日高・新冠川七ツ沼直登沢下降〜エサオマン入りの沢
(北戸蔦別岳〜カムイエクウチカウシ山)


1974.8.8〜17 小倉、武井、佐々木、高島、高野、北上、下平、遠山、丸井

 8月5日に上野発の夜行で出発し、6日は青函連絡船から函館、苫小牧、鵡川と乗り継いで振内に到着。振内〜日高町は大雨増水のため鉄道不通のためバスで振替輸送してもらい、道南バス日高営業所に泊めていただく。雨が断続的に降り続く。営林署の情報では、予定したポンチロロ川への林道は寸断されているとのことで、やむなくピパイロ岳を断念し、コース変更して振内から幌尻岳を目指すことにした。7日は日高から振内に戻り神社境内にテントを張る。

 8月8日(曇りのち雨) トラックをチャーターし、額平川林道を行けるところまで入ってもらう。倒木が林道を塞いでおり、終点より20kmも手前だが下車する。雨が激しくなってルンゼそのものが大滝となっているのは壮観だ。橋が流失しているのでザイルを張って腹までの徒渉となるが、思いのほか水が冷たく足がしびれてくる。下山中の学者風の2人が対岸で困っていたのでザイルを利用してもらう。その先の橋も取り付きが崩れていたが、ひっかかっていた流木でかろうじて渡ることができた。北電ダムの小屋脇にサイトする。一時、回復したが夕方からどしゃ降りとなり、テントの中に浸水して不愉快な一夜となった。

 8月9日(晴れ、一時にわか雨) カラッとした天気になったが、非常に寒い。歩き出してすぐ徒渉。やはり足がしびれるほど冷たい。増水の中のへつり、徒渉は結構緊張する。下手に高巻くと軽く1時間食ってしまう。水をおそれず徒渉した方が良い。まだ沢に慣れていない下平がバランスを崩してあっという間に流されたときは肝を冷やした。また雨が降りだした頃、幌尻山荘が見えてホッとした。12時40分。東経大ワンゲルパーティーが下山してきて、山荘横にサイトした。我々は濡れネズミなので山荘を利用させてもらう。非常にこぎれいで感心した。

 8月10日(晴れ) 5時30分発。標高尾根の急登はつらかったが、どんどん高度をかせぐ。樹林帯を抜けた1500m付近から展望が開け、北戸蔦別岳(1920m)から戸蔦別岳(1960m)への稜線がすばらしい。幌尻北カールの一角に出ると高山植物が乱れ咲いているところだった。幌尻岳(2052m)に10時40分着。頂上からの眺めは言うことなし。はるかにエサオマントッタベツ岳のカールに残雪が光り、その彼方にはカムエクの鋭峰がのぞく。一気に七つ沼に下ってテントを張ったあと、サブザックで北トッタベツ岳までピストン。戸蔦別岳からの幌尻岳は特に印象の強い眺めだ。16時25分に七つ沼に戻るとヌカカ、ブヨの攻撃がすごい。前々から聞いてはいたが、とにかく気が狂いそうだった。雪渓にはヒグマの足跡が残っていた。

 8月11日(快晴) 6時発。新冠川源流を下る。一度経験のあるリーダーによると、かなり荒れて変化しているとのことだ。核心部の函は右岸を大きく高巻く。途中、高島がはぐれてしまい心配させられた。二俣手前まで下ると陽射しが強くなり皮膚がピリピリする。汗ばんだ肌にベニヒカゲがむらがり、エゾシロチョウが優雅に舞っていた。14時、二俣着。豊富な流木を集めて盛大な焚き火をし、やっと夏合宿らしくなつてきた。

 8月12日(曇りのち雨) 6時発。エサオマン入りの沢を遡る。沢の規模は昨日より小さいがやや大きい滝が一つあった。右岸から登ってから少し下って中段を横切り上段の右を登る。下ってきた4人パーティーと出会う。12時30分に着いた北カールは、虫があまりいなかったせいもあり七つ沼よりも快適。ここから眺める三角形の戸蔦別岳と台形の北戸蔦別岳の山容が日高らしい趣がある。

 8月13日(曇りのち雨) 5時5分発。曇っていたが展望が良く、風がさわやかだった。北カールを登りつめたあとの雄大な景色は忘れられない。幌尻岳は南アの聖岳に似ていた。目指すカムイエクウチカウシ山(1979m=カムエク)が思いのほか遠くに見えた。春別岳からガスがかかり小雨が降り出した。またかと思いつつ、ハイマツに足をとられ、岩稜を緊張しながら縦走していくのは非常に疲れる。カムエクに近づくにつれてヒグマの糞が目に付くようになる。ガスの晴れ間に見たカムエクの秀麗な姿が印象的だ。カムエク手前のエスケープルート分岐にサイト。14時50分。

 8月14日(雨) 雨のため停滞。晴れ間を待ったが結局、カムエク頂上は断念する。昨日のうちに登ればと悔やむが、登ったとしても展望は全くない中でピークを踏むのもためらった。雨はなかなか止まず、時折強くなった。

 8月15日(曇りときどき雨) 後ろ髪を引かれるように5時50分発。エスケープルートは急で、しかも雨上がりとあって非常に下りづらかった。左の沢に下りたが滝が連続しているので、再びヤブを漕いで8ノ沢二俣まで忠実に尾根を下りる。1時間ほど釣りをして人数分の9匹を釣り上げた。札内林道終点でサイト。17時50分。虫の多さに閉口する。

 8月16日(曇り) 上札内までの30kmほどのロード。ヒョウタンの滝を過ぎると、北海道らしい雄大な大地が広がる。道がまっすぐで歩いても歩いても距離感がつかめないのにはまいった。

 8月17日(曇り) 5時間半かけて歩いてブームとなった「幸福駅」にたどり着いたあと、帯広に出て風呂に入り、居酒屋で打ち上げをした。

 【コースタイム】 (8/8)額平川林道8:20 北電ダム13:30〜(8/9)6:30発 幌尻山荘12:40〜(8/10)5:30発 幌尻岳10:40〜50 七つ沼カール12:00〜13:00 戸蔦別岳13:45〜55 北戸蔦別岳14:50〜15:05 七つ沼カール16:45〜(8/11)6:00発 新冠川二俣14:00〜(8/12)6:00発 エサオマン北カール12:30〜(8/13)5:05発 エサオマントッタベツ岳手前ピーク5:55〜6:05 春別岳9:50〜10:30 1900m峰手前11:10〜20 カムイエクウチカウシ岳鞍部14:30〜40 エスケープルート上部14:50〜(8/14)停滞(8/15)5:50発 8ノ沢二俣10:15〜25 札内林道終点17:50〜(8/16)8:00発 ヒョウタンの滝11:40〜55 上札内15:15〜(8/17)8:45発 幸福駅14:15


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