但馬・氷ノ山〜青が丸〜扇ノ山


1975.3.15〜20 小西、佐々木、村木、桜井、長谷部、渡辺
 中国地方の名山・氷ノ山(1510m)から扇ノ山(1310m)にかけての兵庫・鳥取県境は、加藤文太郎が兵庫県浜坂町に帰郷するついでに辿った山深き稜線である。途中、雪庇を踏み抜いたりして苦労したという同じルートを、まだ雪深い3月にトレースしてみた。

 3月15日(晴れときどき曇り) 前夜、東京〜京都〜八鹿と長旅を経て、氷ノ山登山口の福定に着いたのは14時45分。喜楽屋に登山届を提出すると、4、5日前に神戸の単独行者(女性)が、氷ノ山で遭難死しているとのことだった。沢を渡って登り返し、軟雪にズブズブともぐりながら、50〜60m登ったところでサイトする。15時27分。下山してきた単独の人に様子を聞く。

 3月16日(曇りときどき晴れ) 6時発。出発直後にワカンがはずれてしまう者が続出。早朝で雪も固く、ワカンのツメも刺さらないのでツボ足に変える。きょうは日曜日とあって入山者が多い。みんな山スキーヤーで、扇ノ山まで縦走というと珍しがられる。非常に温かな日和で残雪期の様相だ。10時50分、氷ノ山頂上着。付近ではスキー練習をしており、山スキー派のよきゲレンデになっているようだ。扇ノ山はと見るとガスに包まれ、県境尾根が白く起伏のある山なみを連ねている。雪量は扇ノ山方面がとても多いように見えた。ここしばらく降雪がないらしく、日中はくさり朝はガチガチになるようだ。

 氷ノ山からの下り、コシキ岩の通過には手こずった。右下数百メートルもの急斜面で、カッティングしながら緊張のトラバースとなる。氷ノ山越(1252m)の避難小屋は雪まみれで使えず、テントを張る。12時40分。広島大山岳部パーティーが扇ノ山から我々の逆コースをたどり、先にサイトしていた。赤倉の頭を偵察してみるが、スッパリ切れ落ちており手が出ない。明日は左斜面をトラバースしていかなくてはならない。

悪谷の頭 3月17日(晴れのち小雪) 6時発。赤倉の頭を下をトラバースするならば、早めに県境尾根に取り付いてしまった方が良かった。我々は県境尾根から分派する小尾根を登ってしまい、本尾根まで登り返すのに苦労した。桑が峠までのヤセ尾根はやや危険だが、小陣鉢山までは楽で展望を楽しみながら進める。青が丸(1239m)が真っ白で登高意欲をそそる。

 あまりの好天にオーバーヤッケを脱ぐ。小陣鉢山付近から再びヤセて雪庇が右側に張り出し、悪谷の頭まで小さなコブをいくつか乗っ越していく。このあたりで天候が急変し小雪がちらつき始め、気温も下がりだした。悪谷の頭(写真)はヤセ尾根の稜線の中では、テントを張れる絶好の場所であった。15時着。ヤセ尾根に緊張しっぱなしでみな疲れ気味。

青が丸へ 3月18日(曇りときどき晴れ) 6時30分発。新雪は5センチでまだ小雪がちらついているが、朝はそれほど冷え込まなかった。ガスっているので読図を慎重にする。ちょっと大きな雪庇が出ていたが難なく通過。いくつかのコブを越えていくと三ツケ谷のコルからの頭への急登となる。

 ガスが晴れて展望もひらけると、いかにも奥深い感じの雰囲気だ。雪量も多く西側に延びる尾根には特にべっとりついていた。加藤文太郎はこの付近で雪庇を踏み抜いたのかと思うと感無量だ。やはりここから青が丸にかけての稜線に雪庇が張り出し、裂け目もあって注意を要する。青が丸がすばらしい量感で迫る(写真)。樹林に覆われておらず真っ白で、遠目にも目立つピークだった。青が丸の下りは急で、中ノ丸、但馬ローソとガスっていたら読図しにくいところを進んでいく。すでにこのあたり青空が広がってきて気持ちがよいところ。のっぺりした雪原からブナ林帯に入り、シブキ山(1082m)を越えて諸鹿峠に着く。13時30分。

 3月19日(晴れのち曇り) 6時5分発。朝焼けの日の出を背に受けながら扇ノ山へのなだらかな雪原を登る。ちょっとした肩から樹林帯の中を登っていくと、扇ノ山にあっけなく着いた。7時40分。頂上小屋は半ば雪に埋もれていた。日本海がはるかに望見される。あとは下るだけだとタカをくくっていたら、鳥越峠までの地形が複雑で読図が難しく、何度か行きつ戻りつしてしまった。スキーシュプールがいくつかついているのだが、あまり当てにすると変な方向に行ってしまう。

 大ズッコ、小ズッコと確実に読図して確認して行かないと現在地が判明できなくなりそう。しかも下り気味で足取りも軽いから注意する。小ズッコ小屋への分岐点から鳥越峠へのルートは右ではなく左尾根に入る(小屋は右尾根200m先)。トッサカに至るまでの高原状のところは、とにかくトッサカに向かって突き進むことだ。トッサカは意外な急登であるが、すぐ上に出る。ピークでは、アズキ缶を空けておしるこを作り元気をつけた。P784m手前の二重稜線も手こずった。この稜線はかなりヤセている部分があり、雪庇を避けるのに左側のヤブをからんで行ったので全員バテ気味。鳥越峠から鳥越集落へ下り、蕪島では廃校となった小学校の講堂で泊まる。16時30分。

 3月20日(曇りときどき晴れ) 山岳部と違いワンダーフォーゲル部は山だけでなく、平地も歩き通す遍歴精神をもつ。きょうは8時間20分かけて鳥取駅までの30kmを歩いた。細川あたりから風が強まり、鳥取砂丘からの砂風にはまいった。

 【コースタイム】 (3/15)福定14:50 600m地点15:27〜(3/16)6:00発 東尾根8:10〜25 氷ノ山10:50〜11:20 コシキ岩11:50〜12:05 氷ノ山越12:40〜(3/17)6:00発 桑が峠9:35〜50 陣鉢山分岐手前11:47〜12:00 小陣鉢山12:45〜13:00 悪谷の頭15:00〜(3/18)6:30発 三ツケ谷の頭9:10〜40 青が丸10:40〜55 但馬ローソ11:44〜55 諸鹿峠13:30〜(3/19)6:05発 扇ノ山7:40〜50 P1103m8:45〜55 トッサカ10:55〜11:25 鳥越峠14:37〜50 鳥越15:47〜16:05 蕪島16:30〜(3/20)6:20発 駟馳山峠10:30〜40 中土海11:45〜12:00 鳥取駅14:40


HOMEへ戻る