那須・阿武隈川本谷、白水沢左俣右沢


1981.6.13 佐々木、吉越、執行、久保田(阿武隈川本谷)
1981.6.14 佐々木、執行、高井(白水沢左俣右沢)

 6月13日(小雨のち曇り) 白河駅からぱらつく雨の中、旧甲子温泉に向かうタクシーに乗ろうとしたところ、吉越氏がメットを電車に置いてきたことに気づいた。窓際のフックにかけておくとよく忘れてしまう。旧甲子温泉の阿武隈川本谷、白水沢合流点付近にベースキャンプの適地を探す。なかなか良いところが見あたらず、結局旅館から100mほど戻った駐車スペースに張る。6時45分出発。

雌滝 出合の堰堤を左から越え、水の冷たさにヒーヒー言いながら河原を進む。いくつかの堰堤を越すと南沢の出合、すぐその先が一里滝沢だった。7時10分。一里滝沢は出合から小滝を連ねていて感じがよい。緑色の水を溜めた大きな堰堤湖を左から巻く。ここまで右岸沿いに林道が入っており、これを利用した方が早かったかもしれない。

 河原歩きが続いたあと釜をもつ3m滝を左から越す。すぐ下部がハングした雄滝10mが現れる。右岸から入る15m滝を登り、落ち口から踏み跡づたいに巻く。かなり大きく巻いていくが踏み跡は判然としない。迫力ある雌滝40mが木立の間から見える。

 雌滝(写真)を巻くためいったん沢に下り再び右岸草付を登る。上部の岩にさえぎられ左のルンゼにいってみたり、右に草付をトラバースしようとしたりするが、結局、岩の間を木につかまって上へ上へと追い上げられてしまう。右手にガリーが食い込むところに残置ハーケンがあり、トラバースしているようだった。少し上へ登りガリー上部の土の斜面を慎重にトラバースする。次第に下り気味に木をつたっていくと雌滝を巻くことができた。9時40分。

 左右両岸から枝沢が滝となって注ぎ込む。小滝とナメが連続し快適な遡行となる。左俣を合わせると本流はすぐ先で20mの豪快な滝を落とす。左岸からやや大きく巻く。12m滝手前の5m滝も左から苦しいへつりで越える。右岸に雪塊が残り周囲は高巻きも難しい険悪な雰囲気となる。ハングした12m滝(写真下)は直登できず、右岸のザレ壁を登るが非常に悪く、後続にザイルをたらす。この高巻きが本流遡行のポイントだろう。
 
悪い12m滝 核心部は終わりナメ、小滝が続くと周囲も開け分流するようになる。本流らしきを忠実に詰め雪渓を拾いながらヤブに突っ込む。吉越、久保田はまっすぐ三本槍岳(1917m)頂上へ向かい、佐々木、執行は左にトラバースして三本槍南側の縦走路に出た。14時30分、頂上へ着いたら吉越氏らの方が先に着いていた。

 今日中に帰京する予定の吉越氏は最終バスをまだあきらめきれず先を急ぐことにする。坊主平の避難小屋付近は登山道が残雪でとぎれてわかりにくい。甲子山(1549m)の下りはブナ原生林のきれいな素敵な下山路だった。18時、ベースに戻る。

 吉越氏は新甲子温泉からの最終バスをつかまえるべく、甲子温泉の宿からマイクロバスをだしてもらい休む間もなく別れを告げた(下山後、電車内に忘れたヘルメットは回収できた由)。永瀬氏が合流し小さなブヨに刺されながら飯を炊く。後発隊4人が零時過ぎに到着してからは、にぎやかに酒を酌み交わし3時すぎまで飲みまくる。どうせ明日は雨で登らないだろうと…。

 6月14日(曇り一時小雨) テントが明るくなって、ふと目を覚ましたら永瀬氏にたたき起こされる。まだ6時だよ、さっき寝たばかりなのにそんな殺生な。永瀬氏はさっさと準備を始め、みんな何の準備だとばかりに怪訝そうなネボケまなこで見ている。外は小雨。ここまでくるともう年期の入れ方の違いだ。皆ブーブー言いながらも起き出して飯の用意をする。昨夜のゴッタ煮にラーメンをぶっこむ。ちょっと甘ったるかったがなかなかの味だった。

 地下足袋をはくと足は痛いがやはり心は沢へ。8時25分に出発。一里滝沢、南沢パーティーと別れ、白水沢パーティーはすぐ河原でわらじをつける。最初の10m滝は左から快適に直登。吹上沢を入れ、6m滝左、7m左小さく巻くとパス。20m滝の直登は右からだが濡れていて悪そう。あっさり左から小さく巻く。8m、4mと左から直登すると、ナメ状の小滝が相次ぎ気持ちよい。9時25分、1時間もたたぬうちに右俣と出合う。やや流木で荒れた感じとなり左沢右沢がそれぞれ15m、四段30mの滝となって両門の滝となっている。

 左沢を詰めれば早く甲子山頂上へ着くが、時間も十分なので右沢の滝に取り付く。最下段20m滝は高井君に念のためザイルを引いていってもらう。取り付きが泥がついて少しいやだが上部は簡単だった。左から枝沢を合わせ、8m二条滝は岩がもろく、その上の二段30mも下段がボロボロで落ち口は立っており、シャワーを浴びながら注意して登る。執行氏はマイペースで右岸から巻いてくる。

 このあとは流れも細くなり小滝をいくつか越えて薄いヤブに入ったと思ったら登山道に出た。11時25分。12時5分、甲子山に着くと少しの間だがガスが切れ旭岳(赤崩山、1835m)が望まれた。1時間半ほど、たき火しながら南パーティーを待ち、しびれを切らして腰をあげたとたんに徒登行コールがかかった。昨日と同じ下山路だが、足は軽かった。14時35分、甲子温泉着。一里滝沢パーティーがなかなかこないので、一足先に甲子温泉で汗を流し食堂で待つ。心配になったが17時ころ永瀬氏がまず現れ続いて杉崎氏らも到着。なかなか大きい滝があったり、ウドをいっぱい収穫したり楽しめたらしい。帰りは高井君の車に便乗して帰京した。

 【コースタイム】 (6/13)甲子温泉6:45 一里滝沢出合7:00〜20 雄滝下8:15〜20 雌滝高巻き終了9:40〜45 源頭12:57〜13:05 稜線14:20 三本槍岳14:30〜35 須立山15:05〜20 甲子山16:45〜55 甲子温泉18:00〜(6/14)18:25発 二俣9:25〜35 四段30m下9:45 稜線11:25 甲子山12:05〜13:30 甲子温泉14:35


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