帝釈・田代山〜帝釈山〜台倉高山〜燧ケ岳〜アヤメ平


1974.11.3〜7 小西、春日、佐々木、佐藤、高野、丸井、渡辺、日比野、鶴田、橋本、堀江
 11月3日(晴れ) 夜行疲れか目がしぶい。天気は最高で太陽がなおさらまぶしく感じる。会津田島から湯ノ花温泉へのバス車窓から仰ぐ七ケ岳は、新雪に輝くモルゲンロートが美しかった。田代山登山口までは車道のだらだら登りが続く。睡眠不足も手伝ってペースが遅い。水引集落に近づくと左手奥に大嵐山(1635m)が望めるが雪はほんの少ししかついていない。七ケ岳に比べるとあまりパッとしない山容だ。林道は奥へ奥へと延び次第に高度を上げていく。車が頻繁に通るが、ひがみ心も手伝ってうるさく感じる。田代橋に着くころには陽がかげりさすがに寒い。橋から振り返ると山並みがはるかにうねり続き、意外にもかなり登ったことを実感する。林道歩きで標高差600mほども稼いできたのだった。

 11月4日(晴れ) 田代橋から5分も行くと立派な道標と案内板が建つ。田代山の猿倉登山口である。小沢を渡るとすぐ急登となるが。どんどん高度を上げていく。積雪は5センチほどで歩くのに影響はない。小田代を過ぎるとまもなく天上の楽園を思わせる田代山(1926m)の平頂に飛び出した。行く手はるかに雪を被った会津駒が見える。周囲が樹林に覆われた山々だけに、感動もひとしおだ。みすぼらしい太師堂の裏手から急降下し、尾根を巻きながら帝釈山(2060m)へ向かう。縦走路は展望があまり効かないが、帝釈山山頂は眺めが良く、会津駒が手に取るようだった。目を西にやると燧ヶ岳、その奥にさらに真っ白な越後の山々が招いている。日光連山も大きく盛り上がっていた。

 2033mピークを通過するあたりには湿原が広がり、樹林の中だけに気持良いところだ。再び樹林の中を進むと、台倉高山(2067m)がその名のとおり台形の整ったピークを見せる。頂上では帝釈山方面の展望が得られる。果てしなく広がる樹林帯の彼方に、帝釈山がまるで軍艦のように盛り上がっていた。はるけくも来たなあという感じがする奥深い山である。引馬峠までは地図と違って、ほとんど平坦な道を行く。倒木も少し現れ始めて明日はどうなることやら、と心配にもなる。

 今日の幕場である引馬峠(1896m)はうっそうとした樹林の中。とても峠の地形とは思えない。かつて檜枝岐と日光とを結ぶ最短コースとして利用された面影はなかった。あちこちにプレートが打ち付けてある。その中に1968年「日・中・明」三大学合Wという明大のプレートがあって、はて慶大はどうしたのだろうと思う。

 11月5日(曇り) 寒冷前線の影響もさほどはでなかった。きょうは今回のコースの核心部である。峠からわずか行くと風倒木が現れるが、特に通過困難ということはない。踏み跡もしっかりして迷う心配もなかった。ただ孫兵衛山分岐からの下りはスズタケが覆い被さっていやな所だった。踏み跡は尾根を巻きながら行くので展望はほとんどない。黒岩山(2163m)へはかなり登ってからピークを巻くようになっている。黒岩分岐と黒岩清水は同一地点と思っていたが別だった。

 奥鬼怒林道は所々展望もよく、特に鬼怒沼山(2141m)方面が素晴らしい。あいにくガスがかかって見通しが悪くなってしまう。赤安山(2051m)もだらだら登りでピークをわずか北側で巻いていく。右眼下に赤安田代が訪れる人もなく広がっている。赤安清水はきれいな湧き水で、とてもおいしかった。小淵沢田代が眼前にパッと開けたものの、田代山のときのような感激はなかった。長蔵小屋は冬支度の真っ最中らしく、登山者もなくひっそりとしていた。夏のにぎわいは知らないが、全く人気を感じない大きなキャンプ場はよけい寒気を感じる。

 11月6日(快晴) 晴れ上がったわりに今朝も冷え込みは厳しくなかった。きょうは燧ヶ岳を越えるのでたっぷり展望が楽しめそうだ。長英新道はいつも泥んこ道とのことで、凍っているうちに距離を稼ぎたかった。本格的に登りにかかると雪が踏み固められて滑りやい。登るにつれて眺望は素晴らしい。特に日光方面の山々は近いだけによく見えた。頂上(2346m)に立ったときは、樹林の山旅を続けてきただけに感激のピークに達した。

 ものすごいというほど晴れわたり、飯豊連峰の白さはひときわ目についた。会津駒を始めとして、丸山岳、毛猛連山、荒沢岳、平ケ岳、越後三山は完全に冬化粧となって、ため息がでるほどの崇高さだった。急な下りにスリップに注意していったん鞍部におりて燧ヶ岳の最高峰・柴安嵒(2360m)に登ったあとは、見晴までの長い下りとなる。尾瀬ヶ原が真下に見えるのになかなか近づかない。ひっそりとして誰もいない尾瀬ヶ原を、暖かい日差しをあびて歩くのは気持ちがいい。しかし、みな早く重荷から解放されようと黙々と歩いていた。夏の尾瀬も楽しいだろうが、原がキツネ色になる晩秋こそ穴場の季節かもしれない。

 11月7日(晴れ) 山行中、一番の冷え込みだった。油断した者は靴がカチンカチンになってしまった。火であぶり、靴ひもをナイフで切ったり、石で叩いたりと笑えぬありさまだった。沢沿いに鳩待峠(1615m)に登りアヤメ平に向かう。すごく単調な登りがうっとおしいが、横田代からの眺めはなかなかのものである。アヤメ平も負けず劣らずの展望だった。富士見小屋から車道をがんがん飛ばして歩き、戸倉スキー場に2時間もかからずたどりついた。

 【コースタイム】 (11/3)湯ノ花温泉9:35 田代橋15:10〜(11/4)5:42発 小田代7:30〜45 太師堂8:25〜40 帝釈山9:48〜10:40 台倉高山13:45〜14:05 舟岐林道分岐14:30 引馬峠15:15〜(11/5)7:00発 孫兵衛山分岐8:35 黒岩分岐10:50〜11:50 赤安清水13:53〜14:10 小淵沢田代15:20〜15:35 長蔵小屋16:05〜(11/6)6:30発 ナデックボ分岐10:15〜11:10 燧ヶ岳11:30〜50 沼尻分岐14:30 見晴14:10 竜宮小屋15:07〜20 山の鼻小屋16:15〜(11/7)7:30発 鳩待峠8:50 横田代10:10〜11:15 アヤメ平11:45 富士見小屋11:55〜12:10 富士見下13:10〜25 戸倉スキー場14:00

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