東北・八甲田・睡蓮沼〜小岳〜高田大岳、
酸ヶ湯〜大岳・小岳鞍部〜雛岳〜箒場岱

2000.5.5〜6 佐々木、野口、上石、河原(5日のみ)、岸(6日のみ)


 5月5日(曇り) 昨日までの不安定な天候もやっと回復してきた。朝方は曇り空だが、昼過ぎからは青空が期待できそうだ。きょうは睡蓮沼から小岳(1478m)へ登り、気持ちのいい小岳北東面を滑って箒場岱ルートと合流し、さらに気になっている雛岳(1240m)を登ってしまおうという計画だ。

 睡蓮沼のトイレは屋根付近まで埋まったままで、今年の雪の多さを改めて知る。9時30分、スキーを担ぐ人、シール歩行の人それぞれで歩き出す。小岳や高田大岳がガスの中に見え隠れするが、やがて青空になるだろうと楽観する。高田大岳と小岳の鞍部を目指す場合は涸沢を早めに越えた方がいいが、今回は小岳に直接登るので上流に沿って行き段差が低くなったところで対岸に渡る。あとは垣間見える小岳頂上直下の亀裂を目印に高度を稼ぐだけだ。2人の先行者は仙人岱ヒュッテの方向に向かったようだ。

 いつの間にかガスが濃くなり周囲の山が見えなくなった。きょう仙人岱ヒュッテからきたのか、小岳南面を高田大岳鞍部と同じ高度1300mを維持しながらトラバースしていく10人ほどのパーティーと出会う。急登に喘いでやっと1400m付近の稜線に出て、左に緩く登っていくと小岳頂上だ。11時35分着。先着の2人は先行していた人たちだった。やはり小岳の西側に回り込んで登ってきたようだ。

 ガスがなかなか晴れそうもないため雛岳は明日に回し、高田大岳を目指すことにした。鞍部まで滑って1時間ほど大休止する。高田大岳へは頂上までシールで何とか登ることができた。13時55分着。ガスの切れ目から見る雛岳南面の雪は頂上まで続いており、箒場岱ルートから高田大岳との鞍部を経由しても登れそうだ。高田大岳からの滑降は雪面がグサグサになっていて、あまり快適ではなかった。滝のある沢の左岸の林を抜けて下った湿地帯はまだ一面の雪。R394に沿っていくと谷地温泉のバス停に着いた。15時5分着。バス停の裏手の湿地にはミズバショウの群落が見られた。

 5月6日(晴れのち曇り) 8時40分、酸ヶ湯から仙人岱ヒュッテへのルートを登り始める。登り残した雛岳に目標を絞るため、大岳・小岳鞍部をすり抜けて箒場岱ルートに合流するのだ。酸ヶ湯沢上部から振り返ると岩木山がくっきりと浮かび、その左にはなだらかな白神山地が望まれた。仙人岱ヒュッテにはよらず、大岳と小岳の鞍部に向かう。

雛岳山頂 行きがけの駄賃に大岳を登ろうか?と半分冗談で皆に水を向けたら、みな乗り気でなさそう。雛岳の登りは標高差500mあると脅かしたせいか、体力を温存しておきたいらしい。本当は小岳に登って北東面から箒場岱ルートに合流すれば充実感があるのだが、ぼくのわがままで雛岳にいくので無理強いもできない。少し悔やんだのは大岳・小岳鞍部から滑り込んだ小岳北面の沢が(予想されたことではあるが)面白くなく、シュプールのついていない小岳北東面を見上げたときだった。

 それでも箒場岱ルートに合流してからは雛岳のことだけに集中すればよく、高度計が700mを切ったあたりで雛岳北面の斜面が見えてきたので右手に回り込むことにした。ちょうど箒場岱ルートの最後の急斜面を過ぎたあたりだ。右手に雛岳北尾根を見ながら沢状を詰めていく。すっきりしたブナ林を抜けると無立木の斜面が上部に広がっているが、まだ頂上は見えない。消えかかった3本のシュプールが残っている。標高900m付近の急斜面で、水分をたっぷり吸ったシールがはがれて効かなくなったため、スキーを担ぐことにした。急斜面を避け右手の尾根寄りに逃げる。崩れかかった大きな雪庇が行く手を阻むが、裂け目に注意して通過するとあとはゆるやかに雛岳山頂に導かれた。14時5分着。

雪庇の下を通過 ここから見やる高田大岳はアルペン風の端正な姿で、北東斜面にきれいなシュプールがついているではないか。と、雛岳南面から数人パーティーが登ってきたので驚く。「高田大岳との鞍部から?」「あの(高田大岳北東面)斜面にシュプールをつけてきましたよ」。“八甲田フリーク” にも上手がいるものだ。高田大岳と雛岳をつないだ記録は見聞したことがなく、雪の多い今年ならではの快挙だろう。雪の消えた頂上には「雛岳」と書かれた清楚な標識があった(写真上=遠景は高田大岳

 いよいよ滑降にかかる。まず頂上右手から急斜面に滑り込み、我々が通ってきた雪庇下を通過して(写真下)登ってきたルートに合流した。ブナ林に入る手前の最大傾斜部分は快適に滑降していく。ブナの間隔は広くブッシュもないので、ものの10分で箒場岱ルートに合流した。振り返ると早くも天候は下り坂なのか雛岳頂上にガスがたなびき始めていた。昨日滑った高田大岳などよりも新鮮味があり充実感があった。

 【コースタイム】 (5/5)睡蓮沼9:30 小岳11:35〜50 小岳・高田大岳鞍部12:00〜13:00 高田大岳13:55〜14:15 滑降点14:20〜40 谷地温泉バス停15:05 (5/6)酸ヶ湯8:40 大岳・小岳鞍部10:50 雛岳北面690m地点11:35〜12:10 1050m地点13:10〜20 雛岳14:05〜35 箒場岱14:55
 【1/25000地形図】 酸ヶ湯、八甲田山


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