東北・神室連峰・大横川荒倉沢左俣


1974.8.29〜30 佐々木(単独)

 8月29日(曇りときどき晴れ) 大堀から薬師原まで歩いてくると八森山(1098m)が迫ってくる。荒倉沢下流は最近かなり出水したらしく、沢と樹林帯の区別がつかないほどだった。八森山へ至る登山道の取り付きさえわからない。そのままゴーロを進むと、両岸が狭まりゴルジュ状となる。堰堤を越えて水量の少ない左俣に入る。10mほどの滝が現れ右岸のルンゼを登って慎重に越す。やがて小さいながらもゴルジュとなり(写真)傾斜も増す。その先は大岩がごろごろして歩きにくい。

小ゴルジュ 釜につかり下半身を濡らしてしまったので早めにビバークサイトを探しながら進む。驚いたことにこんな小沢にもまだ雪塊が残っていた。沢が急傾斜になる手前、落石の心配のなさそうなところを見つけザックを下ろす。16時50分。流木を集めてたき火しながら濡れ着をかわかす。夕食をすませて早々にシュラフに潜り込んだ。人のささやきに似た滝の音が不気味で、なかなか寝つけなかった。

 8月30日(晴れのち曇り) この先なにが出てくるか分からないので、薄明の5時30分に出発。すぐ8mほどの滝がかかり、どうみても直登できそうもない。左岸の浅いルンゼから高巻けそうだが急な草付のトラバースに自信がなく、そのままルンゼを詰めることにする。ルンゼの水はまもなく涸れ、乾いた順層の岩になる。登山靴ながらフリクションがよく効き、スタンス、ホールドも豊富で何とか切り抜けられたが、重荷と高度感で緊張してしまう。詰めは草付から急斜面のヤブとなり灌木にぶら下がりながら登ったのでバテバテ。八森山の縦走路に飛び出したときには思わず安堵の歓声を上げてしまった。9時20分。

 鳥海山が特に美しい。神室連峰はえんえんと連なり、ヤセ尾根が日高を思わせる。ピラミッド状の起伏あるピークをいくつか越えて火打岳(1238m)に着く。13時50分。大横川を見下ろすとはるか眼下に雪渓が見えた。月山、朝日連峰も望まれ、神室の最高峰・小又山(1367m)にはどっしりとした風格がある。

 ヤブこぎと暑さで消耗してしまい、神室小屋まで足を伸ばすことは無理と判断し、火打岳を越えた鞍部からイボア沢への道を下る。アブの大群に襲われ息をつく暇もない。踏み跡が分からなくなり沢身をそのまま下る。18時5分、土内川本流に出ると人の声がするので、対岸に上がると林道に出た。林道歩きでもなおアブがまとわりついてきてうるさい。土内から仁田山まで農作業帰りの車に10分ほどだが乗せてもらい、さらに2時間歩いて中山からヒッチハイクして新庄駅にたどりついたのは22時15分だった。

 【コースタイム】 (8/29)大堀11:30 薬師原12:20〜40 荒倉沢左俣16:50〜(8/30)5:30発 稜線9:20 八森山9:25 大尺山12:55〜13:30 火打岳13:50〜14:50 土内林道18:05〜10 土内19:30〜19:40(この間ヒッチハイク)仁田山19:50〜19:55 中山22:00(この間ヒッチハイク)新庄22:15


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