奥利根・矢木沢西メーグリ沢左俣左沢〜宝川無名沢〜大石沢


1980.7.19〜20 山野辺、佐々木

 7月19日(雨のち曇り) 徒登行山岳会の白毛門集中山行。東メーグリ沢に入る永瀬、執行両氏と一緒に水上に降りると、すでに東北実習からかけつけた山野辺君が待っていた。朝方、蚊がうるさく眠れなかったが、気がつくと唇が2倍にも膨れ上がっていた。矢木沢ダムへのタクシーの車中の眠気も、強くなった雨足のため吹っ飛ぶ。雨具をつけ矢木沢沿いの道を急ぐ。初めてメガネを山行に持参したというのに水滴がレンズについてかけない方がましな状態。イライラする気持ちのまま、東メーグリ沢出合で矢木沢本流に降りる。水が冷たい。

 朝食後、永瀬パーティーと別れ、本流遡行開始。8時50分。ゴルジュの奥に大滝が瀑水を落としている。一部しか見えないが迫力十分。左岸から踏み跡にでて大滝の先で河原に下る。踏み跡はさらに続いている。膝上程度の徒渉を繰り返し、左岸からジロウジ沢が出合う。ここで二人の釣り人に会う。廊下となり、出口の3m直瀑の手前10mまで進むが、急流のためやむなく左岸から巻いて3m滝上にでる。幅広4m滝を右から巻いて通過すると西メーグリ沢(赤羽沢と誤記されることも多い)出合であった。10時25分。この沢は赤羽沢と誤って呼称されるので注意が必要だ。

 出合からのぞく西メーグリ沢はかなり側壁の高いゴルジュが最初から続いている。特に左岸はハングして威圧感がある。2条小滝をあっさり越すと五万図にも記されている滝に出くわす。案に相違して2m小滝だが、深い釜と高い側壁を持っている。右岸を2m登ると残置ハーケンがあり、そのまま微妙にトラバースして落ち口へ。ここが西メーグリ沢遡行中唯一の悪場らしいところである。

 廊下はさらに小滝をかけるがあっさりパスし、平凡な沢となって右俣を分ける。ゴーロを淡々と歩く。最初の緊張はコケおどしかとがっかりしていると、屈曲した先は再び小ゴルジュとなる。これはと期待したが、2m、3mの小滝で抜け、明るいゴーロとなった。そのくせゴーロ滝の乗っ越しにはフーフーさせられる。小滝、ナメが時々現れる程度でこのままツメかというとそうではなかった。

 最初に出合った長さ25mのスノーブリッジの下をかけ抜けると、100mはある雪渓となった。その先の二俣で雪渓はズタズタとなり、右沢はそのまま雪渓とともに深い切れ込みの中にいくつかの滝をかけて急激に小烏帽子山(1736m)に突き上げている。上部はガスっているがかなり岩っぽく奥壁状となっているらしい。ぼくらが詰めるのは1694m峰に至る左沢で、出合に20m滝を雪渓の下に水を落としていた。雨が降っていることもあって雪渓の崩壊を恐れ20m滝の50m手前から右岸を巻いていく。20m滝上に出ようとしたが、急傾斜の草付のため下れず、そのまま進んで15mの懸垂下降で左沢に降り立つ。12時50分。

 振り返るとかなり高度を上げ、ツメも近いことがわかる。小滝やナメを越しながら忠実に遡行していく。源頭は草付もスラブもなく一本の流水溝となって草地に消えてしまった。シャクナゲのからまりあった屈強なヤブの突っ込み尾根に出る。ガスのため周囲の尾根の様子がわからないが、どうやら1694m峰から矢木沢側に延びる支尾根にいるようだ。高い方へとヤブを漕いでいくと、背丈の低い灌木となり1694m峰の広いピークに着く。14時50分。ちょうどガスが流れ太陽も顔を出す。

 読図後、南東面に突き上げている宝川の枝沢を下ることにする。小沢のわりに滝が多い。8m垂直滝は左岸から、次の3m滝と一緒に巻く。続く4m滝も右岸から巻き小沢を利用して下る。ナメが続きホッとしていたら10m滝がストーンと落ちている。右岸からヤブにぶらさがって降りる。釜をもった2段7m滝もやや大きく巻く必要があり、左岸から巻いて宝川本流までそのままヤブを進む。16時35分、宝川本流着。

 宝川本流は気持ちの良い河原からナメと小滝を連ねている。水量は豊富で淵は深い。前方左岸に顕著な岩峰が見えた。何を錯覚したのかあの岩峰を過ぎたら今日の幕場のウツボギ沢出合だと思っていた。地図を見ながら枝沢まで確認して下っていくと、ゴーロの向こうに大きな雪渓が現れた。右岸から比較的大きな枝沢が入り、もし雪渓がなかったら広々とした河原だという話を聞いていたので地形的にもそう信じてしまった(実は大石沢出合であった)。合流するはずの永瀬パーティーの姿が見えないのは不安だが、とりあえず雪渓の上にツエルトを張る。17時20分。

 7月20日(晴れ) 永瀬パーティーが来るかもしれぬと、出発を遅らせながら濡れものを乾かす。9時5分まで待って出発。汗ばむほどの好天で暑い。小滝やナメが時々現れるが平凡。奥には雪渓を抱えたスラブが待ちかまえていた。このあたりで大石沢を遡行していることに気づくべきなのだろうが、なおもウツボギ沢を歩いているつもりで、何の疑問も浮かんでこない。白毛門と笠ケ岳の間にこんなスラブはないはずなのに。逆にこんなスラブがあったのかと感心する始末。

 右手に岩峰が見えると沢は急にせり上がり周囲も草付と露岩帯となってすこぶる気持ちが良い。長さ40mの雪渓を慎重に登る。次の100mの雪渓はさらに急で、右の草付を絡んでいく。源頭は右手に曲がり、ゴロゴロした露岩の間を登れば草原帯に出た。しっかりした道と赤ペンキ印を見つけ、キツネにつままれた気持ちになる。半信半疑で登って行くと、な、なんとそこは池塘の広がる朝日岳(1945m)であった。11時40分だから、白毛門集中時刻の13時にはとうてい間に合いそうもない。

 昨日、ウツボギ沢出合に行かなかった我々の方が心配されており、しかも集中タイムにも姿を見せないとなると大変だ。穴にも入りたい気持ちとみんなの顔がちらつく。とにかく先を急ごうと焦っていたところ、朝日岳の下りで右手薬指をハチに刺されてしまった。結局、白毛門集中には35分遅れで、永瀬パーティーと銭入れ沢の吉越パーティーと合流した。13時35分。

 【コースタイム】 (7/19)矢木沢ダム7:20 東メーグリ沢出合8:30〜50 ジロウジ沢出合9:30 西メーグリ沢出合10:25〜35 左俣左沢出合の滝高巻終了12:50〜13:00 1694m峰14:50〜15:10 宝川本流16:35〜40 大石沢出合17:20〜(7/20)9:05発 朝日岳11:40〜55 笠ケ岳12:45〜13:00 白毛門13:35〜14:00 土合15:50


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