越後・足拍子川経木ノ沢


1979.11.3 佐々木(単独)


 足拍子岳と荒沢山は、谷川連峰からはずれてひっそりたたずむ小ピークであるが、その荒々しい山容には以前から興味を抱いてきた。上越方面の沢登りは今回が今年最後になるだろうと思い、足拍子川本谷からこれらの山々を訪れるつもりだったが……。

 11月3日(晴れ) 前夜午後10時11分の上野発列車は超満員だった。最近は不精してしまい、グズグズと準備するものだから時間ギリギリとなり、赤羽から乗車している。沼田、土合と大量の登山者を放出したあとの車内は閑散として、新聞と雑誌が無雑作にちらかり放題。清水トンネルを抜けると急に冷気が車内に入ると、いよいよ越後に入ったことを感じるのだ。

 越後中里でおりたのは中学生らしき鉄道マニアと自分を含めての3パーティー。ところが彼らは土合でおりる予定を乗り過ごしてしまったらしく、足拍子、大源太方面へ向かうのは自分だけだった。いかに登行密度の低い山域であることか。

 駅での仮眠から目を覚ますと6時を過ぎており、外は青空が広がっているが、かなり寒い。飯士山と裾野に広がる岩原スキー場を左に眺めながら道は右へ右へと回り込んでいく。大源太川沿いから離れ、足拍子川に続く林道に入る。足拍子岳、荒沢山が朝日を浴びて輝いている。盛りを過ぎた紅葉のくすんだ色が、冬を迎えるにふさわしい落ち着きを見せていた。林道終点から踏み跡を辿り、どんどん進み途切れかかったところで沢におりた。あとで気づくのだが、おりた沢は足拍子川本谷ではなく、経木ノ沢であった(かなり上に行ってから気づく)。読図もせずにきたのが失敗の原因だ。

 沢は倒木やクモの巣がうるさい。やがて釜をもつ小滝も連続するがあっさり通過。やや右に曲がるとゴルジュ状になり、側壁も目立つ。大きな滝はなさそうで、小滝と釜がある程度の廊下だが、左の草付から巻いていくと、なかなか下りられず大高巻きになってしまった。途中、沢を覗くと少し先に8mほどの滝が見え、左から枝沢が滝で合流しているのが見える。いっそのこと枝沢まで高巻いてしまおうと、そのまま進む。枝沢に下降したあと2回の懸垂下降で本流に下りる。かなり消耗してしまった。廊下をそのまま通過できただろうと思うと悔しがる。

 右から枝沢を合わせたあと、現れる滝は困難なものはなく、傾斜が強くなる。水流も細くなり、細いナメ状の滝をぐんぐん登り、水が消えて灌木をつかんでのヤブこぎ。源頭は地形が緩やかで二重稜線となっている。人の声が右手からするのでコールすると応答があった。踏み跡に出て5分でクロガネの頭に着く。足拍子本峰の鋭峰がすばらしい。さっきの人達が頂上にいるのが見える。ヤセ尾根をたどって合流すると、越後中里駅で一緒だった人達だった。計画を変更して蓬峠まで行こうとしたが、時間的に無理で土樽へ向け沢を下っていくという。その方が厳しいのでは?と思った。

 足拍子岳から荒沢山間はかなりのヤセ尾根が続き、露岩をつたっていく個所もたくさんある。足拍子川左岸の急峻なスラブが印象的だ。キレットから、立ちはだかる岩峰を左すそから巻いて登り、ザクザクのスラブを登って越える。

 荒沢山から見る足拍子岳もなかなか立派だ。中里まではまだ遠く先を急ぐ。ヤセ尾根はさらに続き気が抜けない。ヤセ尾根から解放されると、今度は落ち葉の積もった急坂で何度かこける。中里スキー場に着くと、こおばしい里の臭いがしてきて安堵感が湧いてきた。

 【コースタイム】 越後中里6:15 遡行開始7:50〜8:10 高巻き終了11:00〜15 稜線12:55 クロガネの頭13:05 足拍子岳13:25〜50 荒沢山14:45〜55 中里スキー場上16:30〜40 越後中里16:55


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