上越・赤谷川本谷


1977.10.2〜3 佐々木(単独)

 10月2日(快晴、夜小雨) 上越線で事故があり、22時13分上野発が22時55分と大幅に遅れてしまった。後閑でおりたのは自分ひとりだけ。仮眠後、川古温泉までタクシーを使い、静かな林道を歩き始める。左下方から赤谷川の流れる音がすがすがしい。久しぶりのザックの重みで首筋から肩にかけてだるい。申し分のない快晴となり、谷川連峰の主稜線が朝日に輝いてとても美しい。ススキの朝露に濡れながらも楽しい気分になる。笹穴沢出合までは林道が入り、左岸斜面は伐採されて明るい。この先、樹林帯の山道を行き、エビス大黒沢が出合うところで赤谷川の河原に下りる。水量は少なく、水も冷たくない。

 マワット下のセンの手前は深く狭いトロになっており、トロ手前から左側をしっかりした踏み跡に従って高巻く。おだやかな流れですぐ20mのマワットのセンが立派な釜に水を落としている。左側のクボを登ってトラバースし、さらに直上して高巻く。沢は左に曲がりながら巨岩帯となる。大岩が積み重なって的確にルートを求めていく。だいたい左右どちらか通過できるようになっているし、そうでなければ高巻きする。この巨岩帯でかなりの高度を上げる。面白いが非常に疲れるところだ。

 大側壁と裏越のセンが沢の奥に見えてきても距離はまだあり、なかなかセンまで行きつけない。センの釜は水量が少ないせいもあるが、徒渉可能だ(10m)。それでも腰まではつかるだろう。背後の山は、赤く染まり始めた木々がとても美しい。晴れてはいるが、センの下まで陽が届かない。裏越しにかかると簡単に向こう側に回り込めた。アプザイレン用のハーケンが打ってあり、ザックを最初に下ろして懸垂下降。早くしないと飛沫でビショビショになる。高巻きのため左手の浅いルンゼに取り付くと、登るに従って急になり足場も悪くなる。木の枝やササを手がかりに強引に登りきり、不明瞭な踏み跡を沢に向かってトラバース気味に下っていく。日向窪に突き当たってしまい、本谷には下りずそのまま窪に沿って登り、適当なところで日向窪に下る。暖かい太陽を浴びられる気持ちのいいところだった。

 このままドウドウセンの高巻きをしなければならない。日向窪を少し詰め左岸から入る溝に入る。狭いが登りやすく、すぐ二つに分かれ大きい左に入るが、これがいけなかった。いやらしい草付からトラバースしてやっと尾根上に出る。トレーニング不足がたたり息が切れた。目指していた小尾根の背ははるか下だ。やはり、左に寄りすぎたようで、正規の高巻きルートに戻るのは面倒なので適当に下り始めた。最初は草付の急峻な窪で、樹林帯のコンタクトに沿って左にトラバース気味に下りていく。途中から灌木にすがってジグザグに下降する。赤谷川は眼下に穏やかな様相を見せており、無事に下ると思わず歓声を上げてしまった。単独での大高巻きはやはりシンドイ。谷川乗越からの沢から5分遡ったところの右岸台地にツエルトを張る。この辺は両岸にサイト適地がある。のびやかな主稜線が望まれ、縦走している人も見える。別天地で最高の気分を味わいながらしばらく日向ぼっこした。

 10月3日(霧雨のち曇り) 昨日は、夕方過ぎから雨が降りだし、17時には眠りについたが、22時に目が覚めてしまった。ツエルトから雨がしみこんで濡れ始め、結局、朝までうとうとしただけだった。

 出発時、ガスがとれて視界は結構効く。河原を少し行くと廊下となる。側壁はそれほど高くないので威圧的ではない。こじんまりとまとまった美しいゴルジュだ。高巻きは避け、なるべく沢通しに進む。微妙にへつったり、水流の中に架かる岩橋?を渡ったりして適度の緊張を味わえる。落ちても深いトロにはまるだけだが、冷たい水に浸るのはごめんだ。最後は左から小さく巻くと廊下は終わりだった。

 ヌルの多い滑りやすい河原となる。両岸開けて草原となっていたりして源流の味わいがある。滝や釜、岩床はときおり現れるが問題ない。万太郎山からの沢を入れると右にぐっとカーブする。オジカ沢の頭に一番接近している枝沢に入る。沢幅が非常に狭まり、滑りやすい小滝を次々と越えて詰め、左寄りにヤブを漕ぐと登山道に出た。オジカ沢の頭まで20分の地点だった。西黒尾根から巌剛新道経由で土合へ下山。

 【コースタイム】 (10/2)川古温泉5:45 赤谷川橋6:35〜45 遡行開始7:35〜55 マワット下のセン8:15 マワットのセンの上8:35 裏越のセン下9:50〜10:45 日向窪中間部11:45〜12:05 小尾根上13:10〜20 高巻き終了14:15〜30 谷川乗越沢出合14:35 広河原14:40〜(10/3)8:05発 廊下上二俣9:15〜25 稜線11:05〜10 オジカ沢の頭11:35 肩の小屋12:35〜13:35 巌剛新道入り口15:55〜16:00 土合16:55


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