢峠(2392m)への道と分かれ、樹林の中のオーレン小屋目指して下る。積雪は10〜15センチ。樹林帯に入るといままでの強風がうそのように静かになった。オーレン小屋は冬期も開放されているのでありがたい。小屋の中にテントを張って寒気を防ぐ。水場はまだ健在だった。夕刻より雪が雨に変わった。

 12月3日(曇り時々晴れのち小雨) 昨日の雪もやみ、風もない穏やかな朝を迎える。夏沢峠に上がると雲海の彼方に北ア、中ア、谷川連峰の真っ白となって浮かんでいた。硫黄岳(2742m)がすさまじい火口壁を落ち込ませている。アイゼンを効かせながら硫黄岳の登りにかかる。登るにつれて雪化粧した浅間山が大きく現れた。それもつかの間、一瞬にしてガスに隠れてしまう。視界は30〜50mになった。昨日ほど風は強くないので楽だ。

 硫黄岳石室で昼飯。赤岳鉱泉から登ってきた単独行の人が食事していた。大ケルンに導かれて幅広い尾根をたどる。適度にクラストしておりどんどんペースが上がる。尾根がやせてくるといよいよ横岳(2825m)である。ありがたいことに、ちょうどガスが晴れて風も弱まってきた。鎖場に取り付くころには青空も見え始めた。大同心、小同心の岩峰を右に見ながら岩稜をつたっていく。たびたび道を間違え引き返す場面もあったが、何とか悪場の通過を終える。それほど緊張はしなかったが昨日のような悪天なら無理だったろう。

 初めて間近に見る主峰赤岳(2899m)が手招きしている。遠くの山々はすべて雲海の下。南アの甲斐駒、仙丈が近い。富士山も見えた。赤岳石室で時間を見るが、美濃戸口の最終バスを考えると赤岳ピストンは余裕がないのであきらめる。地蔵尾根の下り始めはかなり急なのでスリップに注意する。再びガスがわき、稜線はまたたく間に黒雲に隠されてしまった。行者小屋から単調な長い下りとなる。美濃戸でアイゼンをはずす。車道をどんどん飛ばし美濃戸口に16時40分着。最終バスは17時20分だから、赤岳ピストンも間に合ったかなとちょっぴり惜しい気がした。

 【コースタイム】 (12/2)渋ノ湯7:30 黒百合ヒュッテ9:45〜11:10 中山峠11:25 東天狗岳12:45〜55 根石小屋14:00〜10 箕冠山14:15 オーレン小屋14:45〜(12/3)7:20発 夏沢峠7:50〜8:00 硫黄岳石室9:10〜10:10 P2835m直下10:55〜11:05 赤岳石室12:35〜13:00 行者小屋13:35〜45 美濃戸15:30〜16:00 美濃戸口16:40

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