東北・早池峰山・オオサク沢左岸尾根



1992・12・30〜1993・1・2  佐々木、久保田、山口


4日目、神々しい早池峰山めざして出発
中岳から早池峰山 12月30日(晴れ) 「早池峰山でアイスクライミング」の触れ込みでk、Y両氏を誘い、気になっていたオオサク沢に入ってみた。案の定、氷瀑などあるわけもなく久々の充実したラッセルを楽しむことになった。変わったルートからのピークハントも、たまにはいいものだ。

 盛岡から花巻空港行きのバスに乗ってしまうというドジを踏む。途中で気付き、あわてて戻って別便に乗る。大迫からタクシーで岳へ。岳川林道を1時間で今日の幕場、オオサク沢出合に着く。岳川を濡れずに渡るのに苦労した。

 12月31日(晴れ後曇り) オオサク沢は水流が所々出ている。ヒザ位までの単調なラッセルがしばらく続く。右岸から10m滝が入る。結氷は甘く空洞の中に水流がある。本流は右に折れるところは長いナメ滝になっているようだ。いよいよ滝場かと期待したが、単なる雪のスロープになっているのみ。踏み抜かぬよう注意して登る。

 両岸が狭まってきて、右岸をトラバースしながらのラッセルも潅木がじゃまするし、沢身に入れば腰までもぐり遅々として進まなくなった。沢はこの先、左に折れ見えない。正面に急な雪壁となっている様子で、k君が「あれは氷じゃない?」と言うものの、もはや期待できそうにない。さっさと左岸尾根に逃げることにことにして急斜面を30mほど上がる。後はこの尾根を登り詰めるだけなのだと思うと気が楽だ。しかし、中途半端な積雪量はシャクナゲ、ハイマツなどと組んで落とし穴とつくっており、容易に高度を稼げない。高さ10mほどの岩峰を左から絡み、さらに1ピッチ進んだ1350m付近でビバーク。あまり盛り上がらぬ大晦日となった。

ラッセル 1月1日(曇り後晴れ) 今日こそは中岳を越え早池峰まで行く意気込みで出発。相変わらずの踏み抜きラッセルに悩まされる。1440mを過ぎると低木帯となって歩きやすくなるが、尾根が北に曲がる1500m付近は再び樹間の深いラッセルを強いられた(左写真)。これもわずかで抜けると岩峰の点在する低いハイマツ帯と変わる。

 早池峰はガスの中だが、鶏頭山は同じくらいの高さになった。中岳も射程距離に入ったのでピッチが上がる。緩やかになって密度の濃いオオシラビソ林に入る。樹氷のようにビッシリ立ちつくすモンスターは幻想的だが、どこにいるのか不安になるほど進んでも進んでも平坦だ。磁石を頼りにやっと抜け出し、中岳の最高点の露岩に登って周囲を見渡す。いつの間にか青空が広がり真っ白な早池峰が見えた。振り返ると夕日に無数のモンスターが浮かび上がり荘厳な眺めだ。早池峰との鞍部へ10分ほど下ってツェルトを張る。夜は星空となった。

 1月2日(晴れ一時ガス) 晴天も出発時には早池峰にガスがかかる。樹林帯のラッセルだが、下りなのではかどる。鞍部に着くとすっかりガスに覆われてしまった。これからは岩石帯となり夏道通りに行けばいい。少し登ってからアイゼンをつける。風が強くなってきた。右側は切れ落ちておりペンキの目印を見つけながら行く。いったん、夏道は尾根の右下を絡むと広い緩やかな斜面となり、高山植物保護のロープが夏道を示す。ガスが強風で流れ、岩石累々とした早池峰が見え隠れする。最後の登りの取り付きにとまどったが、ペンキマークを右手に見つけ頂上に導かれた。苦労した分がむくわれる展望だ。鳥居と神社奥宮は、エビのシッポに包まれ厳しい装い。八甲田山が雲の上に白く輝いている。

 風を避け避難小屋の脇で休んだ後、ルートが見えるうちにと小田越分岐点まで駆けおりるように下る。小田越への尾根に入ると風もなく穏やか。ハシゴのある岩場も無事やり過ごし、どんどん下る。この辺は風で雪が飛ばされ少ない。樹林帯までくるとルートが分からず尾根右側の小沢に入り、そのまま下って林道に上がった。うすゆき山荘にはこれから登る人達が10数人いた。すっかり全容を見せた主稜線を眺めながら岳に下る。日帰りで鶏頭山に登ってきた地元のおじさんが車で送ってやると言ってくれたが、タクシーを呼んだ後だった。我々のルートを聞いて「東京から? いやー御苦労なこったなー」とあきれていた。

【コースタイム】 (12/30)岳15:30 オオサク沢出合16:30〜(12/31)7:00発 1350m地点16:00〜(1/1)6:30発 中岳16:00〜16:20 1660m地点16:30〜(1/2)6:15発 早池峰山11:00〜11:30 林道13:40〜13:50 岳17:00



HOMEへ戻る