上信越・白砂川本流〜赤沢


1975.6.9〜10 山田、佐々木


 昨年は丹沢通いが続いたが、そろそろ大きい沢に入りたくなった。渓谷登攀などというのが昨今もてはやされているのだが、ぼくが目指すのは沢から沢をつなぐ渓谷ワンデリングだ。上信越国境付近には静かで手頃な長い沢が多く、格好の渓谷ワンデリングエリアとなっている。

 6月9日(曇りのちにわか雨) 花敷温泉口でバスを降り、野反湖へ通じる道をだらだらと登り気味に歩いていく。和光原の集落を過ぎいい加減バテてきた頃に車が通りかかり便乗。白砂林道との分岐でおろしてもらう。白砂林道は四万温泉に通じており、5万図にはまだ記されていない。白砂林道をいったん小沢に下り大原に向け登り返していくと左手に道を見る。植林の中のこの踏み跡を北へ向かって進むと一枚岩を流れる小沢を横切り、白砂川の支流原魚川(八間沢)に急降下する。朝方は青空ものぞいていたが、このころから梅雨空に戻った。

竜ノ口滝 この辺の本流は岩記号がすごいが河原状だ。10時55分、遡行開始。徒渉を繰り返していくと、右岸から落ち込む三郎タの滝など見ながらやがて世古平沢、木戸沢との三俣に着くが、明瞭な三俣ではない。本流は開けてかなり明るい雰囲気である。やがて両岸が幅数mに狭まるタズナと呼ばれる地点に着く。流れは緩いが深くよどんでおり、腰までつかり右岸に渡る。再び河原状が続くと猟師の沢出合だ。13時40分。ここまではときおり柔らかな陽光に包まれて気持ち良かった。

 本流にかかる竜ノ口滝(写真)がいきおいよく水を落としている。本流唯一の悪場となるので、右岸の猟師の沢から大きく高巻くことにする。最初の小滝を倒木を利用して登る。乗っ越し開始の目安となる猟師の岩洞など見あたらず、適当なところでシャクナゲをつかんで強引に猟師尾根を乗っ越す。カモシカの糞が多く目にする。本流への下降はガレていて急で慎重に下る。高巻き終了14時55分。高巻きはじめるころから雷が鳴り始め本流に降り立つと雨が降り出す。

白砂川本流 このあたり両岸から木が覆いかぶさり陰気な感じとなる(写真)。へつり、徒渉を繰り返し庄九郎の滝を迎える。落差はなく右手を小さく巻く。15時55分、三股沢出合に着くと、それまでポツリポツリ程度だったのが雷鳴とともにヒョウ混じりのどしゃ降りとなる。たちまち沢の水も茶色に濁り増水する。たまらず出合の台地にツエルトを張る。30分ほどで降り止むがずぶ濡れの体にシュラフカバーだけではつらい夜となった。夜中も稲光が不気味であった。

 6月10日(晴れのち雨) 朝方は快晴。5時10分に出発するとすぐ三段の滝となり、右からへつりながら登る。早朝の徒渉はシビレルくらい冷たい。再び明るくなり、右岸出合にケルンのある大空堀沢を入れる。奥に国境稜線が望まれる。四万沢出合を過ぎるとスノーブリッジがあり乗り越える。河床が赤茶け岩がゴロゴロしてきた。左岸にスルスの岩洞を見るとすぐ赤沢出合である。6時35分。5万図のスルスの岩洞の位置は間違っている。ここまでは気持ちのいい青空で、以後雲が多くなり始める。

 赤沢出合は巨岩が沢を埋め、奥にスルス岩がニョッキリそそり立っている。まだ源頭に雪渓があるため赤沢はかなり水量がある。小滝を越えていくと二俣になり左に入る。すぐ雪渓が出てきた。稜線直下200mからはずっと雪渓登りとなったおかげでヤブこぎなしで稜線に出る。9時00分。上ノ間山(2,033m)まで一登りで着くと一気にガスられてしまった。

 白砂山(2,140m)まで南側が切れ落ちているので注意するが、踏み跡はわりと明瞭だ。堂々とした白砂山ではゴミがすこし目についた。滑りやすい道を一気に下り、コブを越えて堂岩山に着く。12時。地蔵峠への下りは残雪に隠されているところもある。花敷温泉までの車道歩きを思うとうっとおしかったが、野反峠の2キロ手前で運良く車に便乗した。14時40分。ハンノ木沢で降り出した雨は花敷温泉に着いたとたん、雷鳴とともに強く降り出した。

 【コースタイム】 (6/9)花敷温泉口8:00(この間8:45から車に便乗) 和光原(白砂林道分岐)8:50〜9:05 原魚川・白砂川出合10:00〜55 新山沢出合12:05〜15 世古平沢・木戸沢三股12:35 猟師の沢出合13:40〜55 猟師の尾根高巻き下降点14:55 庄九郎の滝15:25 三股沢出合15:55〜(6/10)5:10発 四万沢手前5:50〜55 赤沢出合6:35 赤沢二俣7:10〜20 上ノ間山9:20〜55 白砂山11:00〜10 堂岩山12:00〜10 地蔵峠13:10 ハンノ木沢13:25 野反湖14:40


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