丹沢・中川川押ン出シ沢


1993.6.5 佐々木、吉田、武生

 6月5日(晴れ時々曇り) 「吉田君、こなかったねー」「どうしたんだろう」などとバス車内で話していたら、アレレ?、その吉田君が途中のバス停から乗り込んできたではないか。1本電車に遅れ、バスにも乗り遅れたのでヒッチハイクで先回りしたのだという。めでたし、めでたし。

 今回は箒沢のバス停から押ン出シ沢出合はすぐそこ、というのがいい。まずは朝飯をと食い始めたら吉田君がひもじそうにしているので、バナナなどを恵んでやる。電車に遅れるは食い物は持ってこないは、いったいどういう家庭事情なのかはさておいて、今シーズン初の沢に入る。自分の病後(この春に亜急性甲状腺炎という変な病気を患った)のリハビリ山行のつもりで選んだ小沢だが、水タラタラかドブ沢だったら2人にののしられるのではないかと、そっちの方が気にかかる。

 堰堤を幾つか越えるとさっそく小滝が連続している。おっ、なかなか水量もあり雰囲気がいい出足である。次の8m3段のナメ滝で目がさめる。取り付きが悪く、結構微妙な登りなのだ。病気上がりで余裕のないせいか身体の動きがぎこちなく感じる。でも、小ツブながらもきれいだし面白いのは確かだ。

 4段の滝の上段は左のバンドから越え、7m滝は右を巻き気味に登る。堰堤を左右二手に分かれて越えると二俣となる。左俣に入るとナメ滝に続いて、この沢一番の悪場だ。4、6、8mの3段になって落ちている。下段の4mはやさしいが中段以上はザイルがほしい。

 「もってきてないよねー」「何もないよー」と吉田君と武生君。そこで心掛けのいい私が「ここで巻いちゃっちゃーおもろくない。ちゃんとあるよ、ハイッ、吉田君よろしく」と30mロープとハーネス、三ツ道具をザックから取り出して、2人の目を見張らせたのであった。ハンマーなどは20年前に円山木沢で拾った骨董品である。

 上段は右に90度曲がった奥で見えない。まずフリクションを効かせて中段右を登る。上段を見るとチョックストンがはさまって直登はできない。右のグジュグジュの草付きスラブにルートをとる。残置シュリンゲがあるが、ハーケンを打ち足しA0〜A1で強引に5m上がった倒木のあるテラスで一端ピッチを切り、藪をつかんで斜上して滝上に出た。予想外のおもしろさにみな満足気だ。

 最後の4m滝を快適に登るともう源頭が近い。乗越にいたる三又の選択で誤り、一番右のボロルンゼを詰め上げたら支尾根に出てしまった。ピークまで登ると神奈川県民の森の境界の切り開きがあり、小川谷林道に下ることができた。玄倉まで歩く途中、「この山行は貴重だ」「そうだよなー」と、なかなか山に行けなくなった子育て中の2人がつぶやきあっていた。

 【コースタイム】 箒沢10:30 押ン出シ沢出合10:35〜11:00 大滝下11:50〜12:00 大滝上13:00 尾根14:00〜10 林道15:00 玄倉16:05


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