上越・白毛門山〜笠ヶ岳

 冬期、日帰りで白毛門山を往復する人は多いが、その先の笠ケ岳や朝日岳まで足を伸ばせないだろうか。好天をつかまえて、何とか行けないものかと狙っていた。笠ケ岳までは行けるのだが、二回ともその先はふんぎりがつかないのだった。特に1979年は時間的にも十分チャンスがあったのだが、ガスに包まれて逃げ帰った。


1979.2.12 佐々木(単独)


 1979年2月12日(雪のち曇り) 太平洋側は晴天だが、日本海側は気圧の谷が近づいて雨か雪。土合へ降り立つと先月来たときより、さらに雪が少なくなっているのに驚く(天神平の積雪190cm)。昨日雨が降って相当融けたらしい。例年ならば駅前の店など屋根すれすれまで雪に埋もれているのに、いまは50cmの積雪もない。それに気持ち悪いくらいなま暖かい。とりあえず2時間ちょっと、駅で仮眠する。明るくなったので起きてみると雪がちらついており、7〜8cm積もった。上部は相当な風があるらしいので、行き先を谷川岳から笠ヶ岳へと変更する。

 白毛門山へは2人の足跡が続いている。登りにかかるとまるで残雪期のような雪の状態で、ブナの根元はポッカリと穴があいている。キックステップで登っていくが、旧い雪はバーンとなって滑りやすくなっていた。青空ものぞき始めた中、急登が一段落すると右側に小さいながらも雪庇が張り出している。この時期には珍しく、白毛門沢大滝が水音をとどろかせている。再び急になると気持ちいいブナ林。ここで3パーティーほど追い抜いてトップに立ったので、きついラッセルを引き受けてしまう。幸い6、7人パーティーが下ってきて、そのトレースを利用できる。上で泊まっていた連中らしい。松ノ木沢の頭に着くと、かなり青空も広がるが、谷川岳は依然ガスの中。アイゼンをつけ再びガスに包まれた頂上をめざす。大方、適度にクラストしており、アイゼン歩行にはちょうどいい。寒い頂上では、数人パーティーがツエルトをかぶって食事している。残念ながら笠ヶ岳、朝日岳方面はほとんど視界なし。

 ガスの切れ間に行く手の尾根を見定めて、足早に笠ヶ岳へ向かう。下ってきた人達のらしいアイゼンの爪跡が続いている。ちょっとしたコブをいくつか越え、いよいよ最後の登りではかなりきつく感じる。まだかまだかと思いきや、ポッカリと頂上の標識が見えた。もちろん何も見えず、すぐ引き返す。登ってきたトレースは強風で消され一瞬とまどった。右手のヤブに沿って行き、尾根が細くなっているところでザックをおろす。もう一安心で、コーヒーを飲みパンをかじる。晴れていたらと思うと残念だが、白毛門山からちょっと頑張って笠ヶ岳に足をのばすだけでも充実感が違う。白毛門山でシャッターチャンスを待つが、あきらめて下山にかかる。もう登って来る人もなく、自分だけの山となった。尾根下部は地肌が表れ、グショグショ雪に靴の中まで濡らしながら下ってヤレヤレの山行だった。

 【コースタイム】 土合6:20 松ノ木沢の頭9:00〜40 白毛門山10:10〜15 笠ヶ岳11:03 白毛門山12:00〜10 登山口13:30 土合13:50



1989.1.22 佐々木(単独)


 1989年1月22日(雪のち晴れ) 土合駅に降り立ったのは10人足らず。かつて駅の仮眠場所取りで、先を争って階段を登った賑やかさは今は昔か……。駅前に雪はないが、今は激しく降っている。このまま降り続いたら、上まで行くのは無理かなと思いつつ仮眠。でも、出発する6時頃には雪も小やみになった。三菱銀行寮の左手から尾根に取り付くと、いきなりズブズブもぐり、消えかかったトレースを頼りに尾根へ上がる。10年前同様、こんなに雪が少ないのか(前日はかなりの雨だった。天神平の積雪185cm)とちょっとがっかり。後ろから男性3人、女性1人のパーティーが追い抜いていく。新雪の吹き溜まりが出始める。追い抜いていったパーティーのペースが落ちたので、抜き返す。

笠ヶ岳 右側の雪庇が顕著になるころ、4人パーティーのうちの2人がいいペースで再び追い抜いていく。森林限界付近で追いつき、松ノ木沢の頭で一緒になった。2人を残してきたので、白毛門まで時間的に行けるかどうか心配していた。11時半がリミットだそうだが、頂上まではちょっときついのではと思った。ラッセルはきつくなり頂上直下100mまで登ったところで11時半になった。例の2人は、まだ登りたがる1人をもう1人がいさめて下山していった。この先クラストしているためアイゼンをはく。タニアイゼンにかえて、今回は14本爪のシャルレスーパーをもってきた(写真=白毛門山から見る笠ヶ岳と朝日岳)

 頂上に着く頃には幸運にも青空が出てきた。急速にガスが晴れ始め、笠ヶ岳も見えてきたが、谷川岳はしぶとくガスがとれない。アイゼンが小気味よく効き、稜線を巻けるところはできるだけトラバースしていく。笠ヶ岳最後の大斜面も、息が苦しくなったが一気に登り切る。頂上直下から東面にかけて亀裂が走り、大規模な全層ナダレも起きていた。朝日岳は目と鼻の先のように感じるが、往復には2時間はかかるから、日の長くなる3月あたりだったら日帰りも可能だろう。ピストンするくらいなら山スキーで、清水峠方面か宝川に抜けた方がいいかも知れない。白毛門直下の下りは雪が腐りかけ、アイゼンがダンゴになる。つまずいてサロペットの内側に穴をあけてしまった。土合駅で電車待ちしていたら、「谷川岳279回目」と書いた布を張ってあるザックを背負った単独行者(後に1000回登頂を果たす森氏)に出会った。

 【コースタイム】 土合6:08 松ノ木沢の頭10:35〜45 白毛門山11:55〜12:05 笠ヶ岳12:55〜13:05 白毛門山13:55 登山口15:52 土合16:00


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