東北・船形連峰・大倉川笹木沢


1993.8.6〜7 佐々木、吉越

 8月6日(雨) 仙台駅前の定義行きバス停で待っていると雨がパラついてきた。いまだ東北地方では梅雨明けしておらず、最高気温も20度そこそこの日々が続いている。定義(じょうげ)温泉のバス待合小屋で朝飯を食い、雨具をつけて出発。8時55分。如来様の祭りの準備でにぎやかなのに、こちらはしょっぱなからの雨に意気もあがらない。十里平の長い直線道を雨に打たれて黙々と歩く。

 車道終点からゲートを抜け、大倉川右岸沿いの広い林道を6〜7分歩くと左岸に渡る。「今にも崩れ落ちそうな」と、よく記録に表現される橋がある。すぐ上流に堰堤があり、橋を渡らずとも入渓できる。が、できるだけ林道を奥に進みたいので、ヒヤヒヤしながら橋を渡る。半ば埋もれかかった軌道跡を進むと矢尽沢にも橋がかかる。こちらはさっきの橋よりもっと危なっかしいので、下の沢におりた。道は細くなり、しかも心許なくなってきた。本流が大きく屈曲して回り込んでいくと、古い堰堤を見るが、踏み跡のほうもこのあたりでとうとう不明瞭になったので、大倉川本流におりる。すぐ先は戸立沢出合であった。11時。

連続するナメ 広い闊達な流れは単調だが、周囲のブナ林と相まって晴れていれば気持よいだろう。本流の滝場は大きな釜をもつ4m滝で、その上は12m滝となっている。右岸の取り付きまでいくのがしんどそうだ。寒さで水につかる元気もなく、左岸のルンゼから大きく巻いて12m滝の落ち口付近におりたつ。寝不足からか体が重く感じられ、高巻きでも足に力がはいらない。再び単調な河原歩きに飽きあきする頃、笹木沢出合に着く。12時35分。

 出合からすぐゴルジュ状となり、どす黒い大釜の4m滝は左からへつる。続く連瀑は快適に越す。なかなか評判通りの渓相である。きれいなナメ(写真下)から、二段10m滝も幅広で右から越える。再びナメを連ね、倉山沢出合まで断続的に小滝が現れる。

 倉山沢手前の8m滝もそうだが、なかなか水量が多くて見事である。いまは、雨も小降りになったので有り難い。いったんゴーロとなり、右岸から三段40mもあろうかという滝を連ねた枝沢が入ると、核心部を迎える。8m滝は左から斜上して登れそうだが、敬遠して左から巻いて懸垂下降。3m滝が二つ続き、次の8m滝は左のコンタクトラインを登れる。

大滝と手前の8m滝 側壁は高くなり、高巻きは難しくなる。鎧(よろい)滝と呼ばれる大滝が高く望まれるが(写真下)、その手前の8m滝は一見難しそうだ。空身で取り付いてみると、細かいが確実なホールドがあり一気に登れた。大滝は豊富な水量を落としており、三段で25mくらいはありそうだ。ザイルをつけて左から登りはじめ、中段はシャワーを浴び、上段は直上すれば悪く草付寄りに登って落ち口へ。雨が本降りとなってきた。

 大滝上の10m滝は傾斜が緩く左のスラブを登る。5m滝を右から巻くと、うっそうとしたブナ林となる。16時を過ぎたので、左岸の台地にツエルトを張る。16時10分。降りが強くなり、ズブ濡れでツエルトに潜り込む。寒くて眠れず、ひさびさに不快な一夜となった。

 8月7日(曇り時々雨) 7時30分出発。きょうも雨の朝だ。もう滝場もなく緩やかな流れを辿るだけだが、悪天なら船形山(1500m)はあきらめ大平牧場に下りることにする。ササが覆い被さり、いざヤブこぎかと思いきやそのまま登山道に出た。8時55分。

 雨もほとんど止んでいるので、ブナ林の好ましさも手伝って船形山経由で下山することにした。やたら大ナメクジが登山道にいて、踏みはしないかと気を遣う。最後の300mの急登もグイグイ登る。晴れていれば黒伏山方面の眺めはいかばかりかと残念がる。升沢登山道と合わせれば見覚えのある船形山頂小屋が現れた。11時5分。風が強く寒く、展望もない。小屋には地元の単独行が二人。小屋は冬の風で毎年のように壊されるが、山開きに合わせて修理するそうだ。

 泥んこ道にうんざりしつつ、後白髭山(1423m)からは横川林道へ下ってしまう。伐採の傷跡を見せつけられながら、長い長い林道歩きとなる。定義発の仙台行バスは20分前に出てしまい、白沢車庫行き最終バスに乗り、作並発バスに乗り継いで仙台へ。夜行急行津軽の発車まで時間があり、雨も上がった七夕祭りを見物する。仙台地方はその後も不順な天候続きで、梅雨明けはないも同然だった(7〜8月の真夏日は1日だけだったという)。

 【コースタイム】 (8/6)定義8:55 十里平10:08〜18 戸立沢出合手前11:00〜15 笹木沢出合12:35〜50 大滝15:00 B.P16:10〜(8/7)7:30発 登山道8:55〜9:05 仙交のコル9:45 舟形山11:05〜30 蛇ケ岳12:30〜40 後白髭山13:30〜40 横川林道14:30〜40 登山道分岐15:40〜50 定義17:20

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