奥多摩・川乗谷本谷(川乗橋〜竜王橋)


1989.9.17 橋本、滝沢、佐々木

 9月17日(曇り) かつては美渓の名をほしいままにした川乗谷だが、林道が奥へ奥へと延びたため沢登りの対象にはならなくなった。「奥多摩の山と谷」(山と渓谷社、昭和35年発行、奥多摩山岳会編)では、「依然その険悪さをほこり…」とあり、遡行図を見ても悪い滝と釜が連続する様がわかる。また、「山と渓谷383号、夏の沢と谷特集」でも案内がでているが、初級向きとなっている(この遡行図の林道の位置が違っている)。現在の川乗谷はどう変貌しているのか、釜や悪場は健在なのか?そんな思いを胸に出かけてみた。

川乗谷の激流 奥多摩駅からバスで川乗橋で下車。10時、橋の下から遡行しようとしたが、のっけから淵を伴った小滝が越せず橋上に戻り沢に入り直す。最初は平凡な流れだか次第に淵や釜が多くなり、きわどいへつりや飛び込えなどをまじえながらの本格的沢歩きとなる(写真)。渓相もなかなか良い。そのうち大淵の奥に岩をえぐりとって落ちる滝が現れた。落差2mほどだがその奥も滝となっているらしい。突然の悪場出現に驚いてしまう。

 よく見ると大淵の左岸にボルトが連打されてシュリンゲがかかっている。やはり物好きがいるのだ。淵は深くボルトまで6mほど泳がなくてはならない。滝までは10m以上泳がねばならず、仕方なく右岸から高巻いて前傾フェースの基部をトラバースしていくと滝がのぞき込める(フェースは誰かがFCのゲレンデに使っているらしく新しいボルトが何本か打ってあった)。滝は大釜を従えてえぐるように数段に落ちている。これがあの聖滝であろうと納得。右岸の小沢にフィックスロープが張ってあり、それを利用して下ると滝の全貌がわかる。三段目の二条の滝の落ち口に立ってみる。直径4〜5mもの大釜に枝沢からの滝を加え渦巻くようだ。しばらく見とれていたが、この先も何が出てくるかとゾクゾクする。

 12時15分、逆川出合を過ぎると夫婦の滝二条7mに行く手を阻まれる。右岸のガリーにザイルをつけて取り付く。上部ほど悪くなり10m上の残置ハーケンでピッチを切る。2ピッチ目、行き詰まったところで右にトラバース。灌木に支点をとって10mの懸垂下降2回で夫婦滝の落ち口に降り立つ。残置ハーケンのあるところからトラバースしたほうが懸垂は1回ですみそうだ。続いて三段20mの迫力ある滝。手前の左岸の壁6mをザイルをつけて登り、さらにその上5mもザイルをつけたまま高巻く。このあたり両岸高く、右岸に林道が走るとは思えないくらい深山の趣がある。ナメや釜はなお続き、ヒヤッとさせられることも。

 竜王橋が前方に見えてくると数段のナメがあり、左岸から右岸に移って突破。幅1.5mほどの急流をエイヤッで体を対岸にブリッジするのはなかなか度胸がいる。次の小滝を右から滑りそうになりながらへつって橋の下に着く。ちょっと平凡になり、再び通過できない小滝を左岸から巻いて林道に上がって終了とする。14時15分。

 【コースタイム】 (9/17)川乗橋10:00 逆川出合12:15 夫婦滝上13:30 竜王橋先(遡行終了)14:15〜15:05 川乗橋15:40 白妙橋15:45


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